「独り言」から「対話」を重ねて、手放したもの
PIECESが行う、子どもと自分にとっての心地よいあり方をともに学び、実践するオンラインプログラムCforC。
その受講生たちがプログラムを通して感じた、自分自身の変化や願いについて書いた文章です。
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CforCとの出会い
私は、私塾を開いている仕事柄、子どもたちから悩みを打ち明けられる事が多い。
学校に行きたくない、友達との付き合いに疲弊している、親に自分の気持ちをわかってもらえない、というようなことから、中には命に関わるような重大な悩みまであり、それらを聞いているうちに、『何とかせねば』という気持ちが頭の片隅から離れなくなり、自分自身の心が軋みはじめた。
せめて、子どもたちの息抜きになれば、と有志の大人と子どもたちで、一緒にご飯を作って食べたり勉強したりする場をつくってみたが解決に結びつくような糸口は見つからず、子どもたちのことがいつも気がかりだった。
どうしてあげるのがよいのだろう、その子たちの困っている顔が頭から離れなくなり行き詰まっていたところに、本屋で偶然手に取った雑誌に掲載されていたPIECESの記事に出会った。『子どもを孤立させない社会』、それをみんなで作っていくCforCという講座があることを知り、即、受講することに決めた。
専門家の講師のレクチャーもあることから、直ぐに解決法が得られると思い、勢い勇んで参加したのだが、そこは私が思い描いていたものとは随分と様子が違っていた。
最初に「正解はありません」「みんなで作っていく場です」と伝えられ、少々戸惑った。しかし、その戸惑いは直ぐに打ち消された。言葉には表し難いあたたかさと安心感が伝わってくる。専任スタッフ、CforC卒業生スタッフと受講生が一体となり対話を重ねて場を作っていくという、これまで体験したことのない講座だった。
自分の言葉で語り、自分と出会う場
CforCの一番の特徴はリフレクションではないだろうか。講座の後半に置かれているリフレクションでは、少人数のグループに分かれ受講者の経験を元に仲間と共に丁寧に対話を重ねていく。
内省にはエネルギーが必要であるうえに、そもそも、私自身は本心を語るのが苦手だった。しかし、そこに醸し出される安心感からか、心の底にある思いを吐露できるようになっていった。
「困っている子どもたちを何とか助けたい」という、信念にも似た強い思いを持つようになったのは、長い間、固く蓋をしていた「人が悲しむ姿をみたくない」という思春期の体験がきっかけとなっていたことに気づく。また、自身の社会的立場や役割からくる思考のクセがあることもわかってきた。
仲間との幾度とない対話のやり取りのなかで、自分の『メガネ(思考のクセ)』を認識したり外したり、自身には無かった仲間の視点と重ねてみたりしているうちに、いつも頭の片隅から離れなかった『何とかせねば』という気負いは消えていき、子ども達の悩みに対して適切な距離感を掴めるようになった。そして、自分自身の気持ちも大切にできるように変化していった。
今の自分にできること
7ヶ月という長い講座を受講するうちに、何かインパクトのあることが起こせなくても、今の自分に相応しい人との関わり方を見つけてみようと思うようになっていた。
講座の中に出てきた「市民性」というキーワードに惹かれ、身近なものに目が向くようになった。
そのひとつがガーデニングをしながら人と繋がるということだ。もう、20年近く家の前の小さなスペースで、朝、夕、花の手入れをしている。登下校の子どもたちや道行く人たちと、どちらからともなく挨拶をしたりお喋りをしたりする。鍵を忘れて家に入れなくなった子どもを自宅に招いたりした事もあるのだが、大雪が降った時に、その子が我が家の前を率先して雪かきをしてくれていたこともある。
また、ある時は青年が「おはようございます!」と笑顔で挨拶してくれた事があり「え?誰だっけ?」と私が言うと「◯◯です!」と返事をしてくれた。それは数年前に「おはよう、おかえり」と声をかけても無言だった高校生が成長した姿だった。
CforCに出会う前は、自分の葛藤は自身に問うて解決する『独り言』から成る視野の狭い作業の連続だった。しかし、講座で同じテーマを持つ仲間と出会い『対話』を重ねるうちに、仲間と自分の観点が交差し広がっていき、一枚のタペストリーのように成っていった。
そして、私の中にあった自分を縛ってきた役割を手放すことができ、自分自身も、人も、『そのままでよい、居るだけよい』と思えるようになった。思えば私が特に解決の手を差し伸べるまでもなく、葛藤しながらも子どもたちは自分の力で悩みを乗り越えているではないか。
専門家ではなく、まちに住むひとりの市民として、子どもや人とどう関わるか、このような視点を得たことは、これからの私の人生にとって、とても大きな学びであった。 CforCの仲間に出会えたことに深く感謝する。
CforC2022 修了生 あっちゃん
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