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愛に飢えた30代女性を一瞬好きになり、半年後にブロックした話
出張先でコロナウイルスをもらい、週末からずっと寝込んでいた。
熱が出た日には体を起こすことさえつらく、食事もままならない状態が続いたので、仕事の予定はもちろん、プライベートの連絡も全部後回しにしていた。
ようやくスマホを触る気力が戻ったころ、メールやLINE、Slackなどの通知を一通りチェックしていると、「会いたい」というメッセージをくれた女性が一人だけいた。
彼女の名前が画面に残っているのを見た瞬間、しばらく止まっていた記憶がふっと動き出すような気がした。
知り合ったのは出会い系サイトの日記
彼女との最初のやり取りは、このサイトがきっかけだった。
きちんとしたやり取りは想定していなかったが、たまたま目についた彼女の日記に軽い気持ちで「いいね」を押したところ、「はじめまして」というメールが届いたのだ。
最初は「どんな人だろう」という好奇心から返事をしただけだったが、メッセージの中に時々見え隠れする素直さと、どこか寂しさを抱えたような言葉遣いに興味をそそられた。LINEで直接やり取りするのも自然な流れだったと思う。
彼女は結婚して十年以上経っており、子どもが三人いる。
一方で、家庭ではモラハラ気味の夫に悩まされ、職場の飲食店でも人手不足やトラブルが絶えないという状況らしかった。
家で息苦しく、外でストレスを抱え、それでも生活は続けなくてはならない。
そんな疲れがたまったときに、気晴らしも兼ねてこのサイトで日記を書いていたようだ。
「家と職場だけにいると頭が煮詰まるから、違う世界に触れたくなる」と彼女は言っていたけれど、その言葉にはちょっとした切迫感を感じた記憶がある。特に職場では、上司や同僚と妙な共依存関係に陥りがちだと、自分でもわかっていると言っていた。
「近場の人に強く依存してしまう」――彼女はそう自覚していながら、誰かに優しくされるとあっさり好きになってしまう。
そのせいで社内もややこしくなりがちなのに、結局また誰かに頼ってしまう自分が情けないと嘆いていた。
愚痴をこぼす彼女の文章には、どうしようもない混乱と苦しさがにじんでいたが、一方で他人に弱みをさらけ出せるほど素直でもあると思った。
LINEで頻繁にメッセージをやりとりするようになるまで、時間はあまりかからなかった。
僕も出張が多く、一人で過ごす夜にメッセージのやり取りをするのはちょうど良い気晴らしだったし、彼女も「家にいるとすぐに息が詰まるから、LINEを見られるタイミングで返すね」と言ってくれた。
そうして連絡を取り合っているうちに、一か月ほど経った頃に「じゃあ実際会ってみようか」という話が自然と出てきた。
これまでのやり取りで共感できる部分も多かったから、不思議と初対面への不安はなかった。
6月の渋谷と、白いTシャツが似合う笑顔がまぶしい女性
実際に会ってみた彼女は、ネット越しの印象以上に素直で、少し不器用なところがまた魅力的だった。そして、若い頃に働いていたキャバクラでは常にトップランカーだったというルックスは、周囲の男性を魅了するには十分な説得力を持っていた。
示し合わせた訳でもないのに、お互い白いTシャツにデニム姿だったのは、今でも微笑ましい思い出だ。カフェでの待ち合わせもスムーズで、画面越しの会話と変わらぬテンポで話が弾んだ。
「やっぱり実際に会うと雰囲気が違うね。でも話しやすい」という彼女の言葉を聞いて、こちらも安心したのを覚えている。
そして、何となく初めから「そうなる予感」があった。
会う前のLINEでも「時間があればこのままホテルに行くのもいいかもね」なんてやりとりがあったので、実際ホテルに入るのも自然な流れだったのだと思う。
もちろん、一瞬はためらいもあったが、彼女が日々抱えるストレスや、僕自身の多忙な暮らしを思うと「今、こうして互いの時間を作れたのは何かの縁かもしれない」と感じたのだ。
唇を軽く噛むようなキスを繰り返し、細い身体をムチのようにしならせて動く彼女の目は、まっすぐにこちらを見つめていた。
彼女自身が「セフレはいや」「心のつながりを求めてる」と言っていたこともあり、その気になれば本当に恋愛関係へ発展できるのではないか――そう思うほど濃密な時間だった。
会いたい・会えないのループが関係を変えた
ところが、あのセックスを機に一気に距離が縮まったはずなのに、彼女は急に「体調が悪い」「会うのが怖くなった」と言い始めた。
さらに、ある時は職場に気になる男性ができたと言い、また別の日にはホルモンバランスが崩れているから無理だと、当日にドタキャンすることも増えていった。
最初の一、二回は「家や職場のゴタゴタもあるだろうし、仕方ない」と思ったが、同じような理由が繰り返されると、さすがに気持ちが薄れていく。
「やっぱりあなたがいい」「今度こそ会いたい」とLINEで求められても、「どうせまた…」と感じることが多くなった。
彼女はいつも「人を好きになるハードルが低いのが自分の悪いクセ」と自覚している割に、相手の時間や精神的リソースを奪っていることへの罪悪感はあまりないように見えた。
「自分から突然突き放し、またある日突然戻ってくる」――その動き方は、共依存のパターンを何度も繰り返しているのではないかとさえ思える。
恋愛感情を求めつつ、いざ追いかけられると逃げたくなり、かと言って相手の都合を深く考えずに「やっぱり会いたい」と呼び戻す。
そうやって不安定な関係を保とうとする傾向は、彼女の職場でも家庭でも似たような形で現れているのかもしれない。
はじめこそ親密になり、一度は「付き合うのもありか」と考えたほど彼女に惹かれたのは事実だ。
けれど、ドタキャンを何度も重ねられ、ほかの男性に惹かれる素振りを見せられたりするうちに、「自分がこの関係から得るものはない」と思い始めた。
ほんのひとときは確かに恋心に近い感覚があったけれど、結局はエネルギーを吸い取られるだけのものになりかねない。
そこまでして付き合う意義を感じられなくなったとき、自分の中で何かがスッと冷めた。
ドタキャン女につける薬は無し
冒頭のLINEは、彼女からの着信を一か月ほど放置していた後に届いたものだった。
「私、もう1回Tさんに会いたいな」というメッセージを見ても、体調不良で辛かったせいか、不思議と感情は揺さぶられなかった。
「でも、君ドタキャンするからなぁ」と返したのは、少し冷たいだろうかと思ったが、内心「ここまで引っ張る必要があるのか」とも感じていた。
すると、彼女は逆ギレしてLINEをブロック。
おそらく、自ら誘って直前になって拒む行動を何度もしてきた彼女は、逆に相手から拒まれる展開に慣れていなかったのだろう。
今になってみれば、彼女はそもそも落ち着いた付き合いができるタイプではなかったのだと思う。
職場や家庭で追い詰められているせいか、あるいは元々の気質なのか、常に新しい依存先を欲しているようにも見えた。
そんな相手を本気で支えようとしたら、こちらが振り回されるのは目に見えているし、すでに何度となく同じ繰り返しを経験させられているわけだ。
一度は心が通ったと感じたことも嘘ではないが、それだけで一生面倒を見るほどのモチベーションを僕は持てなかった。
あのとき、彼女がブロックしてきたのは、一見すると突然だけれど、むしろ必然的だったのだろう。
本当のところ、僕自身も「このままやりとりを続けても無駄かもしれない」と感じ始めていたし、彼女の自己満足に付き合うつもりもなかった。
僕には僕の仕事や新しい出会い、そして生活がある。
ドタキャンを繰り返す彼女を優先する余裕はなかったし、彼女にとっても、僕よりもっと都合よく心を満たしてくれる相手のほうが性に合うのではないか。
人の時間や精神力を奪うことに無自覚な人を追いかけても、得られるものはごくわずかだと思う。
女性の一挙一動に媚びをへつらうような男性なら、適度にちやほやしてくれて、彼女と長引く関係を築くかもしれない。
でも僕は、からかいつつ追い返すほうがよほど健全だと、いまなら胸を張って言える。
この話はここまで。
この話に何か教訓があるとすれば、
「心地よい距離感の異性に構ってもらって、気分転換をしたいだけ」の女性からは何も得るものは無いということ。
もし、相手の身体目当てだったとしたら、時間をかければ落とせる可能性があるだろう。しかし正直コスパは悪い。さっさと見切るのが正解。 かけた時間の割に、得られるものはたかが知れている。男も女も星の数ほどいる。一番、自分にふさわしい星を目指そう。
ではまた、どこかのタイミングで。
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