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„Next Generation Mozart Soloists Vol.10“ 発売にあたって

2024年10月18日、私たちが指揮者のHoward Griffiths氏とウィーン放送交響楽団と録音した、モーツァルト作曲〈2台のピアノのための協奏曲〉が収録されたCDが、日本ではナクソス・ジャパンより発売されました!

"Next Generation Mozart Soloists Vol.10"というタイトルで、海外ではすでにAlpha Classicsより発売開始されています。


この録音をしたのは、今からちょうど2年前…
2022年の9月です。
その間いろんな舞台を経験させていただき、ドイツでの留学生活も終わって日本へ帰り、生活も演奏も人間性も、色々なことが大きく変化した期間でもあったように思います。

レコーディングのVlogはこちら↓


ミュンヘン国際音楽コンクールの直後、このレコーディングのお話をいただきました。
オーケストラとの録音、ましてや海外で…。
期待の若手音楽家がモーツァルトの協奏曲を録音していくこのシリーズ、「2台のピアノのための協奏曲」の代表として弾くのが私たちで良いのだろうか?という不安と、
コンチェルトを録音できるなんて、またとない機会となるかもしれない!というワクワクが私たちの心に共存していましたが、レコーディングの日を心から楽しみにしていました。

ピアノデュオコンクールのファイナルに必ずと言ってもいいほど選ばれる、モーツァルトのコンチェルト。
私たちにとって、さまざまな場所での思い出がありすぎる作品で、個人的な思い入れがこんなに強いのもどうなのかな、と思う程ですが…(笑)

そもそもモーツァルトのEs-durが大好きすぎる私たち。この作品には幸福感や希望、それとは裏腹の悲しみや皮肉など様々な表情が混在していて、さらに2台のピアノとオーケストラのための作品というスケールの大きさもあり、私たちはひとつのオペラのように捉えています。

そして以前、恩師のレッスンの際にいただいた「モーツァルトは、真っ青な空を見て泣くのよ」というお言葉が、モーツァルトを演奏するたびに頭に思い浮かび、この朗らかな音楽がより一層心に染みたりもします。

2台ピアノ間、さらにオーケストラとの間で行われるやり取りが緻密であり、さらに音数が多くないからこそ、この作品を演奏するとピアノデュオとしてのアンサンブル力や音楽性が顕著に現れるなと思ったり(「2台のピアノのためのソナタ」などに比べると、さらにソロ力も…)

調和したい部分、相反する部分、即興的に楽しむ部分… それぞれどのように演奏したいか、演奏するべきか、この作品に取り組むたびに一つ一つの音への解釈を納得いくまで擦り合わせ、意見が合わずに揉めて、決裂し…を繰り返しながら(?)、私たちは毎度全く違う演奏をしているように感じます。
そんな風に多角的に音楽と向き合えることも、ピアノデュオならではの面白さだとは思うのですが。


今回の録音も、今だったら違う表現を…と思う部分も各所にありますが、あの頃の自分たちの状況と、あのレコーディングの空気感があったからこそ生まれた唯一無二の演奏でもある、と信じています。

レコーディングの様子


久しぶりに嗅いだウィーンの香り、そしてウィーン放送交響楽団のスタジオに置かれた2台のベーゼンドルファーのフルコン。
それだけのシチュエーションでも、「あぁ、ここで大好きな曲を録音できるんだ…」という気持ちで胸がいっぱいになりました。

レコーディング前に、まずは二人きりでピアノの感触を確かめ、しばらく時間をかけてピアノと仲良くなって、、 それから指揮者のグリフィス氏とのリハーサルがあり、その過程だけでも私たちの演奏がみるみる変わっていきました。
現地の空気を感じる中で自分の演奏や音が変わっていく瞬間って、いつでも幸せで気持ちが良いものです。

そこからの3日間に及んだレコーディングは本当に充実していて、最後の最後は二人とも思い出したくないほどヘトヘトになりました(笑)
数日間のレコーディングは私たちにとって初めてで、体力や集中力の使い方を初めて学びました。
終わったあとは二人揃ってしぼんだ風船のようにベッドに横たわりました…


…そんなことも含めて、全てが私たちにとってスペシャルな経験だった今回のCD録音、このような形で日本でも販売していただき、幅広く聴いていただく機会を頂けて、心から幸せに思っています。

CDの販売・ストリーミング情報はこちらから↑
(ナクソス・ジャパンさんのリンクです)

この素晴らしい作品を、多くの方と共有できたらと願っております。
こちらのCD、10月20日にサントリーホールにて開催される「パシフィックフィルハーモニア定期演奏会」にて販売され、その際サイン会も行われます!

素晴らしい企画に参加させていただけたこと、この機会をくださった全ての皆さま、そして日本での販売に携わってくださっている全ての皆さまに心より感謝申し上げます。

坂本彩🐾

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