イソップ寓話集②【三本の棒】

 ある父親が、三人の息子に一本ずつ棒を渡し、折るように言いました。息子達は、いとも簡単に棒を折りました。それを見た父親は、今度は三本まとめて折るようにと命じました。すると、三本まとまった棒はとても硬くて、誰も折ることが出来ません。父親は得意げに言いました。
「これで分かるだろ? 三人が一緒になれば、一人よりも強いのだ」
 しかし、長男は明らかに不満そうです。
「お父さん、三人が一人より強いのは当たり前です」
 長男は弟達を集め、話をしました。そして、地面に束ねた棒を置き、その真ん中を一人が強く踏みました。あとの二人がそれぞれ棒の両端を持ち一気に引っ張り上げると、簡単に三本の棒は折れました。
「お父さん、一本の棒は一人で折れます。棒が三本なら、三人で折ればいいのでは?」
 父親はしどろもどろになりながらも、長男に言いました。
「そ、その通りだ。だから、そのぉ……そうそう、三人で知恵を絞れば、強敵にも立ち向かえる……俺が言いたかったのはそういうことだ。東洋では、これを『三人寄れば文殊の知恵』と言う」


・画像は無料素材サイト『 #illustAC』より


追記)余談になりますが、イソップ寓話のパロディなのに、何故戦国武将のイラストなのか……? お気付きの方やご存知の方もいらっしゃることとは思いますが、毛利元就の『三本の矢』の逸話も『三本の棒』(別名「喧嘩をする農夫の兄弟」)とほぼ同じ話です。これは、毛利元就が臨終の際に三子を呼び寄せ、結束を言い聞かせた話として有名です。しかし、実は毛利元就は戦国武将としては長寿でして、長男の毛利隆元の方が先に亡くなっているのです。なので、(他にも沢山の理由がありますが)この逸話が史実ではないことは明らかとなっております。