Fall luce
鉄筋コンクリートが背中に温度を伝えて
読みかけの小説の上に
透きとおった陽だまりができる頃
来てしまったんだ、春!
君の睫毛の下の翳が柔らかに濃くなり
小さな木漏れ日のように揺れるヒカリ
あの樹のしたで 誰かの残像が見えるよう
手を振り笑って 僕は
その切なさを楽しんで
白光が染める階段に 涙が綺麗
そしてつくられるのだ、春!
微睡む風、瞼を半分閉じて
あゝ夢の中で溶けてしまいたい
君の笑い声が聴こえたのか
僕は笑う
窓際の席がひどく募らせる恋しさ
見知らぬ季節が迫る
花びらは土に還る
誰がそれを思い出すだろう
だから繰り返すのだ、春!
(2014 春)