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詩 | 微睡みの夢に届きし雪解の音

自己ベストから
遠く離れた
ワースト記録を
叩き出したとき
通りすがりの
傍観者が
あなたの泳ぎは
素晴らしかったと
私を褒め称えた

自分の全てを
かけて臨んで
最悪の結果に沈んでいるとき
最も聞きたくない言葉だった

無言のまま
傍観者から離れると
「なにさ、人が褒めてやったのに」と
私をののしる声が聞こえた

自分との戦いに敗れたとき
善意の傍観者ほど
人を傷つけるものはない
「ありがとう」なんて
言えるはずないじゃないか

善意の傍観者は
見ず知らずの私に
「ありがとう」という言葉を
期待していたのだろう

わかるよ わかりますよ
でも  人から褒められることなんて
全く臨んでいなかった
誰にも何も
期待なんてしていなかった

ただ傍観者は
感想を言ったに過ぎない
しかし 
私の「ありがとう」という言葉を
無意識にせよ 期待したのだろう

みんなそうだ
「何も臨んでいない」という
フリをしながら
「ありがとう」を強要する

人間嫌いの私は
ますます人間嫌いになった

けれども私自身の
悪意のない言葉が
たくさんの人を
傷つけてきたことだろう
だから人は人と
かかわってはならない

明け方まで
一睡も出来なかった耳許に
夢かうつつか
音が聞こえた

降り積もった雪が
溶け出した音だった
みんなみんな
すべて消え失せてしまえばいい

あなたという傍観者が
私に教えたのは
「他人とはかかわるな」という
教訓だった

善意は人を悪魔にする
それが真理だ
春の雪のように
ぜんぶファンタジーなら
どれほどか救われることだろう


#俳句
#詩
#詩のようなもの
#死
#死のようなもの
#figment_of_imagination
#桜
#桜は死後の世界に咲く



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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします