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シリーズA【5億円調達】”ドメインに深く潜り込む” 仮説検証を高速でまわすプロダクト企画・開発の裏側

こんにちは、不動産・建築DXプラットフォーム「PICKFORM」を提供するPICKでCPOをしている藤井です。
この度、PICKはシリーズAラウンドにて、累計5億円の資金調達を実施しました。

プレスリリースでも触れている通り、PICKは今後2年で7つのプロダクト開発を行っていきます。今回は、これまでのプロダクト企画・開発の裏側と、これからのPICKが面白い理由をプロダクト開発チームの視点で紹介します。




1.自己紹介

プロフィール
藤井 俊成(ふじい よしなり)
株式会社PICK CPO

新卒で積水ハウスに入社。戸建営業部で約5年勤務した後、日系コンサルティングファームに転職。BPR・販管費最適化に関する経営コンサルタントとしての経験を経て、2022年1月にPICK入社。CPOとして「PICKFORM」シリーズのプロダクト企画・運営を担当。

不動産業界での経験とSaaSビジネスとの出会い、PICKに入社した理由

学生時代、地元に大きな商業施設が建ち、自分自身や周りの人間の生活導線・環境が一変した経験から「建物には機能的にヒトやモノを動かす力がある」と気付きました。
それから、建造物や都市計画といったものに興味を持つようになり、新卒で大手ハウスメーカーに就職しました。
5年間営業として経験を積んだ後、経営コンサルティングファームに転職をしました。
ちょうどコロナが流行している時期だったため、多くの企業がビジネスモデルの転換を迫られており、各社が生き残るために必死で打開策を模索している状況でした。
特に交通インフラや医療機関・製造業の疲弊が顕著で、微力ではありますが、少しでもクライアントの経営状況が改善するよう、私自身も出来ることを必死で探しながら働いていました。
そんな環境の中で、強さを実感したのが無形商材を扱うIT業界でした。
時代の変化に対応できる柔軟性、在庫や長距離の配送ルートを持たないフットワークの軽さを目の当たりにして、IT業界に強い関心を持ち、個人の時間を使って勉強を始めました。

大手ハウスメーカー時代の先輩である代表の普家から声がかかったのはちょうどそんなタイミングでした。
「不動産業界の課題をITで解決したい」と聞き、自分にとっても絶好のチャンスだと感じました。
不動産・建築業界はネガティブなイメージを持たれやすく、業務改善が進んでいる今でも、敬遠されがちな業界です。
自身のドメイン知識を活かしながら業界課題を解決することで、そこで働く人達に少しでも貢献できればと考え入社を決めました。

2.PICKは何をやっている会社なのか

PICKのPURPOSEについて

PICKは不動産・建築業界に携わる全ての方々、そしてその成果物である建築物を利用する全ての方々により良い環境を提供することを目的として「住を豊かに」というPURPOSEを掲げています。
現在、このPURPOSEを実現するための手段として、「PICKFORM」シリーズをはじめとする不動産・建築業界向けのDXツールを開発・運営・提供しています。
いわゆるVertical SaaSと言われるビジネスモデルに分類される企業になるかと思いますが、
不動産・建設(建築・土木)は合わせると約100兆円規模の市場であるため、業界特化といえどもポテンシャルは大きいです。
我々はこの業界が抱えるあらゆる課題を解決し、PURPOSEの実現を目指します。

※ 「PURPOSE実現に向けたマーケティング戦略」が気になる方は阿部(アベ)のnoteをご覧ください。

具体的にどのようなプロダクトを提供しているのか

初めにローンチしたのが、不動産取引に特化した電子契約サービス「PICKFORM 電子契約」です。

「PICKFORM 電子契約」LP

その後は、契約対象となる物件に関する資料を一括で格納・管理できる「PICKFORM 案件管理」をローンチしました。

「PICKFORM 案件管理」LP

これらに続くサービスを、2年で7つリリース予定です。

3「PICKFORM」シリーズ企画・開発の裏側

初期構想〜「PICKFORM 電子契約」β版ローンチ

「PICKFORM」シリーズで解決を目指す課題や、構築したい世界観は初期構想段階から変わっていません。
もちろん、限られたリソースを最適化する中で注力するターゲット層や開発順序の入れ替えはありましたが、「契約」分野から参入し、不動産と建築の結束点にある課題を解決するという方針は初期構想から現在まで一貫して変わっていません。

※ 「なぜ契約領域から参入したのか」については普家(フケ)のnoteをご覧ください。

初めて「PICKFORM」シリーズの構想を代表の普家から聞いたのは、まだ入社前の時期でした。
「働いている当時これがあったら」「こんな課題も一緒に解決できたら」と想像が広がり、場所や時間を問わず色々な議論を繰り返し、とてもワクワクしながら入社の日を迎えたのを覚えています。

開発組織は私一人の状態からスタートしたため、開発体制の構築・要件定義・ワイヤー制作・テストマーケ・ユーザーヒアリング・法務要件の確認を並行して進めました。
話を聞いてくれる業者さんを見つけては、資料やモックを持ち込んでヒアリングを行い、仕様書・ワイヤーの磨き込みを続けました。

程なくしてCTOの林がジョインし、本格的なβ版開発が始まりました。
不動産の電子契約が解禁される2022年5月18日をリリースの目標日として定め、ディスカッションを繰り返しながら開発を進めました。
リリースが間近に迫ったゴールデンウィークに、開発組織全員が髭ボーボーの状態で、目を擦りながら作業したのはある意味良い想い出になりました。
(※ 今はもちろんこんな無茶しませんし、会社の制度的にもできません。)

「PICKFORM 電子契約」製品版ローンチ

β版ローンチの開発作業と並行して、国土交通省への法務要件確認を継続的に行いました。
少ないリソースをどこに充てるか、ひとつひとつの判断が会社の存続を大きく左右する時期だったこともあり、プロダクトの肝となる不動産取引フローの仕様に後戻りできない欠陥が生まれないよう、とにかく時間の限り情報を集めました。
国土交通省より公開された「重要事項説明書等の電磁的方法による提供及びITを活用した重要事項説明実施マニュアル」を嫌になるくらい読み込み、受け手により解釈が別れそうな部分を見つけては顧問弁護士に判例の確認を依頼したり、国土交通省の担当者の方に直接連絡を取って確認作業を進めました。
結論として、当初予定していた汎用的な電子契約サービスとのSDK連携を取り止めることを決めました。
汎用的な電子契約サービスのフローでは宅建業法の求める要件を満たすことが困難だと判断し、電子署名機能を自社開発する方向に舵を切りました。

※ 「電子署名機能の内製化という挑戦」についての詳細が気になる方は林(ハヤシ)のnoteをご覧ください。

電子署名機能を自社開発するという方針は、製品版のローンチを後ろ倒しにすることと同義であり、会社にとっても大きな判断でしたが、代表の普家に相談を入れたところ事情を理解して即OKを出してくれました。
あの時期に、あの決定を即断で下せる胆力を非常に心強く感じたのを覚えています。

電子署名機能の内製化は要件が複雑でかなり苦心しましたが、CTO 林の高い技術力に支えられ、不動産領域で国内唯一となる自社開発の電子署名機能を備えた「PICKFORM 電子契約」製品版を2022年8月にローンチすることができました。

「契約」領域をお預かりするための取り組み

「契約」というイベントは不動産営業にとっての晴れ舞台であり、これまでの努力が報われるご褒美の時間です。
同時に、「不測の事態を絶対に起こしてはいけない」と最も神経を使うタイミングでもあります。
私自身、無事に契約が締結される瞬間まで、毎回ドキドキしていたのを覚えています。

その「契約」という取引関係者の全員にとって大切なイベントを、名前も知らないベンチャー企業が作った、よくわからないサービスに委ねるというのはかなり重い意思決定です。
契約現場でサービス側に不具合が生じ、契約が破談になれば大きな損失です。
実際、印紙代や移動コスト、契約書の保管コストの削減を頭では理解しつつも、リスクが高すぎて導入には踏み切れないというお客様が多数いらっしゃいました。

サービスの遵法性や実用性には自信を持っていましたが、この「契約」という領域をお客様からお預かりするためには、「PICKFORMならば安心して現場で利用できる」とお客様から信頼していただくための「何か」を創り出すことが重要だと捉え、製品版ローンチが一段落した後は、開発と並行して走らせてきた下記の施策に大きく工数を振りました。


・グレーゾーン解消制度を活用した国土交通大臣からの適法性に関する回答取得

・ISO27001の取得

・Pマークの取得

・特許申請


グレーゾーンではサービスの「適法性」、ISO・Pマークでは企業としての「万全な情報管理体制」、特許では開発組織及びサービスの「高い技術力と革新性」を実証することを目的として施策を進めました。
実際、ひとつ施策を完了する毎に、お客様からの企業・サービスに対する「信頼度」が向上するのを実感できました。
なかでも最も反響が大きかったのがグレーゾーン解消制度による国土交通大臣からの回答取得で、「国土交通大臣から適法である旨の回答を取得したサービス」という目に見える結果を得たことで、様々な企業の法務担当者の方から沢山のお問い合わせをいただきました。
国土交通大臣からの正式回答を取得した電子契約サービスは、製品版ローンチから2年が経過した現在(2024年9月10日時点)においても「PICKFORM 電子契約」のみで、お客様から信頼いただける大きな要因になっています。

お客様により大きなアウトカムを提供するための取り組み

PICKFORMシリーズは不動産・建築領域の業務フローを一気通貫でカバーすることにより、情報の分断や管理工数の増加を防ぎ、ユーザーの皆様により大きなアウトカムをご提供することを目標のひとつに据えています。

不動産・建築領域の業務フロー

「PICKFORM 電子契約」の継続的なアップデートと並行し、契約の前後領域をカバーする新規プロダクトの開発を進め、2024年に「PICKFORM 案件管理」「PICKFORM 顧客管理」をローンチしました。
3つのプロダクトを連携することで、散らばっていた物件・顧客情報と各種書類データを一括で管理することが可能になりました。
情報の管理先が明確になったことで「PICKFORM 電子契約」の利用率が向上するという好循環が生まれています。

プロダクト連携による利便性の向上が取引数を増加させている

4.プロダクト開発組織としてのPICKの強み

ドメイン理解の広さと深さ

不動産・建築業界の内部はバリエーションに富んでおり、どのような商材を扱い、どのような取引形態を取るかで求められる専門性も実行する業務フローも大きく異なります。
弊社では便宜上14のセグメントに分割していますが、まさにVerticalの中にVerticalがある構造です。
扱う商材や業務フローが異なれば、当然抱えている課題も異なります。

セグメント一覧表

PICKには不動産・建築業界での実働経験を持つメンバーが多数在籍しており、それぞれに異なるバックボーンを持っています。
この実働経験が組織知として集積する構造になっている点が強みであり、顧客の課題特定や価値探索の精度の高さに繋がっています。

現場に出るカルチャー

PICKでは所属部署を問わず、現場に出て直接ユーザーに会うカルチャーを大切にしています。
エンジニアやデザイナーといった職種のメンバーも、営業同行はもちろん、お客様の実契約の現場に同席をさせて貰ったり、展示会イベントでお客様とお話しして貰ったりします。
「誰に何を届けているか」をより解像度高く理解していることが組織としての強みだと考えています。

高精度の仮説検証サイクル

仮説設定においてユーザーへのヒアリングや定量的なデータ測定はもちろん大切な工程ですが、個人的に最も重要なのは、自身が「ユーザーと同じ熱量で憤れるか」ということだと考えています。
「課題」に直面しているユーザーの心情や状況をどれだけ解像度高く汲み取れるかで、プロダクトの課題解決力には大きな差が生まれます。
システムの都合に寄りすぎないように、課題に直面している当事者だった頃の自分と、実現可能性を探る開発メンバーとしての自分を交互に行き来しながら、仕様設計やUIの制作に取り組むことを心掛けています。

それでも、どうしても無意識にシステム都合に寄ってしまうケースがあるため、最近は開発の前段階でモックを使って社内ヒアリングを実施しています。
業界経験があるメンバーからそれぞれの出身分野に沿った意見が集まるので、高精度の仮説検証サイクルが実現できる点もPICKの大きな強みだと感じます。

5.これからのPICKが面白い理由

新規プロダクトを継続的にリリース予定

PICKFORMシリーズは急速に成長しており、今後も2年間で7つのプロダクトをローンチしていく予定です。

オールインワンのプロダクトを目指す

既存プロダクトのグロース、0→1フェーズの立ち上げ、個人のWillや得意分野に合わせてどちらも選択・経験が可能です。
プロダクトがお客様を獲得し、グロースしていく、その源流のところからビジネスを体験できるのはとても貴重な機会だと思います。
能動的に動く人を全力で支援するカルチャーの会社なので、部署や職種を横断した動きも大歓迎です。

一緒に働く仲間を絶賛募集中です!

現在、PICKではプロダクト開発チーム、各部署にて絶賛採用中です。
資金調達を経て、いよいよ拡大フェーズに入ったPICKのプロダクトや事業にご興味のある方は是非ご連絡下さい。
記事を読んで少しでも興味を持っていただいた方、カジュアル面談しましょう!

目黒オフィス

【カジュアル面談のお申し込みはこちらから】

[Pitta]
藤井(個人ページ)

チーム紹介ページ

[YOUTRUST]
藤井(個人ページ)

[PICK採用サイト]


資金調達イベントについて

イベント情報①

軽いトークイベント+お酒と食事を嗜む緩い会です(笑)
資金調達記念イベントとして、9/19(木)19時〜21時にPICKの目黒オフィスで交流会の場を設けられればと思っております。
少しでも「PICKに興味がある方」などいらっしゃればお気軽にお越しください。
軽いトークセッションと軽食・お酒・ソフトドリンクもご用意しております。

申し込みページ:https://pick.connpass.com/event/328899/


勉強会について

イベント情報②

09/13(金) 19:30 ~ 21:15に株式会社estieさんのオフィスにて勉強会を開催します。
PICKからはCTO林とエンジニア重本が登壇します。
イベントテーマにご興味のある方は是非ご参加ください!

申し込みページ:https://estie.connpass.com/event/328999/


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