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vol.29生徒が集まる教室には【伝説のピアノ指導者の教え】

「伝説のピアノ指導者」と呼ばれた人物が、弟子を呼び出し「あること」を依頼する。それは、表舞台では語ってこなかった「ピアノ指導で大切なこと」を世の中の指導者に伝えること。テーブルに置かれたボイスレコーダーに向かって「伝説のピアノ指導者」は語り続ける。それが自分の最後の仕事とでも言うように。青白く燃える炎のように、静かに、熱量を持って…

初めての方は【伝説のピアノ指導者の教え】Introductionからお読みください!←




今は、生徒を集める方法など、いろいろとあるようだね。


もちろん、生徒がいなければ教室は成り立たない。


そして我々は、ピアノを教えて生きる人間だ。



だがね、「生徒を集める」という発想はやめたほうがいい。


そもそも、生徒はそういう存在ではないからね。



ではどう考えるか?



大切なのは、自然と「生徒が集まる」ことだ。


生徒が生徒を呼び、何も言わずとも、保護者が広めてくれる。


そういう教室へと導き出せるかどうかだ。



問題は、どうすればそういう教室になるのか。


もちろん、指導者が魅力的な人間であることは大前提だね。


その指導者のもとでしか得られないものがあるかどうかもだ。



だがね、最も大切なのは、

いつもの「一つひとつのレッスン」だよ。



毎日のレッスンをこの上なく丁寧に、誠実に、

誠意を持って生徒に届ける。


子どもにピアノの素晴らしさを伝えることはもちろん、


その子を幸せにしたい、生きる上で大切なことを知ってほしい…


その願いと努力の営みの中にこそ、ピアノ指導の本質がある。



それが実現できたとき、

生徒が、次の生徒を連れてくる。




だがね、その奇跡のような出来事は、


決して光が当たることのない、

地味で地道な、誰も見ていない努力の先にしかない。



生徒ひとり一人の幸せのために尽くすこと。

信頼の絆を少しずつ深めていくこと。



それ以上のものはきっとないだろうね。



(この物語はフィクションです)




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藤拓弘(とう たくひろ)ピアノ講師ラボ主宰
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