イソップ寓話⑦【田舎のネズミと都会のネズミ】
田舎のネズミが、都会のネズミを食事に招待しました。田舎のネズミの棲家は、大きな野菜畑の脇の側溝で、いつでも新鮮な農作物を盗んで丸齧りする食生活を送っていました。都会のネズミは言いました。
「ここは確かに長閑で静かで、良い環境だと思うよ。でも、よくこんな質素で退屈な生活をしてられるね。一度、僕の町に遊びにおいでよ。採れたての野菜も良いけど、都会の美味しいご馳走も格別だよ」
翌日、田舎のネズミは、喜んで都会に遊びに出掛けました。都会のネズミは、レストランの厨房に住み着いており、チーズやパンやソーセージなど、見たことのないご馳走でもてなしてくれました。それは、田舎のネズミにとっては、今まで食べたことのない魅惑的な味でした。
しかし、折角の機会なのに、落ち着いて食べられないのが難点です。窮屈な空間で、常に喧騒から逃れられません。
そして、何よりも問題だったのは、途中で何度も人間の気配がすることです。その度に、慌てて隠れなければいけなかったので、とても食事に集中なんて出来ず辟易しました。もし、人間に見つかってしまったら、殺されるそうです。
田舎のネズミは言いました。
「確かに魅力的なご馳走だけど、僕はこんなにビクビクしながら過ごす生活は嫌だよ。やっぱり僕は田舎暮らしの方がいい」そう言って、ネズミは自分の家のある畑に帰りました。
次の日、都会のネズミは、店の人が仕掛けていた罠に掛かってしまい駆除されたそうです。その噂を聞いた田舎のネズミは、「ほら言わんこっちゃない。都会暮らしなんてネズミには危険過ぎるんだ。田舎暮らしを選んで本当に良かった」と呟きました。
丁度その時、鷹が自分を目掛けて急降下していることに、どうやら気付いていないようです。
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