自分だけの表現で他者とつながるー映画監督川添ビイラル氏
by城間メリッサ
Picture This Japanのメイン事業「横浜インターナショナルユースフォトプロジェクト」で、10月22日(日)映画監督の川添ビイラルさんに特別ゲストとしてお越しいただいた。
映像を通した表現や映画監督としての仕事についてクイズや質問を交えながら、進学や就職、自身の進路について考え始める学生たちにお話しくださった。
「言葉で伝えにくいことを映像で表現したい」
兵庫県神戸市で生まれ育った川添さんは、パキスタンと日本に繋がっている。
映画監督を目指したいと思ったのは小学校6年生のとき。たまたま受けることになったメディアクラスでは古いカメラを使用した映像制作の授業があり、ビイラルさんにとって映画監督人生最初の作品作成だった。
自由に映像を撮影・編集・発表し、クラスメイトと共有する。映像を通して表現するクリエイティブな授業のプロセスに強く共感し、この時初めて「映像に関わる仕事に就きたい」と思ったという。
その後、大阪にあるビジュアルアーツ専門学校に通い、本格的に映像を通した表現について学んだ。卒業後も映画作成の仕事に携わるが、大阪では予算も仕事も多くはない業界であるため、他の仕事を行いながら生計を立てていたと、駆け出しの映画監督時代について話す。携わった業種は、学校の英語教員や清掃員、コンサートダンサーなど多岐に渡る。
映画作成に関わり始めて7年。2019年に監督を務めた短編映画『WHOLE/ホール』を公開し、いわゆる「ハーフ」と呼ばれる青年たちの葛藤を表現した。
「ただ自分たちの表現がしたかった」
川添氏は、監督を務めた映画『WHOLE/ホール』を通して伝えたい事や自身のこだわりについて語る。
この作品には、自身や主演を務めた弟の経験や葛藤等が描かれており、「自分の物語」を誰かに届けることで観る人に新たな視点と出会う機会を提供すると同時に、一般に見えにくい視点を可視化して発信する側になりたいと語った。
自身がミックスルーツであるという背景から、今まで日本ではあまりフォーカスされてこなかった、アイデンティティやミックスルーツの人々についてが題材となる作品を手がける使命感を感じている。
それぞれが自分にしかできない表現をすることで、見落とされている問題に光を当て、より広い視点で他人への想像力を育てることに繋がる。ビイラルさんは、「違う経験をしてきた人同士が互いに寄り添えるような「橋」として映画を使いたい」と語った。映画監督としての仕事を通してより多くの人たちと出会い、自分自身の視野を広げつつ、社会に埋もれている問題にフォーカスする。次作は「動物の殺処分」をテーマにし取り組んでいるそうだ。
映画や芸術などの表現が持つ力について、『WHOLE/ホール』や今後の作品で次世代の表現者たちが「自分の物語」を伝えるようインスパイアしたいと話す。
プロとして自身の表現を追求するビイラルさんの軌跡は、参加者たちの「職」や「夢」の視野を広げ、個々の経験の価値や表現することの意義を改めて気づかせてくれた。
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