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文化の現在性


ベトナムの楽器
 ベトナムの楽器トルンは、人々の生活の中で演奏されてきた竹楽器である。近年は楽器として演奏するために、元々持っていた5音階に加えて、演奏の幅を広げるために西洋音階も鳴るようになっている。これは、楽器として演奏の幅を広げるために、特性を残しつつ変化した結果である。
そのような変化の過程から、トルンへの優しさやリスペクトに加えて、現代に合わせて変化した現在の状態の美しさを感じ、とても感動をした。

この体験を通して、伝統的な物事の現在性について考えてみた。

トルン
(真ん中の竹が5音階、左右の竹が西洋音階)

エスニックツーリズム
 現代社会において民族文化は、エスニックツーリズムとして表層的に消費されていることが多いと考える。しかし、観光産業に支えられて文化が保存されている側面もある。このような矛盾する要素を内包している伝統文化の状態について、自分の中で答えのない迷いがあった。しかし、過去から引き継がれてきた伝統文化に加えて、現在の状態も大切であることを意識するようになった。伝統楽器との関わり合いの中で、楽器の文化的背景などを理解し、敬意を持って接することで現在の新たな美しさが生まれるはずだ。

山車とスピーカー
身近にある伝統文化や習俗の現在の状態についても考えた。友人の住む千葉県の八街市で行われている八街神社大祭の山車に、スピーカーが取り付けられている。区ごとに、山車がありそれぞれの区によって特徴が異なっていた。六区の山車は大胆に山車の屋根の上にスピーカーを設置していた(図1)。一方で、一区の山車はお囃子の音を拾うためのマイクは外から見えるが、スピーカーは山車の内部に付けられ、山車の外観には影響をしていなかった(図2、図3)。

図1( 八街神社大祭 六区 山車とスピーカー ) 
図2( 八街神社大祭 一区 山車とスピーカー 、マイク)
図3( 八街神社大祭 一区 山車とスピーカー 、マイク)

空気が振動して人に伝わる音が、スピーカーで拡大されることで、人の受け取り方も変化する気もするが、現代の合理的な考え方と伝統が融合している現在性の一つの例として考えられる。
 六区の山車の外側につけるスピーカーと一区の内部につけるスピーカーは、設置する部分が異なるだけではあるが、伝統と現代のバランスを考える上では、大きな違いがあるはずだ。西洋音階を持つ、楽器としてのトルンは、本来のトルンの外観を大きくは変更せずに、伝統と現代生が融合している。伝統に現代的な要素を加える時には、元々の状態への理解、敬意が必要である。
 私が去年参加した幕張町の子守神社の祭りでは、お囃子をトラックの荷台で演奏していた。(図5)祭りに参加する人数が少なくなった影響なのかは分からないが、山車の代わりにトラックを使用していた。伝統を残していくための工夫とも考えられる。

図5( 幕張 子守神社 お囃子とトラック )

 伝統を守るためにも、迫り来る未来のためにも、伝統文化の現在の状態をもっと理解し残していきたい。伝統と現代のバランス感が重要であり、細かな優しさで変えられる。

伝統に対する理解を深め、敬意を持つことを意識していこうと思う。


トルンの基本情報
https://ameblo.jp/hotelevent5/entry-12652038734.html
トルンの演奏
https://youtu.be/3aam9O4tCBo?si=PVO4YP2r2kYV1ZWn


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