ゆめぴか通信 第n話
バイキング形式のスペースがある。
ひとりでなにか食べている。
どれもいつまでも食べたい気持ちになっていたけれど、どんな味だったんだろう。
明日もこれだとどうかな、いくらかかっちゃうかな。時間制限ないけれど、ここに泊まればずっと食べられるのかな。とか考えていた。周りにはたくさんの人がいて、わたしは1人でずっと黙って食べたり移動したりしていた。
場面変わって、見知った街にいる。
田舎のお祭りみたいな賑やかさで、でももう終盤みたいだ。いろんな団体が練り歩いたり声を上げていたり。犬をたくさん連れた団体もいる。普通の犬じゃない。座っているのにわたしの身長の3倍くらいの背丈の大きな犬もいる。特に怖いとは思わなかったけれど、首から下げるプレートをその犬にかけてあげるのは遠慮した。そう、いつのまにかわたしの首にダンボールで作ったプレートがかけられていて、そこに書いてある文字を読むと、どうやらこのわんちゃんたちはレースの途中で、1番先頭がこのプレートを下げておくべきらしい。自由にさせられていたから、落としちゃったんだろう。届けなくちゃ。
犬のことはすっかり忘れて、家族とたしか少しの親戚と一緒に、ビルの小さい入口からエレベーターに乗って、ショッピングモールに入る。服やアクセサリーやお花、ご飯や遊び場、なんでもあって、わーっと駆け回ったり。
本屋がある階を見つけて、食事処の横で棚に持たれていた妹に、本がいっぱいあるよ、そこにいくといいよ、と言った。いつもの妹ならきっとここにいるよりも本の近くがいいと思ったから。
でも妹は、今日はいい、と言った。疲れているとも言っていたかも、たしかに少し疲れたような顔をしていた。
子供服の並ぶ場所で、後ろに親戚のちびっこたちを従えて歩いていた。すると、ふいに目の前に女の子が飛び出してこちらを振り返る。
同じ顔!同じ顔だ、わたしと。
とっさきにわたしは、
「殺さなきゃ!」
と言った。
後ろにいた子達が、わかった!と言って、わたしそっくりの女の子を追いかける。
なんでそんなこと言っちゃったんだろう。本当は殺したいなんて思ってない。慌てて、「やっぱりいいよ、好きにさせとこう、ごめん変なこと言って...」
そういった頃には、もう1人のわたしは無邪気な笑顔で、たまに振り返りながら、自由に走って消えてしまった。
他の子達はまだ、思い思いに日用品を武器にして追いかけようとする。そのうちのひとつ、ケーキナイフを妹が執拗に持とうとするので、預かったあと、暗いカフェの雨戸の外側に隠した。