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それでも彼が好きだった〜私の憂鬱な日々
(よし、午前中が終わった…)
張り詰めていた集中力が和らいだ。
空調の音しかしない無菌室の中で壁の掛け時計を確認する。
時計の針はちょうど昼交代の時間を指していた。
中にいたメンバーは片付けを始め、科長は引き継ぎを行なっている。
(午前中は患者さんが多くて大変だったな…
大変な抗がん剤も多かったし)
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私、ぴちこは普段病院の薬剤部で働いている。
大きい病院のため業務は部署ごとに細分化されていて、私が所属している部署の仕事は無菌室の中で抗がん剤の調整をするという繊細な業務だ。
被曝しないように着ていたガウンや二重に重ねたニトリルの手袋を脱いでいく。
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当時の私にとってはこの集中力を要する仕事が有難かった。
集中するから、無心になれるし余計なことを考えなくて済む。
というのは当時の私には寝ても覚めても思い浮かんでしまう“悩み事”があったのだ。
そのことについて考え始めると
私はどうしようもなく辛く、しんどく、寂しく感じてしまい
悲観して泣きながら眠りにつく日もあった。
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無菌室から出たあとは社食に向かう。
途中で午前中放っておいたスマホの画面を覗き込んでみた。
画面が反転していくつかの通知のアイコンがにょきっと画面に現れる。
それらを一通り確認し、私は誰も気が付かないくらいの小さなため息をついた。
あぁ
やっぱり彼からの連絡はない。
寂しい。
きっと彼はもう
私のことなんか無関心なんだろうな。
私の悩みとは別れて半年ほど経つ元彼・シンジとの復縁であった。