きゆう
つぶやきのあと
生きているとさあ うまくできないことが沢山あるよね 昔は逆上がりが出来なくて かけっこで1位になれなくて 泥だらけになって練習しても 結局できないままだった テストでいい点数を取るのも羨ましくて 通知表の二重丸の数を競ってみたり 同じようにがんばってみた筈だけど 結局そんなに変わることはなかったな 生きているとさあ 苦しくて息ができないときや 冷や汗が止まらなくってぶるぶるしたり 悔しくて悔しくて涙がでたり うまくいかないことばかりだよね 子供だからできないのかもっ
笹の葉の舟が川の流れに乗るように 桜の花びらが揺蕩うように 世の中という見えない流れに 皆が己の身をまかせてる 抗うことも悪くない 気のままにゆくことも悪くない 笹の葉舟が澱みに詰まるように 桜の花びらが沈み込むように やがて流れに飲みこまれ 大きな大河とひとつになって 世界を形成する全てになる 終わりの見えることに嘆く者も 突然の終わりに嘆く者も 終着点は同じ場所 流れ流れる勢いにまかせ やがて世界のはじまりに戻る 笹の葉の舟も、 桜の花びらも、 あなたも、 わ
見たことのない景色を見たい その言葉につられて ふらふらと逃避行 凪いだ海のつるつるとした質感 しん、とした湿原に広がる濃霧 視界をも白銀に染める真冬の吹雪 見たことのない景色を見てみない? 轟音が身体に響いて揉みくちゃのハウス 柔らかな絨毯に白檀の香り漂う花道 箱の中で見ていた景色は 一歩炬燵から足を踏み出せば そこかしこに広がっている 目に映る鮮やかさ 光のまぶしさ 鼻腔をくすぐる季節のにおい 肌に当たる風と湿度 はじめての音は身体をめぐる 見たことのない
背伸びをしたら 届くだろうか 誰かに笑われない わたしでありたい 背伸びをしたら 掴めるのだろうか 後ろ指を指される人に なりたくない ジャンプをすれば 渡れるだろうか 池に落ちて笑われる そんな人になりたくない ジャンプをすれば 宇宙の果てに行けるだろうか そんな果てのない大望をと 蔑まれるのが目に見える 邪魔をする世界の誰か 嫌われたら 笑われたら 失敗したら たられば論で埋め尽くされる 雑音ばかりの世の中で 誰がわたしを信じるのだろう 誰がわたしを支えるのだろ
ねえ、聴こえてる? 太陽が明るい昼間のうちは 眩しすぎて見えないだけで、 月明かりになら照らされて ほんとは一瞬視えるのよ リボン結びが得意になって なんでも結んでいるようだけど 背中のリボンはまだまだね。 エプロンが斜めに傾いている。 オムライスはね、卵を3つ ふわふわとろとろに包むには 2つじゃちょっと足りないの ねえ、届いてる? 風はからだを吹き抜けるけど ちゃんと干渉しているの カーテンを揺らしたのはわたし ちゃんと見てくれていたかしら テレビを見ながら笑
寝返りを打ち ずれた布団を引き戻す 真昼の机の上ならば いとも容易く夢の世界に飛び込めるのに 真夜中の、時計の針が響くいま いかにして夢の世界に向かえばよいか 思考の海で溺れだす ひとつ寝返りをまた打って くるまる布団と目を瞑る 吸って吐いて 吐いては吸って はて、今はどちらのタイミング 浮かんだ時にはまるで水中にいるように 布団の海で溺れだす ふたつ寝返りを打って 仰向けになり天を仰ぐ 今日は何年何月で 生まれてからは何年経って 寿命は果たしていつ頃か 逆算しなが
絵の具を垂らした水色の 空に輝く雲のきらめき 薄青いちいさな花々は そっと巡る季節を語りゆく いとけない姿の愛し子は 砂に塗れてきんぴかの 団子を両手に咲く花よ いつしか消えた片方の靴 けんけんぱしながら帰り道 滲む紅、薄青に 宵の明星きらきらと 群青に染まる草ぐさは 流るる風の行き先を語る 指切り交わす紅葉の手 弾む心に巾着揺れる 空かしたお腹に白米を かき込む姿は愛し君 ご馳走様の姿に後光差す 濃紺のオリオン瞬く新月の 丑三つ時の宵闇に 息を潜めて風は凪ぐ いつ
くるくる くるくる 回転する世界を楽しみながら にこにこの笑顔を見せるきみ 生まれてきたその日から 同じ時間を生きながら きみと、きみの周りの人は 別の時間で生きている くるくる くるくる 延々と続く 陽気なダンス 天を仰ぎ きみは廻り続けてる きみが見つめる世界の色は いったいどんな輝きなの きみが喜ぶ世界の音は いったいどんな宝石なの くるくる くるくる 疲れては止まり また廻る きみは確かに、きみの周りの人よりも 歩幅は遥かに小さくて きみはどうしても、きみの
教室の机の上で ぴらりと広げた教科書は 睡魔に負けた痕跡とともに ページの端が折れていた 黒板に書かれた年号を ぼーっと眺めながら書き写す 延々と続く わたしの知らない世界の話 桜とともに 歳を重ねる 皺一つ無かった手のひらは いつのまにか刻まれた時を映してる あの教室のあの日から 時計の針は何百回も 同じ回転を繰り返すのに わたしは針が進むたび 過去という積み木を積んでいた ----- 折れ線のない真新しい教科書を ぴらりとめくる わたしの知っている世界が既に
雨にも 風にも 嵐にも負けず 幾つもの虚無感をも切り裂きながら わたしはわたしと言いきかせ 幾つもの日々を乗り越えてきた 誰かのナイフを受け止めて 切り裂かれるたびに縫い合わせ 大丈夫、だいじょうぶ、だいじょうぶ 何度も手のひらに書いては呑み込んだ 雨にも 風にも 嵐にも負けず 背中に刺さるナイフはいつしか 痛みを忘れて貫通していた 縫い合わせたと思った綻びは 絶望を忘れるための幻覚だった あなたが適当に吐いた唾 あなたがむしゃくしゃして投げた石 あなたが何気なく捨
カラスの親子が寝ぐらに帰る 夕焼け小焼けのすすき野原に 夕陽に染まったトンボがキラリ 土手の下を流れる川から 亀がゆっくり顔を出す 薄青空に白い月が照らされる 地面を這う羽虫たちは ぴゅう、と吹きつけた風で 一斉にあちらこちらに散らばった こぼれた枯葉の隙間から ころころダンゴムシが転がって 小さな秋が巡り出し 土の中からミミズが天を仰ぎ見る ミミズが見上げた果てなき宇宙 やがてそれは 銀河につながり 銀河の端の太陽光線は 秋の空につながってゆく そし
ことばを上手に伝えられたら どれほどよいことであろうか 言葉とことばの間には 人とひとの間には 読まねばならぬ 空白がある 気づかねばならぬ 隙間がある それは 小さな煌めきもなく 波打つガラスでもなく 手をかざしたってすり抜ける 空想するのだ 想像するのだ 妄想するのだ 読まねばならぬ 空白は 気づかねばならぬ 隙間は 見えないからこそ 描いた世界は変化する いま、君が投げた言葉を 受け取るわたしは どんなことばを返せばいい いま、君に投げた言葉は 彩あふれ
まもなく 電車がまいります 白線の内側の守られたラインから つま先を少しだけ出して 向こうの世界を覗きみる 決められたレールの上を 電車は滑らかに走り出す ガタゴト揺れることはあるが スピードさえ守っていれば 無事に終着点へと辿り着く 決められたレールといったって かたちはひとつな訳じゃない 真っ直ぐ一本だってあれば 右に左に分岐があって カーブの形もさまざまだ だから それでいいやって、思ってた 線路を飛び越えたりなんて いのちが幾つあっても足りないし レールのな
チクタク チクタク チクタク チクタク そおっと そおっと 抜き足、差し足 よるが部屋にやってきた ぴっちりと閉めた窓際の 青白いカーテンがゆらり、ゆらゆら 時計の針は相変わらずに チクタク チクタク チクタク チクタク 鼓動とともに時を刻む チクタク チクタク チクタク チクタク そおっと そおっと 背中によるがやってきた だれかいる ひやりとした気配に 目を開けた チクタク チクタク チクタク チクタク 背後でよるがあそんでる チクタクチクタク 振
在りし日の記憶を頼りに歩く 足跡はまだ、 帰る場所を覚えているはずだ ひとのこころが読めなくなった 目を開いても、あなたが誰かわからない 文字の羅列は理解できても 書かれた言葉は読み取れない いま、わたしが進むべき道は 右か左か、はたまた上か? 頭の中でこだまするわたしの叫びに わたしの身体は答えない 歩みを進める意味さえも 一歩進む毎に溶けてゆく 積み上げてきた月日はまるで 砂の城のように地面に還る 家の戸を開けるとあなたが待っていた おかえり、と掛けられた声に
夕焼け小焼けの今日が過ぎ じめじめとした闇が来る ナメクジが描く銀色の筋は 月明かりに照らされ艶めいている 紫陽花の花が青白く まるであの世の誰かのように ゆらゆらふわふわ揺れている 昼間の傘はまだ濡れて 乾く気配もうかがえぬ 先端からこぼれる雫は 真下を歩く小さき蜘蛛に降り注ぐ 月光は いつしか雲に隠れ 仄暗いスクリーンが降りる 忍足で地面を蹴る猫の影は 呑気な蛙に降り注ぐ 遠くでカラスがひと鳴きし 潰れた声がこだました