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短編 | 運命の赤い糸⑨ (最終回直前)


前話はこちら(↓)



 1時間前には、まったく予想も出来なかった。
 信吾くんが私に告白してくれたこと。二人で『コネクター』にやってきたこと。亜伽里さんと信吾くんが姉弟だったこと。そこに私の運命も絡み合っている。

 信吾くんのことが好き。亜伽里さんのことも好きだ。信吾くんへの恋情と亜伽里さんへの敬慕の念との間で、私は揺れ動いていた。まるで、蜘蛛の巣にかかって、動こうとすればするほど、余計に逃れられなくなるかのように。
 
「信吾くん、どうしてこんな大切なことを私に隠していたの?」
 私は信吾くんに問いかけた。

 信吾くんは複雑な表情で言った。
「優奈、ごめん。言えなかったんだよ。姉さんとも、上手くやっていきたかったから。過去の悲劇はもう忘れたいと思っていたし…でも、やっぱり優奈と付き合っていくには、ちゃんと姉とオレの過去を言っておかなきゃって思ったんだ」

 亜伽里さんも、私の問いかけに静かに答えた。
「優奈さん、信吾は本当に心の優しい良い子なのよ。でも、正直すぎるところがあるわ。優奈さんのことを思う気持ちは本物なの。ただ、過去に縛られてしまうところがあって。でも、優奈さんと出会って、少しずつ変わろうとしていると思うわ」

 私は、亜伽里さんの言葉に少しだけ心が安らいだ。しかし、心の奥底にはまだ、もやもやとしたものが残っていた。

「信吾くん。亜伽里さん。二人の過去になにがあったのですか?二人が別々に生きてきたことと、信吾くんの背中の火傷には、なにか関係があるんですか?」

 二人は黙って聞いていた。沈黙がつづいた。しばらくして、信吾くんと亜伽里さんの目が合った。
 亜伽里さんが頷くと、信吾くんも頷いた。

「信吾。私から優奈さんに、私たちの過去のことを話すね」
 信吾くんが首を縦に振った。それを見て、亜伽里さんはゆっくりと、二人の過去について話し始めた。


…次回、最終話


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山根あきら | 妄想哲学者
記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします