ルパン三世の懐の広さを感じたというおはなし
2023/12/02更新分
みなさん「ルパン三世」って観たことありますか?
きっと「名前はだけはしってる」っていう人が殆どだと思います。(これ読んでる人は多分そういう層のはず)
今でも時々新シリーズが作られるくらいの長寿作品ではあるけれど、SNSでトレンドに乗るなんてことはないし流行ってるわけでもない。
ましてや「ドラえもん」や「仮面ライダー」みたいにずっと放送し続けてるわけでもない。
何か特別なキッカケがないと観る機会が訪れない。
そんな立ち位置の作品のように感じてます。
ただ「カリオストロの城」は例外で、金曜ロードショーでよく放送されるからこれだけ観たことある人は結構いるかもしれない。
(今まで18回放送されたらしいです。擦りすぎ)
斯くいう僕はというと、一時期深夜アニメを片っ端から録画しまくってた時期があり、その時に放送されてた4期を観たことあるだけです。
だから特別詳しいわけではない、所謂ニワカ。
当時の感想も「作画は綺麗だけれど、イマイチ地味だな」と割と not for me な印象を受けてた。
ただ唯一例外としてすごい面白いと感じれた話が一つあって、
それが今回紹介するタイトル「もう一度、君の歌声」、第20話です。
この話は病床に伏せ、もはや返事もできない元歌手の妻ノラと、その妻を愛してるばかりに思い出の品を遠ざけることで堪えるマネージャーの夫マーティン。そして二人の思い出の象徴であるクラシックカー。
この三人がメインで老父婦の在りし日の思い出、そしてそのノスタルジーを、マーティン役坂口芳貞氏の貫禄ある演技と大ベテラン湖川 友謙氏の作画で描く贅沢な回。
気弱なプロデューサーとそれを振り回すじゃじゃ馬娘の歌手の馴れ初めがとても美しく描かれ、だからこそ今の死にかけのノラの姿が切なく見えるし、全部忘れ去りたいけれど、でも妻への愛は捨てられないマーティンの重い感情が強く心に響く。
そしてBパート後半、クラシックカーが二人を「お散歩」に連れて行き、そこで二人は幸せだった頃の思い出を取り戻すことで最期を迎える。
ここのマーティンの独白と共に描かれる二人の鮮やかな記憶と共に、美しい風景を背に思い出の「歌」を歌いながら走るシーンはその数分だけで往年の名作を観劇したかのような気分にさせてくれる。情感に溢れるエピソードだ。
僕はこういうロマンティックなものが大好きだ。
ただこの回本当にルパンたちが目立たない。
次元と五右衛門に至ってはそもそも登場しない。
ルパンが車を盗み、不二子が仲介業者とグルになって高く売りつけようとしたところを銭形にあっさり見抜かれてトンズラする。
しかもこれが中盤には全部片付いてるのだからすごい。
今回は老夫婦の人生のお話なのだからいつものメンツはただのオマケだ。
さらにルパンはもっと酷く、最後のドライブのシーンは
「部屋から一歩も出られない老夫婦を息子が散歩に連れて行く」というシチュエーションを成立させるために
突然二人の思い出の場所にハンドルを切り出すし、わざと通信機を繋いだままにしてマーティンに車の音を聴かせる。
話の流れを無視して突然こういうことを始めるからちょっと不自然に映る。
ここのルパンは登場人物ではなく、もはや話を成立させるために存在するただ舞台装置だ。
でもここまで脇に徹しても「ルパン三世」として話が成立している。
ルパンが何かを盗み、とっつぁんと追いかけっこをする。
このお約束が守られればそれはもう「ルパン三世」なのである。
そういったことが成立するキャラクターの強さと懐の広さにこの作品の魅力を感じたという、そういうお話でした。