【強さと儚さを混在させた地と物語を創り続けたい】肌芳 インタビュー
肌芳 作品展「Komet」を、2024年10月9日(水) – 10月20日(日)の期間にピカレスクギャラリーで開催いたします。
今回は、肌芳さんにご自身のことや制作エピソード、今回展示される作品についてインタビューしました。ぜひお楽しみください。
自己紹介をお願いします
「夢遊世界を描き、物語を紡ぐ」夢の世界をメインテーマに原画とストーリー制作をしています。 2022年の冬よりアーティスト活動を始めました。
作家名の「肌芳(きほう)」は本名ではなく、過去に女の子の肌が強調されたイラストを描いていた時につけた活動名です。"肌が芳る"。という絵から想像し得る香りや柔らかさを自身の名として表したいと考え、この漢字を選びました。
結果的にこの「肌芳」という活動名は、今夢遊世界を描く自分の絵柄にも合うような気がしていて、その場合は音だけで聞くと"気泡"を連想させるのかなと思います。
現在の作品の世界観が生まれたきっかけを教えてください。
夢遊世界のきっかけとなった作品は「遥か遠いけれど」という原画ですが、その絵を描き上げる前、そしてその後に何を思い自分の軸としたのかは今でもよく分からないというのが正直なところです。
「青から暖かな色のグラデーションに、大きな雲が幾つもの層を成して浮いている。その世界の手前には、花籠を届けに来たひとりと二匹。生き物たちの影は赤く、それはシルエットからは感じられない生き物の温かさを表す」
こうして短い文章にすると、わたしはなんとなくこの夢のような世界を描くのが心地よかったのだろうなと思います。自分でも絵だけでは説明がつかない。そんな想像上の景色の美しさを言葉を交えて表現したいという願いの元、今も制作を続けています。
現在使用している素材で作品を作る理由を教えてください。
アクリルガッシュ特有のマット感がとても好きで、夢遊世界のさらさらとした雰囲気や、その他ミクストメディアの表現を活かすのがこの絵の具だと思っています。
また画面に付けている様々なドームパーツは、その作業を施すことによって完成後の凹凸を楽しめること、そして一番はパーツを付けている時間自体がとても楽しい、という「私のたのしみ」を叶える一部として扱っています。
まるで小さな時計に宝石を埋め込んでいるかのように、ひとつのモノに装飾を加える。絵の具の世界とコントラストがつくというのもお気に入りの理由です。
普段、何からインスピレーションを受けていますか?
実際に見た夢、見たい夢。実はその比率は実際に見た夢の方が多く、けれど夢一つに対して一つの夢遊世界ではなく、夢の景色を幾つもの原画に落としたのが私の作品です。
もちろん私の大好きなゲームや映画、日々のお供として見ている配信もインスピレーションの一部になっていると思いますが、やはり今は夢の中が一番幻想的で、美しい世界に出会えることが多いのです。
ただ全ての情報の結晶が夢だとすると、それをテーマに描く私の作品は現実の全てをテーマとモチーフにしていると言えるのかもしれません。煌びやかな夢の景色が何かの副産物ではなく、私の頭の中だけで生まれ完結したものだったらいいのにな、と欲深く願うこともあります。
影響を受けたアーティストや、作品はありますか?
アニメが大好きで、ジブリ作品はその中でも一番と言えるほどに私の心を動かす世界観です。特に『もののけ姫』の森の、あの命の共存と争いの過程を見るたびに心がギュッと苦しくなりますが、美し"かった”という過去には戻れない、魔法などない現実性がとてもすきです。
また五十嵐大介さんの『海獣の子供』も、答えのない物語が美しくて恐ろしい海の表現に混じり合うようで惹かれました。彼らは一体なんだったのか、そして作中に語られる「1番大切な約束は、言葉では交わさない」というセリフがなぜかわたしを魅了したのだと思います。
これらの感想は私が絵を描く理由の一つでもあり、自ら生みだした美しい世界を、醜い人間性を封じ美しいまま残したい。そしてその夢の世界は逃避の場所を得るためのものではない。強さと儚さを混在させた地と物語を創り続けたいと願いながら、これからも自分の手で描いていきたいと思います。
これからどんな作品をつくりたいですか?
今は表現の幅を増やしたいと思っています。いつか広い空間を夢遊世界で彩り、空間デザインもその一つとして魅せられるように、始めの段階として支持体の形を自分で作ることに挑戦していきます。
夢遊世界は四角や正円のキャンバスに描くだけでいいのだっけ?と考えたらそれは違うような気がしています。「できることには手を伸ばして進んでいこう」という考えで動いていきたいです。
頭の中には実現させたい形がたくさんあるので、そのひとつとしてお楽しみいただけるように頑張ります!
ご出展いただく作品のコンセプトを教えていただけますか?
今宵の地に
メインビジュアルにも使用した作品です。瑠璃色に連なる絵の具を選び、翠の表現を控えめにした最初の[Komet]になりました。
story:「青くて綺麗」たったそれだけの言葉で足りる世界に降り立ち、わたしは空へ心を傾けました。静かな空気が漂う中、「ゴウ」と遠くで音がします。なんだろうかと目を向ける間も無く、辺りを強い光が覆います。こんなに眩しい夢は初めてでした。
影に手を添えて
原画にレースがかかったような表現は元々特別好きなのですが、この作品は青とのコントラストが特に出ていてお気に入りのひとつとなりました。
story:影は光から成り、その一生をかけて夜空に飾られるのだといいます。星に触れれば崩れてしまうし、光を遮れば消えてしまう。では影に手を添えたり、そのもの自体におめかしをと考えたら?「絹のレースでは重いかな、側にもっと小さな星を置こうか」今日の夜からは、いろいろなものが落ちてきます。
迷夢欠片の眠り樹に
普段描く作品の中でも、少し風合いの違う夢遊世界です。「迷夢」というだけあって迷い込んだ場所なので、この景色を美しくて見惚れたからには名をつけて記憶に残そうとしたこの子の気持ちもわかります。
story :迷夢に入ったら砂を落として抜ける必要があると、本当は分かっていました。けれど息をすることも忘れるくらいその世界に見惚れてしまったのですから、目的や導などはとうにわたしから溶け落ちています。「この眠り樹に降り注ぐ彗星のことは“ほうき星”と記そう」竜へ伝える景色がまたひとつ増えた日でした。
お客様、ご来場予定の皆様に向けてメッセージをお願いいたします!
何を感じ、何を見に来てくださるのであろうと、いつも楽しみにしています。今回のテーマとモチーフは彗星[Komet]ですが、静の世界に現れた"動"の星が皆様に何を伝えることができたのか、是非会場のメッセージカードに書き残していただけると嬉しいです。
ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。 今夜も素敵な夢が訪れますように。
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肌芳さん、たくさんの貴重なお話をありがとうございました。
皆さまはどのエピソードが心に残りましたか?
ピカレスクスタッフは「今宵の地に」のストーリーに引き込まれました。「青くて綺麗」の向こうにある静けさ、強さ、眩しさを想像したら、まるで自分が作品の世界に彷徨いこんだような気持ちになりませんか?
肌芳さんの展示作品実物を一堂に鑑賞できる貴重な機会です。皆さまのお越しを、お待ちしております。
肌芳 作品展「Komet」
〈会期〉2024年10月9日(水) – 10月20日(日)
〈詳細〉https://picaresquejpn.com/kihou_exhibition_2024/
〈肌芳 公式SNS〉
X(旧Twitter) https://x.com/kihou_official
Instagram https://www.instagram.com/_____me.o
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【基本営業日時】
*営業 水 - 日・祝 11:00 - 18:00
*定休 毎週月火
*会場 Picaresque Gallery
*住所 東京都渋谷区代々木4-54-7
*電話 070-5273-9561
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■開催中&過去に開催した展示一覧
https://picaresquejpn.com/category/information/
■開催&開催予定の展示一覧
https://picaresquejpn.com/exhibition-calendar/
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