【全身の血が沸騰するような衝撃を受けた出来事とは】TAGインタビュー
個展「幾星霜(いくせいそう)」をピカレスクで2024年1月17日から開催するTAG(たぐ)さんに、ご自身や個展についてインタビューしました。
TAGさんが本展タイトル「幾星霜」に込めた想いや、"全身の血が沸騰するような衝撃を受けた出来事"など、興味深いお話をたくさんお聞きしました!ぜひご高覧ください。
自己紹介をお願いします。
造形作家のTAG(たぐ)と申します。
主に、石粉粘土を素材に立体作品を制作してます。
作品は期間限定の展示会で主に発表しています。
常設では、東京で2箇所、愛知で1箇所、作品を展示しています。
また、展示ではないですがオンラインで直接 作品の販売もしています。
趣味はTVゲームで遊ぶこと、PCデスクをおしゃれな環境に整えていくことです。美味しいものを食べること、ふわふわの毛布にくるまって寝ること、愛犬の耳のにおいを嗅ぐのが好きです。
現在のTAGさんの作風が生まれたきっかけを教えてください。
自分と向き合い、"自分らしさ" の追求を大切にするのがTAGの作風です。ですが、実は私の最初の作家名はTAGではありませんでした。
2017年に作家活動を開始した時の名前は "魔法道具店『リーゼの庭』" 。この時期に確立した自身のファンタジーな世界感は今も変わらず大好きなのですが、この部分を拡張、一層 自分らしさを加えた作品を生み出したい!そんな気持ちから、TAG名義での活動を2022年にスタートしました。
「マンドレイク」は、minneで魔法道具店『リーゼの庭』として作品を発表していた頃、minneハンドメイドアワード2018という企画に応募するために制作しました。
残念ながら受賞には至りませんでしたが、魔法道具店『リーゼの庭』の代表作として今なお多くのファンから愛していただいている、私にとっても特別な作品です。
「隣人・ノーム」シリーズとして、様々なモチーフや季節を題材に制作している中で誕生した「希少:紫陽花種」。
この「希少:紫陽花種」は「隣人・ノーム」シリーズの中でも最も制作が大変な作品です。
装飾花(ガクの部分)を密集させるために粘土を盛っては削り、ヤスリがけをしては亀裂やキズに粘土をすり込んで…この作業を延々と繰り返すことで完成します。とても時間がかかりますが、手をかけるほど美しく仕上がる大好きな作品です。
魔法道具店『リーゼの庭』ならではのファンタジー色あふれる世界観。そこから生まれたTAGの作品にしかない要素は何でしょうか?
"魔法道具店『リーゼの庭』" は、既存のファンタジー世界を下敷きにしている作品が中心です。TAGの作品は、そんな既存の世界観にとらわれず、私自身の感覚から生まれた物語をオリジナルの形に落とし込んでいるのかもしれません。
また、TAGの世界の根幹は、見えないもの、この世に存在しえないもの、それらのことを考え空想するのが好きな私個人の心の動きに支えられています。
今回の個展出展作品を通じて"魔法道具店『リーゼの庭』"とTAGの違いを直に感じていただけたら嬉しいです。
「TAG」を新しい作家名に採用した理由は何ですか?
TAGのルーツは、高校生の時に友達が私につけたニックネームでした。
私の苗字がきっかけに生まれたあだ名で、性別を問わないという点もとても気に入っていました。最初はひらがな表記でしたが、海外でも認知できるようにアルファベット表記に変更しました。
石粉粘土を用いて制作している理由を教えてください。
石粉粘土の魅力に、切削性(読み:せっさくせい。カッターや彫刻刀での加工のしやすさ)が挙げられます。
粘土が乾燥してからの加工がしやすいこと、私が表現したい柔らかな曲線が出しやすいことが、作品制作時に石粉粘土を採用する大きな理由です。
石粉粘土と聞くと、石膏のようなざらざらした質感を思い浮かべる方も多いかもしれません。ですが、「サーフェイサー」というラッカー性の目地止め塗料を吹き付け、丁寧に表面処理を行えばつるつるとした質感にもなります。その表現の幅の広さが、TAGの作品制作の楽しさに繋がっています。
石粉粘土は、塗装のバリエーションも幅広いです。水性塗料やアクリル塗料はもちろんのこと、下地次第でラッカー塗料や油絵具も塗れるのです。作りたいモチーフに合わせて塗料を変えられる楽しさもまた、石粉粘土で制作する魅力だと言えます。
着彩方法、塗料について
エアブラシを使用する時は、まず6段階(120 - 1,000)のヤスリを用いて表面を整えます。つるっとした製品に近い仕上がりにすることで生まれる、触りごごちの楽しさを大切にしています。
難易度が高いと言われているエアブラシでのグラデーション。
以前、ガンプラビルダーズワールドカップ(通称GBWC)のファイナリストから「上級者の腕がある」と言われ、感激したことがあります。この方は私の造形に対する視野を広げてくれた恩人でもあるので、褒めてもらえたのはとても嬉しいことでした。
実は私は、活動初期の約5年間は模型塗装をするのに一般的な0.3mmのエアブラシを使用していました。なおかつ、エア圧が調整できない(グラデーションの密度コントロールができない)プチコンと呼ばれるコンプレッサーだけで塗装をおこなっていました。プロ仕様の本格的なコンプレッサーは値段が高額なため、十分に道具が揃えられない制作環境だったのです。
そんな状態の中、手元にある道具だけで自分の納得のいく表現をするんだと試行錯誤し、グラデーションが綺麗に出せる方法を考え続け、制作を継続しました。そんな時期に先のファイナリストから「上級者の腕がある」とお褒めいただいたのです。嬉しすぎるコメント、天にも昇る心地でした。
試行錯誤はまだまだ続きます。その後のリサーチを通じて、0.18mmのエアブラシを使うと一層 繊細なグラデーション表現が出来るとわかり、すぐに購入。
0.18mmのエアブラシは、「七五三ごっこ展」のコドゾ、そして今回の個展「幾星霜」出品作品でも使用しています。
これから更に、美しいグラデーションを実現するため励みます。
ちなみに、エアブラシでなく実際の絵筆を用いるのは、少しずつ塗りを重ね優しい雰囲気を出したい時。凸凹など、作品全体の雰囲気に手触り感を持たせたい時は、油彩塗料などを使用します。
また、私は作品に触れて欲しいという気持ちが強いので、長期的な劣化を防ぐため耐水性の高い塗料を意識して選んでいます。
粘土造形や着彩を、子どもでも出来る手軽な表現と感じる方は多いかもしれません。確かに誰にでも扱いやすい素材だと思いますが、表現したいコンセプトによってどの粘土にするかの選択や仕上げ技法、着彩方法を様々な選択肢から選び、造形に思想を加えることで、作品にしか持ち得ない力が生まれるのではと、私は考えています。
作品の色について
昨今の暗いニュースを通じて、作品を見てくださった方々の気持ちが明るく、和らぐよう明るい色を選んでいます。様々な色は、多種多様な人間の性格を表現しています。
普段、何からインスピレーションを受けていますか?
人との会話から作品が生まれたり、歴史上の人物や著名人の言葉から着
想を得ることもあります。
また、動物や海の生物、植物、民俗学が好きなので、本、ファンタジーやホラー映画、博物館の展示物などからインスピレーションを受けることも多いです。
特にファンタジーやホラー映画は現実とリアルをぼかすような世界観がとても作り込まれていて、圧倒されます。
お気に入りのファンタジー映画は「ハリーポッター」、ホラー映画は「ザ・ライト-エクソシストの真実-」などの西洋文化が盛り込まれたもの。特にホラー映画は、気分が落ち込んだ時に観ると元気が出ます(笑)。
▽ファンタジー映画「ハリーポッター」を象徴するワンシーン
▽ホラー映画「ザ・ライト-エクソシストの真実-」公式コマーシャル。
怖い話、ホラー映画が苦手な方はクリックをお控えください!
インスピレーションを受けた本(資料集や図鑑)の中でも特にお気に入りなのは、エルンスト・ヘッケルの「生物の驚異的な形」です!デザインや色合い、断面図などに強い興味をそそられます。
印象に残った展覧会は、東京国立博物館で開催された「古代メキシコ展」。
儀式や呪術、生死にまつわる要素がとても面白かったです。
影響を受けた作品、もっと教えてください!
映画「ハリー・ポッター」シリーズ以外にも、漫画「魔法使いの嫁」の世界観や雰囲気が好きで、大きな影響を受けています。
また、TAG作品は模型作品からも影響を受けています。
私自身、作品制作時に用いている技術はプラモデルや模型の知識がほとんどです。過去、私が模型制作を始めるきっかけとなった方から素材や道具の使い方を教えてもらい、現在に至ります。
最も衝撃を受けた模型は、ジオラマ作家の情景師アラーキーさんの展示会に出展されていた、緻密でリアルなジオラマ模型です。
画像だと実在する道や建物のようにしか見えないのに、指が映り込んだ瞬間、模型だと分かるジオラマの実物を目の前で見て、全身の血が沸騰するような衝撃を受けました。
今回の個展タイトル「幾星霜(いくせいそう)」が生まれた経緯は?
一番初めに「幾星霜」という言葉と出会ったのはVtuber・星街すいせいさんの楽曲「ソワレ」の歌詞を通じてでした。
幾星霜とは
今回のTAG個展「幾星霜(いくせいそう)」の展示作品の半分は、私自身が「生まれ変わったらなりたいもの」を考えて制作しました。
展示作品のもう半分は、家族や友人に「生まれ変わったらなりたいもの」を聞き、そこから出てきた言葉を基に制作しています。私が感じたみんなの性格やイメージ、表情や好きな色、起きている時間、来世ではどんなふうに生きているのだろう?と考える時間はとても楽しかったです。
普段はあまり話さない内容かもしれませんが、思想を聞いたことによって作品を通して、その人に寄り添うことができたかなと思いました。
モチーフが決まったら資料を集めて、質感や配色をどうするかデザイン帳に書き出すところからスタート。最終的に、石粉粘土などを使って表現した造形作品が20点完成しました。今回の個展会場で、それらを初お披露目します。
小さな部屋の中で廻る、生き物の命を感じてみてください。
これからどんな作品を作りたいですか?
自分、そして人の気持ちに寄り添う作品作りをしていきたいと考えています。
学校や仕事に行って帰ってくる、家事を頑張る……。年々生活が大変になっていく世の中で、疲れてしまい余裕がなくなることも増えています。
楽しい時も辛い時も、自分のお家やお部屋の中が好きなものであふれ、癒しの空間が広がるように、ほんの少しでもお手伝いができたらいいなと私は思っています。
もたれかかりたくなった時に、私の作品が心の支えになれるよう、これからも作品作りを頑張りたいです。
TAGさん、たくさんの素敵なお話ありがとうございました!
皆様は心に残ったエピソードはありましたか?
スタッフは、今回の個展の作品の半分は、家族や友人に「生まれ変わったらなりたいもの」を聞いて制作したものというお話に強い印象を持ちました。
それぞれの作品を見ながら、どの作品がTAGさんとどういった関係性の方が、何に生まれ変わりたいと考え、そこにTAGさんがどのような"自分らしさ"を乗せ作品化したのか…
実物を見ながらじっくり考えるのがとても楽しみになりました。ぜひ、皆様も、それぞれの作品の背景に込められたエピソードを会場でお楽しみください!
TAG 個展「幾星霜」
〈会期〉
2024年11月17日(水)– 1月28日(日)
〈OPEN日時〉
毎週水 – 金、土日祝:11時 – 18時
月火:定休
〈夜の特別OPEN日時〉
1月18日 (木)、25日 (木)
11時 – 21時
〈個展詳細ページ〉
https://picaresquejpn.com/tag_exhibition_2024/
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TAG プロフィール
造形作家 TAG(たぐ)
石粉粘土や樹脂粘土を使用した、造形作品の製作を行っています。
現実と空想の境界が曖昧になる作風を目指して活動中です。
私の作品にはひとつひとつ物語がございます。
「どうしてこの形なのか、色なのか、どんな場所で生きているのか」
物語を読んで再度作品を見ると、見えなかったものが見えてくるかもしれません。
◇展示歴、掲載歴
1993年
埼玉県生まれ
2017年
魔法道具店「リーゼの庭~Riese’s Garden~」を始動
ハンドメイド作家として、魔法がテーマの作品の製作・販売を行う
2022年
個人での作家活動を開始
「リーゼの庭」と並行して、造形作家TAGとして活動中
◇展示歴
2018年
minneのハンドメイドマーケット2018/GMOペパボ株式会社(東京ビッグサイト)
2019年
minneのハンドメイドマーケット2019/GMOペパボ株式会社(さいたまスーパーアリーナ)
デザインフェスタvol.50/デザインフェスタオフィス(東京ビッグサイト)
2020年
ファンタスティックモンスターⅢ/高円寺Cream
星降る森の魔法市 天夜ノ森の追憶 籠夜/コストマリー事務局(川崎市産業振興会館)
2021年
魔女の植物園―マンドレイク品評会―/TOBIRA企画(Nano Gallery)
驚異の部屋ZWEI/箱の中のユーフォリア
食べるの神様 百人展/Picaresque Art Gallery
梅雨入りの紫陽花/箱の中のユーフォリア
2022年
シチフクジン展/Picaresque Art Gallery
ヒストリ屋-中世ヨーロッパ大騎士博/書泉グランデ
デザインフェスタvol.55/デザインフェスタオフィス(東京ビッグサイト)
TAG初個展『間隙』/Picaresque Art Gallery
2023年
星降る森の魔法市 星柳ノ章/川崎市産業振興会館(川崎市産業振興会館)
TAG作品展/Picaresque Art Gallery
ピカレスク・ニュー展/Picaresque Art Gallery
七五三ごっこ展/Picaresque Art Gallery
2024年
TAG第二回個展『幾星霜』/Picaresque Art Gallery
◇TAG 公式SNS
X(旧Twitter) https://twitter.com/tagu_san
Instagram https://www.instagram.com/riesesgarden
link tree https://linktr.ee/riesesgarden
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