【双生児】折原一
※インスタに投稿した記事より、一部加筆修正してお届けいたします。
本格「ダーク・サスペンス」と謳われている本書。
視点と時系列を目紛しく転換しながら、確かに何とも言えないダークな雰囲気に覆われた世界観での出来事は、何かとんでもないことが起きそうで、いや既に起きていそうで、頭を混乱させながらもハラハラしながら読み進めました。
不穏でミステリアスで、時に異常さも孕む前半から、少しずつ時系列が解きほぐされていく中盤に掛けて、目が離せなくなるぐらい面白いです。
しかし……数学の文章題などもそうなのですが、複雑にすればするほどヒントも増やさざるを得なくなり、一見混沌としているかのような条件も、一つ増える毎に必然的な方向性が縛り付けられ、逆に出口を見付けやすくなるのです。
この物語もそんな感じがしました。
どうやってこの物語を収束させるのだろう? って考えた時、やや飛び道具的な……いや、はっきり言ってタイトルからしても「アンフェア」スレスレのあの解決策しかないだろうな、って予想が出来てしまい、そうすると作中ずっと「これは誰の視点なのだろう?」と思っていた謎も「そういうことか」と消化出来……結局、その通りに終わってしまったという、盛り過ぎたが故に失敗した叙述トリックという印象です。
以下、ややネタバレになりますので、ご注意ください。
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実際のところ、不妊治療を行なっていない若い女性が、この条件が成立する子を出産する確率はとても低く、現実的ではないでしょう。余談ですが、何故か、高齢になるほど確率は高くなるそうですが(と言ってもものすごく低いです)、本書には当てはまりません。
しかも、物語的に「一卵性」でないといけないのですが、ある統計によりますと、作中の条件に当てはまる子が、「一卵性」尚且つ「自然分娩」で出産される確率は「二億分の一」程度とも言われています。(諸説あるそうですが)
いずれにせよ、数値の信憑性はともあれ、個人的には安っぽいというのか、短絡的というのか、安易に使って欲しくないトリックだと思います。
前半が引き込まれるぐらい面白かっただけに、何とも残念な結末です。ついでに言うと、最後のシーンも、個人的にはあまり好きではありません。
と、これだけ酷評しておきながら、何の説得力もないでしょうけど、面白かったのです。ホントです。
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