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短編 | 運命の赤い糸①

 運命の糸は目に見えないはずなのに、誰が赤い糸と言い始めたのだろう?
 ふとした瞬間に小指を眺める。赤い糸なんてまったく見えない。もしかしたら運命の赤い糸は、目を開いて見るものではなく、目を閉じて感じるものなのかなと思ったりする。けれども、目を閉じたら、なにも見えない。微かに光の濃淡を感じるだけ。運命の赤い糸なんて、迷信か言葉のあや。そんなふうに思っていた。

 そんなある日、親友の沙耶が言った。「あたしね、浩平くんと赤い糸で結ばれてたんだって」

「沙耶、赤い糸って見えるの?」

「見えるらしいよ」

「沙耶にも見える?」

「いや、私には見えない」

「誰が『赤い糸で結ばれてる』って言ったの?」

「『コネクター』の亜伽里さん。優奈も見てもらったら。きっといい人と赤い糸で結ばれてるはずよ」

 『コネクター』。噂には聞いていた。最近できたばかりの占い師の店だ。よく当たるという。私は占いは信じない。けれども、話のネタにはなる。

「優奈、私と一緒に『コネクター』に行ってみる?」

「行ってみようかな?沙耶も一緒なら」

 今になって振り返ってみると、これが信吾くんと私との恋のプレリュードだった。


…つづく



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山根あきら | 妄想哲学者
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