短編 | 運命の赤い糸⑤
前話はこちら(↓) [全10話です]
「亜伽里さん、あの…。信吾くんと私は運命の赤い糸で結ばれていますか?」
私はいちばん聞きたいを尋ねた。
「優奈さんは『運命の赤い糸』ってあると思う?ホントに赤い糸があるならば、見えるんじゃないかしら?」
「えっ?私には見えませんが、亜伽里さんには見えるんじゃないんですか?だって、私の心の中が見えるんですから。きっと赤い糸だって見えるのでは?違うんですか?」
亜伽里さんは、ふふふと笑った。
「私も優奈さんと同じよ。赤い糸なんて見えないわ。だって赤い糸は見えるものじゃないから」
見えるものじゃない?だったらなんなのだろう?
亜伽里さんはつづけて言った。
「赤い糸は見えるものじゃなくて、信じて、そして、作り上げていくものなのよ」
「信じるというのは、神様を信じるようなものですか?『赤い糸』は最初からあるものじゃないということですか?」
「ふふふ、そういうことね。人間の絆ってね、最初からあるものじゃないのよ。だから、『赤い糸』が本当にあるのかどうかは誰にもわからない。だけど、出会った二人がお互いに『赤い糸がある!』と信じれば、徐々に形になっていく。何度も会って言葉を交わしている間に、『赤い糸』があるじゃないか!!って思えるようになるの」
亜伽里さんの言うとおりかもしれない。最初から運命の赤い糸で結ばれているんじゃなくて、「信じて作り上げる」というものなのだろう。
ニコニコ笑いながら、亜伽里さんが言った。
「信吾くんと『赤い糸』で結ばれているといいわね」
私はこのとき、信吾くんと私が赤い糸で結ばれることを信じた。
「あら、もうこんな時間。そろそろ、沙耶さんと一緒に家に帰ったほうがいいわね」
「今日はありがとうございました。また、お話を聞いてもらいに亜伽里さんにここに会いに来てもよいでしょうか?」
「もちろんよ。何か相談したいことがあったら、いつでも来てね。遠慮しなくていいから」
「ありがとうございます」
亜伽里さんに礼を言ったあと、沙耶と私は一緒に家路についた。
「どうだったの?優奈。赤い糸は?繋がっている人はいたの?」
「赤い糸は、最初からあるものじゃないんだって。出会った二人が赤い糸があることを信じて、作り上げるものだと」
「で、優奈には、赤い糸で結ばれたい人はいるのかな?」
私は、「うん」とも「いない」とも言わなかった。亜伽里さんの真似をして、「ふふふ」と笑った。
そういえば、亜伽里さんはなぜ信吾くんの名前を知っていたんだろう。沙耶には私が信吾くんのことが好きだと言ってないし。
でもそれは、信吾くんにコクったあとに亜伽里さんに聞いてみよう。
…つづく