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【詩情を贈る、陶の花と猫】今田 香 インタビュー


今田 香 個展「あまたの花の青のひとひら」を、2025年1月15日(水) – 1月26日(日)の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。

今回は、今田 香さんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。


自己紹介をお願いします

はじめまして。
陶芸を始めたきっかけは、友人に頂いたシンプルな焼き物の器でした。
自分で作って長く使えるのは好いなと思い、陶芸教室に通い陶芸を学び始めました。何故かその頃から陶芸作家になると決めていました。
陶芸教室~学校~伊賀焼の窯元でのアシスタントの後、伊賀で工房を持つことが出来ました。最初は器を作っていたのですが、猫と暮らし始めて、猫の姿に季節の草花を染めた陶猫を作り始めました。器を主に作っていたのですが、年に一回は猫をモチーフにした展示をすることに決めて続けるうち、陶猫制作がライフワークになりました。

現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。

猫と暮らし始めたことでした。アトリエを持った年に、キジトラの子猫をもらい、その次の年にはサビ猫と、2匹と1人で時間を過ごすようになりました。ウツワを作る傍らで気ままに過ごす猫。人と暮らしながら、時折見せる野生的な面や姿の美しさに、自然の植物を重ねてみたくなり、猫の姿に季節の草花を染めるようになりました。

現在使用している素材で作品を作る理由を教えてください。

粘土を成形するのも面白いし、装飾方法も様々あって、何より焼くことで変化する事に魅力を感じます。毎回窯を開けるたびに、どんな仕上がりなのか期待(同時に不安もありますが)してしまうところでしょうか。絵を描くのはもともと好きだったのですが、瀬戸で染付を習ったのがきっかけで、水墨画の様に濃淡で表現する、呉須や鉄などを使っています。

普段、何からインスピレーションを受けていますか?

身近で目にする植物や石ころや猫からインスピレーションを得ています。見たもの聞いたもの触れたものから言葉が紡ぎだされたら、イメージがふわっと湧いてスッと制作に入れる気がします。
他には漫画や小説からインスピレーションを得ていました。小学校の時からバス通学で、学校の図書館で借りた本が欠かせませんでした。

小説は、純文学も好きですが、小学生の頃からファンタジーやSFは特に好んで読んでいました。
レイ・ブラッドベリの「火星年代記」を始め、猫が出てくるロバート・A・ハインラインの「夏への扉」。

20代の頃は友人から教えてもらった、フィリップ・K・ディックは映画の「ブレードランナー」から興味をもって見つけると片っ端から読んでいました。
恒川光太郎さんの「夜市」とか「雷の季節の終わりに」などのホラー要素のある作品も好きです。
最近だと、ほしおさなえさんの「言葉の園のお菓子番」の、連句の言葉から浮かぶ情景にうっとりしました。
紡がれた言葉は製作意欲を掻き立ててくれていて、読んできた本の世界は私の栄養になっています。
こうして書き出したら、もう一度読み直したくなりました。

母が少女漫画が好きで毎月マーガレット花とゆめは、私が高校の頃まで常に家にあって毎月楽しみにしていました。
猫に花を染めるというのは、登場人物の心象を表す花と共通のイメージかもしれません。
萩尾望都さんや、吉野朔実さんの作品が特に好きでした。
少女漫画ではないのですが猫の出てくる漫画、ますむらひろしさんの「アタゴオル物語」を集めていました。
宮沢賢治銀河鉄道の夜」をますむらひろしさんが漫画化したものが映画になっていましたね。

最近だと漆原友紀さんの「蟲師」、最初にアニメーションで知って、実家に漫画がそろっていたのでそちらも読みました。
「蟲師」の蟲という生命の根源みたいな存在と人間が、同時に存在して関係しあって生きている世界観が大好きです。
猫に心情を重ねるように花を染めるのも、そういった世界観に憧れがあるからかも。

影響を受けたアーティストや、作品はありますか?

陶芸家だとパッと浮かぶのが小川待子さん、小島郁子さんの作品。
質感やプリミティブなもの、詩情の感じられるものに惹かれます。
染付を始めてからは水墨画や花鳥画に興味を持ち、展覧会を観に行くようになりました。自然も動物も植物も、一緒にせめぎあっているような神社仏閣の彫刻にも魅力を感じます。
最近は観に行けていないのですが、現代美術も好きで気になる展示があると出かけていました。

これからどんな作品をつくりたいですか?

猫以外の動物も作ってみたいのですが、今はもう一歩内面に踏み込んだ猫。
可愛いだけではない情景や詩情を感じられる表現をしていきたい。それがこの先を見てみたいと、自分が思えるものであればもっと先に進んでいける。一つ一つ育てるように。
誰かと共に暮らしてきたと思えるような、老猫もいつか作れるようになりたい。

ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?

君に会えたら

一輪のハナミズキを抱えた猫。
庭先や街路樹で植えられたりしていて、身近な存在のハナミズキ。4月の終わりごろになると、たくさんの花をまるで差し出すように枝先に灯してくれる。また君に出会えたらこの一輪を贈ろう。その時のワクワクドキドキする気持ちは、花の季節と相まって温かい。
花と一体になった猫は、最初は花びらに包まれて眠る猫のイメージでした。ハナミズキのこちらに贈られるような枝先の花に、花を贈る猫を形にしてみました。

幸せな夢

アジサイの花に包まれ眠る猫
最初は大きな花びらに包まれた眠り猫を、思い浮かべていました。アジサイの花のモコモコ丸い形と、眠り猫の穏やかなイメージとが結びつきました。雨上がりの光を帯びたあじさいに包まれて、どんな夢を見ているのでしょうか。色の変化で移り気のイメージもあるあじさいは、気まぐれに過ごす猫と相性がいいのかもしれません。幸せそうに眠る猫の姿は、見ているこちらも穏やかな気持ちにさせてくれる。

あのね

沢山の思い出の中の花チューリップ
チューリップは童謡で歌われていたり、学校の花壇に咲いていたりして、幼いころから親しい花の一つ。思い出の中にもたくさん咲いているのかも。「あのね」とこちらを見つめる猫の表情が浮かんで、幼い人の子の好奇心いっぱいの様子を重ねる。チューリップの中から話しかけてくる猫、どんな質問が聞けるだろうかと想像してみる。

お客様、ご来場予定の皆様に向けてメッセージをお願いいたします!

この度始めて関東で、個展を開催して頂けることになりました。

今回のタイトル「あまたの花」や「ひとひら」は花を咲かせる大きな樹から浮かびました。
見上げると空一面に咲いていて、花の時期が終わると一斉に花びらが散り始めるのだけど、それでも季節が来ると毎年毎年咲いてくれて、春を教えてくれる存在。
さくらは花を眺めるのも、散った後地面に落ちている花びらも、美しくて。
今暮らしているのは山の多いところで、芽吹きの時と同時に所々に山桜も咲き始めます。
萌黄色になった山に淡いピンクの花が点在していて、山桜は実をつけるので、鳥の存在を意識したり。
ソメイヨシノの並木を母と買い物帰りにドライブした時に、風が吹いて雪の様に花びらの中を通り抜けたことがあって二人して思わず声を出してしまったり。
いろんな人の思い出の中に、いろいろな思い出がある花の一つではないでしょうか。

沢山の花はどれも同じように見えても、その花の記憶や思い出の中で一つの特別な存在であると良いなと思いつけたタイトルです。その思いを猫に重ねました。
自分の作る猫は、私の記憶や思い出の中から生まれた主観的なものではありますが、皆様にがご覧になって、新たに何か感じて頂けるものであるとうれしいです。
これまでの陶猫の他、花に包まれたような花から連想した陶猫も新作で制作しました。

「あまたの花の青のひとひら」を沢山の方にご覧頂けると幸いです。

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今田 香さん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。
皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?

今田 香さんの展示作品実物を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。皆さまのお越しを、お待ちしております。

今田 香 個展「あまたの花の青のひとひら」

〈会期〉2025年1月15日(水) – 1月26日(日)
〈詳細〉https://picaresquejpn.com/kaoriimada_exhibition_2025/
〈今田 香 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://twitter.com/kaoriimada12
Instagram https://www.instagram.com/kaoriimada1969/

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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561

■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/


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