
「透明人間のように生きてきた」子どもの言葉から考える孤立や孤独
孤立や孤独という言葉を聞いた時に、どんな状況をイメージしますか。
誰とも話さないというような状況が何日も続いてる状態、助けを求めたとしても突き放されるような状態。そんなイメージを持つ人もいるのではないでしょうか。
「透明人間のように生きてきた」
そんなふうに教えてくれた子どもの話から、孤立や孤独について考えてみます。
登場人物:
斎典道(NPO法人PIECES代表/ソーシャルワーカー)
和賀未青(株式会社ニイラ代表/ソーシャルワーカー)
*この記事はラジオ番組「social hive WAITING CAFE 点描の弧 ~新しい当たり前をデザインする実践者たちの日常~」から編集しています。
周りに人がいても「私は透明になっている」と感じる
斎:
(支援者として)関わってきた子どもたちの中には家族もいて、友達というような同世代の子もいて、場合によっては支援者とも関わっているというケースもある。それでも、(こんなに周りに人がいても)「自分が透明人間のように生きてきた」と言っている子がいたんですね。
要するに人との関わりはあるし、支援してくれる人もいる。だけど本当の意味で、自分のことをちゃんと考えてもらえているとか、自分のために何かしてくれているとか、自分と共にいてくれているという感覚がないと言っていたんですよね。
(支援者として)その言葉を受け取った時には何とも言えなかったですね...
もしかしたら私も、その1人だったかもしれない。
だからこそ、「そこに本当はいるのだけどいない」というような透明になっているということが、「人が人として見えてくる」というふうに変わってくるだけで、生きている感覚って変わってくるんじゃないかと思っています。
孤独を選ぶこと自体は悪いことではない
斎:
例えば新宿を歩いてても人がいっぱいいますよね。でも、あの中にいると、私はすごく孤独を感じるんですよね。
和賀:
人が多ければ多いほどそう感じたりもすることもありますよね。
ちょっと違うのかもしれないですけど、「大勢の中にいる自分」という状態の時に、距離感がすごく遠くなる瞬間があるなと。土に埋没するような、埋まったまま出てこれないみたいな。引き上げるパワーが自分になければ、埋まったままみたいな。(これが人が周りにいても孤立や孤独を感じるということ)
斎:
もちろん孤独でいるってすごく大事なことで、子どもたちと接していると、空想の世界に入っているとか、誰にも邪魔されずに外の風を感じているとか、すごい尊い時間だと思うんですよね。だから孤独自体が良くないという話ではない。
でも、自分が望まずして孤立させられてしまってるというか、やっぱりそういうことはあるんだろうなって。一人になりたい時もあれば、なんかちょっと今変わらないでみたいなこともあるし。その選択を自分が選べているっていうことが大事なのだと思います。
まとめ
孤立や孤独自体が悪いわけではなく、自分で選べるという選択肢があること
役割や立場ではなく、その人としてみていく
そんなことがラジオでは語られていました。それでは、望まない孤立や孤独に対して、私たちにできることは何かあるのでしょうか。結びとしてラジオで紹介されていた話を掲載します。
誰かが発したことに「応答」する
斎:
最近、文京区から多摩市に引っ越しをしたんです。同じ東京の中ですが、都心から郊外に移動したような感じで。もちろんまだ住んで1ヶ月とかなのでいろんな側面が当然あると思うんですけど、このまちは人と人との応答性が高いということを感じています。
例えば、子どもと散歩中に犬を連れて歩いている人とすれ違うときに「あの犬かわいいね」みたいなことを子どもが言うことがあるんです。そうすると散歩している人が「触る?」と声をかけてくれたり。
今まで暮らしていたところで当たり前にあったやりとりだったかというと、そうでもなくて。やっぱりみんな歩く速度もちょっと早いし、まず「あの犬かわいいね」と言ってる声が聞こえてたとしても、多分スルーされていることの方が多くて。
今住んでいるまちは、圧倒的に(発したことに対して)応答してくれることの確率というか頻度が高いんですよね。
道端に咲いている花を「綺麗だね」と子どもたちが言うと、近くにいたおばちゃんが「この花はね...」と話しかけてくるみたいな。それがあると自分がここにいてもいいんだというか、排除されてる感じがしないし、そういうものが当たり前にあると、孤立はしにくい。一人一人がそこに生きてるということが否定されてない感じになっているのではないかと思います。
この記事はPIECES代表の斎が、ラジオ「social hive WAITING CAFE 点描の孤 ~新しい当たり前をデザインする実践者たちの日常~」で話した内容から作成しました。気になる方は、記事の目次の上のリンクからお聞きください。
social hive WAITING CAFE 点描の孤 ~新しい当たり前をデザインする実践者たちの日常~
東京文京区本郷三丁目駅の裏にある、小野田総合法律事務所併設シェアオフィス『social hive HONGO』のメンバーをゲストに話を聞いていきます。シェアオフィスは様々なソーシャルスタートアップが利用しています。
NPO法人PIECESとは
子どもの周りに「信頼できる市民」を増やすことで、孤立することなく生きられる環境づくりに取り組むNPOです。