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スナックは水に浸して ~カラスの食事作法編~

カラスも行水をするだけなら、これほど嫌われることはないのだろうが、彼らも生き物だ。行水でお腹が満たされるわけではない。そこで手っ取り早く、エサにありつくためにゴミをあさる。

「ゴミの日」は、彼らにとっては「ごちそうの日」だ。朝の鳴き声も、いつになくご機嫌で、近所を縄張にしている「ヘェーッ、ヘェーッ」と鳴くカラス、通称「へぇちゃん」の声も、心なしかワントーン高い。

ゴミの日は、収集車が来るまでが勝負だ。ゴミ袋にネットがかけられていない、あるいはネットのかけ方が甘い場所は、絶好のレストランと化す。

彼らは持ち前の視力の良さで、食べ物をすぐさま探し当て、一突きで袋から引っ張り出す。引っ張り出した朝食の中には、未開封のスナック菓子もある。それを肢で抑えて、くちばしで封を開けるのだから、器用なものだ。しかも、取り出したスナックが硬くて食べにくい場合は、水たまりに浸して足で軽く押さえて、程よく柔らかくして口にするというグルメぶりだ。

グルメといっても、食べられるものは何でも食べる雑食性で、動物の死骸から残飯まで美味しく平らげる。いわば、生物の世界では「スカベンジャー」と呼ばれる、世間の掃除屋さんでもある。町中にスズメなどの死骸が見当たらないのは、カラスのおかげと言える。

黒い姿と、ハシボソガラスのしゃがれた声から、不吉だとか気味が悪いとか言われるが、よほど優しそうな見知らぬ人の方が気味が悪い。

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