![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/121143034/rectangle_large_type_2_05d09a44b4d31e8a1cdd49c747aa5e49.jpeg?width=1200)
Orange Crate Art
ポップ・ミュージックはテクノロジーではない。人と人とのふれあいの鼓動、音と音の共鳴が空気を伝わって届く。
アメリカの音楽プロデューサー、ヴァン・ダイク・パークスが、盟友で、ザ・ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンをボーカルに迎えて、1995年に発表した「オレンジ・クレイト・アート」。
![](https://assets.st-note.com/img/1699423178688-QfZ1CrhGeJ.jpg?width=1200)
そもそも、僕は、ザ・ビーチ・ボーイズをリアルタイムで知らないし、熱心に聴いてこなかった。そう。遅れてやって来た世代だ。
僕がヴァン・ダイク・パークスを知ったのは、彼がこの作品の3年後に発表した「ムーンライティング〜ライヴ・アット・ザ・アッシュ・グローヴ」。このライブアルバムで、「オレンジ・クレイト・アート」からの曲も自身の声で唄っている。
![](https://assets.st-note.com/img/1699441325959-66JdN7jNdg.jpg?width=1200)
そこから、「オレンジ・クレイト・アート」に行きついた。そして、お気に入りのアルバムになった。今ではアップル・ミュージックなどでも聴けるようになっている。
美しさとユーモアがごちゃまぜになったようなメロディとアレンジ。聴いているとドキドキ感がすごい。なんじゃこりゃ的な感覚もある。
「オレンジ・クレイト」、きっとカリフォルニアのオレンジ畑でオレンジを箱に詰めているような感覚でつくった音楽なのだろうか。カラッとして温暖なカリフォルニアの気候、そこにある家のようなたたずまいのレコーディング・スタジオがなんだか浮かんでくる。
このアルバムを、ここ最近、またよく聴くようになって、ふとレコードで聴いてみたいと思い、都内のレコード・ショップを何店か見て回ったりしたけども見つけられなかった。でも、インターネットで2020年に2枚組のLPが発売されているのを知って、いろいろ探したら、フロリダのショップでまだ売っているのを見つけ、購入。一ヶ月ほどで届いた。その間に、新宿のHMVレコードで、唄無しのインストゥルメンタル集のLPを見つけた。1995年の発表当時はレコードは発売されなかったようで、25周年として2020年にLP発売されたとのこと。
![](https://assets.st-note.com/img/1699423192961-1JTW2NWkWV.jpg?width=1200)
レコードをかけてみる。1曲目から印象が違う。ブライアン・ウィルソンのコーラスの低音の印象が違う。レコードの回転数まちがえたかな?と思ったほど。2曲目、大好きな曲「Sail Away」。メロディもアレンジもヴァン・ダイク・パークスの真骨頂のような曲だ。もう若くはなくなったブライアン・ウィルソンのしゃがれた声も優しく響く。そして、感じた。このLPのサウンドこそが、彼らが思いをこめてつくって、僕たちに届けたかったサウンドだって。このアナログのサウンドがこのアルバムのサウンド。そんな気がする。
![](https://assets.st-note.com/img/1699423205354-7gnC7SMffj.jpg?width=1200)
レコードをプレーヤーにのせて、アンプに繋いで、そこからスピーカーやヘッドホンに繋いで、そうやって聴くサウンド。
![](https://assets.st-note.com/img/1699423215117-dBeZP2LeM9.jpg?width=1200)
制作当時、ブライアン・ウィルソンは20年を超えるドラッグ・アディクトから立ち直ったばかりだった。喉も本来の調子ではなかったようだ。でも、それが、当時の彼のマインドも相まってなのか、とてもエモーショナルに響く。
美しさや楽しさの中に、なにか痛々しさがあるような感覚。
ヴァン・ダイク・パークスはこう言っている。
「そう、私はクレイジーだ。それは知っている。私のアレンジはクレイジーだ。でも私は、精神分裂ぎみのこのアプローチが生むパワーを信じている。一種の切迫感だ。たとえば偉大なる画家ヴァン・ゴッホ。彼の作品にはとんでもない自信と同時に精神的な苦痛が同居している。それに対して、受け手に不条理なまでに笑いを強要したり、涙を強要したりする作品もある。そういうものに接した時、私はそれを無視する。私が好きなアートは、オーディエンスを、笑うべきなのか、泣くべきなのかわからずに途方に暮れた状態で置き去りにしてくれるものだ。その両方を同時に引き起こしてくれるものだ。まさに、ブライアン・ウィルソンの作品の特徴だ。惨めになるくらい悲しいのに、陽気。だから私は彼に興味を持ったんだ。若いころの彼に…」
![](https://assets.st-note.com/img/1699423224509-w2g1eztGWq.jpg?width=1200)