見出し画像

短編 | 運命の赤い糸⑦


#前話はこちら (↓)



 私はあまりにも突然のことで、喜ぶことさえ忘れていた。

「なんで、ここに信吾くんが?」
 
 信吾はふふふと笑った。

「なんでって言われても。優奈が好きだから好き。迷惑か?」

 私は激しく首を横に振った。

「ぜんぜん。私も信吾くんが好きよ。でも突然だったから」

「だよな。優奈、ちょっと二人で話さないか?」

 信吾は私の手をひいた。彼の手はとても温かかった。
 私は信吾と手をつないだまま、歩き始めた。ギュッと信吾の手を握ったら、彼は私の手をギュッ、ギュッと握り返した。ふふふと笑ったら、彼はフンと言いながらニッコリした。こんなに柔和な信吾の笑顔を見るのは初めてだった。

「ここでいいかな。お茶しよう」

 えっ?私は驚いた。信吾の視線の先には『コネクター』の看板が見えた。

「ここは、亜伽里さんの占いの…」

 信吾は照れくさそうに言った。

「実はオレ、昔、亜伽里さんと付き合っていたんだ」

 衝撃だった。信吾くんとあの亜伽里さんが付き合っていた?

「亜伽里さんとオレは」
 信吾は言い淀んだ。ふぅと息を吐いたあと、信吾は続けた。

「亜伽里さんとオレは、姉弟なんだよ」

 2度目の衝撃が私を襲った。信吾くんと亜伽里さんが姉弟だなんて。

 驚く私に気にすることなく、信吾くんは私の手をひいたまま、『コネクター』の中に入っていった。


…つづく


#運命の赤い糸
#短編小説
#創作
#亜伽里
#沙耶
#優奈
#信吾
#浩平

いいなと思ったら応援しよう!

山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします