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【名前のない店】第3話:扉の先に待つもの

白い扉の向こうから聞こえる音——

それは、何かを囁くような、不明瞭な声だった。

低く、重く、幾重にも重なって聞こえるその音が、蘭の耳にまとわりつく。

「……進むのか?」

あの声がまた響く。

目の前の扉は、すでに半分開いていた。

だが、その先は——“見えない”。

どれだけ目を凝らしても、白い光がただ広がるだけ。

まるで、ここがこの世界の終点であるかのように。

けれど、蘭の足は……勝手に動き出していた。

——ズズッ……ズズズ……

一歩、踏み出す。

すると、世界が裏返るような感覚が襲った。

体が引き裂かれるような浮遊感。

自分がどこにいるのか、何をしているのか、すべてが不明瞭になる。

その瞬間——

ズシャアアアアアアッ!!!!

視界が真っ赤に染まった。

蘭は、地面に叩きつけられていた。

「……っ!」

顔を上げると、そこは店ではなかった。

見渡す限り、荒廃した街並み。

燃え残ったビル、ひび割れたアスファルト、漂う黒煙。

どこかでサイレンの音が鳴っている。

だが、それよりも——

「……いる。」

蘭の目の前、瓦礫の山の上に、何かが立っていた。

それは、ヒトの形をしている。

けれど、明らかにヒトではない。

黒い霧のようなものをまとい、顔は影に包まれて見えない。

だが、その存在感は圧倒的だった。

そいつは、静かに手を上げた。

次の瞬間——

——世界が“叫んだ”。

蘭の鼓膜を破壊するような轟音。

地面が裂け、空が歪む。

“それ”は、何かを呟いた。

——「ようこそ。」

——ズガァァァァァン!!!!

蘭の体は、闇へと飲み込まれた——

(次回予告)

「この世界は、一体……?」
「“それ”の正体とは?」
「蘭に託された“役目”とは?」

次回、物語は核心へ——

「第四話:選ばれし者の証」

蘭は、この世界の“真実”を知ることになる。

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