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詩 | 星の種

星の種は
太陽が西に傾く頃に
生まれると
言われている

見たことがある者は少ないが
僕はその数少ない人間の
ひとりになった

7時をまわっても
まだ明るさが残る頃に
僕は確かに見た

太陽が西の空に沈むとき
薄暗くなった蒼穹に
微かに白い輪郭をもつ
夜の太陽が現れた
その中心には
一番星が輝いていた

夜の太陽の周辺から
無数の星が地表に
降り注いでいた

太古の昔から
夜の白い太陽は
「星の種」と呼ばれている
確かにそこから
多くの星が
あふれ出てくるように見える
だから「星の種」と
呼ばれてきたのだろう

「しかし」と僕は思う

星の種から
地表に落ちてくる星は
生を失って
死をまとった星々なのではないかと

地表に落ちた星は
原子まで分解されるのだろう
そして新たな分子となり
天にのぼって
やがて再び大きな星に
なることだろう

何億年という時間をかけて
新しい星が生まれ
天空で何億年の生涯を送り
一瞬にして地表に
降り注ぐのだろう

人間も星と同様な生涯を送るが
悲しいかな
人間の一生は
せいぜい100年程度しかない

僕という星が生きているのは
あと数十年程度しかないだろう
でもきっと
その程度の長さの生涯のほうが
この世に恋々としなくて
済むことだろう
 

 

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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします