短編 | 運命の赤い糸④
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「優奈さん、あなたに今好きな人はいますか?」
亜伽里さんが静かに尋ねた。いきなり核心をつく質問に戸惑ったが、私は横に首をふった。
「本当にそうかしら。もう一度聞くね。優奈さん、あなたに今好きな人はいますか?頭の中に今思い浮かんだ人はいましたか?」
なんだろう?なんでだろう?
亜伽里さんの声を聞いていると何でも話したくなってしまう。いま、私の頭の中には、1人だけ思い浮かんだ人がいた。
「優奈さん、どうやら思い浮かんだ人が1人だけいたようね。私に話すのは照れくさいでしょうから、名前は言わなくてもいいわ。その男の子のことは、今の優奈さんにとって『好き』と言えるような相手ではなさそうね。違うかしら?」
私をじっと見つめながら、亜伽里さんが聞いた。ダメだ。この人には嘘はつけない。でも、恥ずかしい。話していいものだろうか?
「その男の子は、不良っぽい人だもんね。ほかの人からいろいろ誤解されやすい人だしね。でもね、私の目には、とても心のきれいな人に見えるよ。どんな時も優奈さんを守ってくれる」
「そうなんです!」
自分でも驚いた。亜伽里さんには私の心が見えている。きっと信吾くんのことも。
「優奈さん、信吾くんも優奈さんのことが好きみたいだよ。優奈さんからコクるのもアリだと思うなぁ」
「えっ?」
なんで信吾くんの名前を知ってるの?誰にも言ったことがないのに。親友とはいえ、沙耶にも一度も話したことがない。
「どうして?どうして亜伽里さんは、私が信吾くんのことが好きだとわかったんですか?」
ふふふ、亜伽里さんが笑った。
「どうしてって。私、占い師ですもの。優奈さんの頭の中に思い浮かんだことなら、何でも見えてしまうのよ」
頭に思い浮かんだことが本当に亜伽里さんには見えるのだろうか?
それにしても、信吾くんの名前までズバリ言い当てた。どうして?
「私にはね、その人の頭の中のイメージだけじゃなくて、思い浮かんだ言葉も読めてしまうの」
亜伽里さん。この人は本当にスゴい。私は畏怖の念を禁じ得なかった。
…つづく