死と認識についての覚書
私が「私は絶対的に何も知らない」と言ったとき、少なくとも、私が自分のことを絶対的に何も知らない存在者であると自覚していたことは確かである。
「私は絶対的に何も知らない」と言うのは、例えば、これが赤色だとかあれは灰色だとか、こちらの右手でもう一方が左だとか、は私が知ったことではなく、私が教わってきたことだからである。私は、よくよく考量してみると、私はそのようにしかモノを知っていない、と気づいた。自己意識における茫洋、19歳の夏である。
「このようにしかモノを知らない人間が存在