童話 | 天使と悪魔
1人の悪魔が大暴れしているという通報を受けた天使たちは、現場に駆けつけた。
「あいつか」
天使たちは悪魔に一斉に矢を向けた。
「おい、そこのお前たち、なにも言わずに人にいきなり矢を向けるな!一応お前らは天使なんだろ?」
悪魔の言葉に天使たちはたじろいだ。
「私たちは天使だ。相手の言い分はちゃんと聞くことを信条としている」と、リーダーの天使は言った。
「みんな! いったん矢を下ろせ!」
この言葉を聞いて、天使たちは向けていた矢を下ろした。
「さすが、これだけの人数を束ねるリーダーさんだな。悪魔といえども、話の分かる奴とはちゃんと話をするつもりだ。それまで魔力は使わない」
悪魔とリーダー天使の対話が始まった。
「つまり、あなたはただ寂しかっただけなんですね」
「そういうことだ。あんたら天使だって、人に話を聞いてもらいたいことはあるだろう?だから、少し荒れたように見せただけさ。」
「悪かったですね。ただ、寂しいだけで暴れられたら困ります」
「『荒れた』だけ。暴れたのは君ら天使たちのほうだね」
「じゃあ、私たちはこれでひとまず引き下がります」
「そうか、それはありがたい。俺は本当は今から、静かに死のうと思っていたところなんだよ」
「あっ!」
次の刹那、悪魔は崖からまっ逆さまに落ちていった。骨という骨が砕け散る音が辺りに響き渡った。
気がついたときには、天使たちは全員悪魔に成り果てていた。堕天使たちはお互いの顔をまじまじと見つめあった。
(終わり)
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