ごめん、なんで助けられなかったんだろう
オカマは私よりも年上だったので、先に中学校を卒業してしまった。
一度彼女の机に置いてあった、テストの紙の点数を見てしまったことがあるのだが、散々な結果であったことを覚えている。
「キャーもうみないで!」と、可愛らしい反応をしていたが、彼女は地元から遠く離れた学校に通うことになった。
それでも、時々会ってはショッピングモールを歩いたり付き合いを続けていた。
だから、電車で移動することが多くなったのだが、一度彼女の帽子が線路に落ちてしまったことがあった。
幸い電車はいなかったので、私はさっと線路に降りて帽子をとりホームへ駆け上った。
今では考えられないことかもしれないけど、ホームにいる人は何か言いたげに私を見ていた。
景子が「も〜あんた大好き!」と言って、泣き出して驚いた。
しかも、なかなか泣き止まない。
いいからもう、帽子とったんだから泣かないでと言ったが、景子は笑いながら泣き続けた。
閲覧注意
そんな景子は、中学生の時から出会い系サイトを使っていたのを知っていた。
出会いがないのよと笑いながら、こんな風に書いている人もいるのよと教えてくれた。
ある夜、景子が携帯電話に着信を入れてきた。
電話に出てみると、息が荒く
「苦しい!止まらない!助けて!どうすればいい?!」
と訴えてきた。
出会い系サイトのおじさんに、お尻の穴に薬を入れられてしまった。
震えと過呼吸が止まらないと言い出した。
こんなに恐ろしい電話がかかってきたのは、産まれて初めてだったのかもしれない。
必死の訴えも虚しく、電話が切れてしまったので、私は急いで景子の家電にかけ直した。
景子の母親が電話にでたので、「(景子の本当の名前)君大丈夫ですか?」ときいたら、「今寝てます」と言われて切られてしまった。
母親が、息子の様子みにいかないのか?
私は呆然として、その夜いろんな考えを頭にめぐらせながらも眠りに落ちた。
翌日、景子は意外とすっきりした声で「昨日はごめんね。もう大丈夫だから」と話してくれた。
昨夜の必死さはなくて、本当に落ち着いたんだと思ってしまった。
全然違った。
もう景子は私が助けられないほど、いろんな深みにはまって逃げ出せない状態だった。
私は景子に助けてもらったにも関わらず、このあと彼女が堕ちていくのをただみているしかなかった。
景子は高校卒業後失踪した。