見出し画像

私はアンドロイド

 あれは、学生時代の健康診断。
 ドクターからの問診の際に胸に聴診器を当てられたときだった。「何か機械入れてますか?」そうドクターに聞かれたことがある。
 機械というとペースメーカーとかそういったものだろう。今まで生きてきてそういった処置を行ったことがない。「入れてないです」と答えると、「そうですか。ピーと音が聞こえたので」とドクターは言っていた。

 身体からの機械音が聞こえる。このエピソードは私にとって面白いと思った。だって、漫画みたい。私の身体はいつから機械が入っているんだろう。サイボーグ009で、双子の片割れの病気を治すためにもう片割れの臓器を移植して、臓器の代わりに機械を入れていたというお話があった気がする。私に双子の兄弟は居ないが、3つ下の妹は居る。妹に私の臓器が移植されたのかもしれない。学生の頃からなかなかのアニメ脳だったので、そう一人で空想してわくわくしていた。

 そして時は流れて、新卒の社会人一年目。上司に「Picaちゃんはアンドロイドみたいだね」と言われた。

 その理由は、表情が乏しいこと、喋り方に抑揚がないこと、言葉に気持ちがこもっていない(ように聞こえる)ことらしい。初対面の人に「AIみたい」と言われたこともある。

 別にこのあだ名を気に入りはしなかったけど、入職一年目だったし、抵抗して余計いじられるのも面倒だったので、私はその職場で働いていた一年間、アンドロイドとして過ごした。

 それから私は転職をした。
 転職先ではアンドロイドと呼ばれることはなかった。(まぁ、呼ばれる方が稀だ)

 ただ、職場内では私の一番身近にいる唯一の部署内の上司だけは気づいていた。
「なに、その、台詞みたいな喋り方。機械みたい」。入職から半年くらいで、とうとうツッコまれてしまった。別にがっかりはしなかった。むしろ上司のツッコミに笑ってしまったし、あー、バレちゃったかってなんだか可笑しかった。

 そうなんですよ、わたしアンドロイドなんです。

 ピー、と聞こえるはずのない機械音が聞こえた気がした。

いいなと思ったら応援しよう!