日記:これが私だし私らしい
書道教室で毎年
「色紙カレンダーに好きな文字を書く」
という行事がある。
小学2年生の頃から書道を続けている私は、もう手本もなくなって「好きに書いて」と言われる。
1ヶ月前に「何書くか決めておいてね」
と言われ、前日にもリマインドが来たが私は文字を決めていなかった。
昔はよく干支を書いていたが、今ありがちな字を書くのは悔しい。
路頭に迷って家族にアイディアを募集すると、
「紲(きずな)」
「陽炎(リップモンスターの「かげろう」)」
「(びゃんびゃん↓)麺」
という意見が出た。
リップモンスターの陽炎にはお世話になっているし、確かに?と思い一旦「陽炎」に決めた。
先生は「陽炎、いいじゃない」
と言った。
だが直前になってピンと来ていないことが気になり出して、今度は「やはり詩にする」と言い出した。
先生は「いいじゃない」
と言った。
谷川俊太郎の詩を漁り、銀色夏生の詩を漁り、
色紙に書きたい言葉を探すがどれもピンと来なかった。
先生は「どれでもいいのよ」
と言った。
谷川俊太郎が書いたたくさんの本の表紙の画像をスクロールすると、ひとつの文字が見えた。
雑音の中でも自分の名前だけはっきりと聞こえるように、その文字は紛れなく私の目に入った。
先生に伝えると、
「......あぁ!ゆいちゃんらしーいねえ!」
と少し大きな声で言った。
私はその文字を、色紙いっぱいに堂々と書くつもりだった。
「私」の佇まいに先生が笑ってしまったのを、私は見逃さなかった。