とりとめのないはなし
きっかけは、間違いなく「いんよう!」だった。
生命科学研究者の「よう」先輩と、病理医ヤンデルさんこと「いん/いっちー」さんのpodcast番組である。
私なんぞが今さら言及するまでもなく、Twitterの感想ツイートを追うのが大変なほど、リスナーの多い素敵なコンテンツだ。
まず驚いたのは、お2人の言語化する能力の高さだった。
メール(お手紙)回を聴いて、さらに驚くことになる・・・リスナーの方々までも、言語化する能力が高かったのだ。
ご自身の考えや語り方、内容がブレずに伝えるというポジションの確かさ、何よりも伝えたいことを言語化することが、総じて皆さん上手かった。
どういう風に生きてきたらこうなれるんだろうと、驚嘆した。
己を振り返ってみたならば、言語化することがとにかく苦手だ。
これを書いている今も、文章にするという行為そのものが怖くて仕方がないし、noteだって登録はしたけれど書くまでに1か月以上かかっている。
まだ下書き機能を利用しているだけだから、素敵な機能があるのだから使ってみてもいいかもしれない。
いつでも退却できるぞ!というルートは確保している・・・そこまでしないと動き出せないモノなのだ。恐怖症といっても良いのかも。
きっかけは何だったんだろうと、ぼんやり振り返ってみてもわからない。
幼い頃からたくさん本を読んでました!
理想とする文章が頭にあるから、自分の書いたものに満足できないんです!とか、そんな高尚な理由ではないと思う。
ここで自分のことなのに、「~と思う」としか表現できないあたりがダメなんだろうなぁ。
「~と思う」の後に、たぶんを全部つけて欲しいと切実に思ってます、今。
言語化をしないという民は、普段はどうしているかというと、好きか嫌いかどちらでもないか、ふんわりとした選択肢だけで生きている。
理由を尋ねられても、botのように「なんとなく」という言葉を繰り返すだけの動作をするモノになる。
自分の意志は確かにそこにはあるんだけど、少しでも掘られると言葉に詰まってしまうのだ。
実際にあったことを説明するだけなら、働きはじめてから多少できるようになってきた…と思いたい。
昔の職場の先輩で、とても尊敬していたというか、憧れていた人がいた。
たいへんぼんやり生きている私から、モヤっとでている思考を掬い取れるもの凄い人だった。
こうして文章にすると過去形になることが、とにかく私はさみしいのだけれど、我慢をして過ごしています。
昔、先輩に「彼氏と別れちゃいました」という、素晴らしくありがちな話をしたことがあった。
ぼんやりと生きている私が語り手だったものだから、先輩は労力も時間もかけてくださったような記憶がある。
どこにでもあるようなきっかけで付き合い、当たり前のように浮気をされて、捨てられて別れることになった。
起こった事柄だけなら、要約もできるし、細部を細かく伝えることはできた。
しかし、仮にも恋愛をしていたはずなのにも関わらず、どこが好きだったとか、なにがどう哀しかったとかが、言えなかった。
要素として声とか、しぐさとか、話してくれたことは浮かぶのだけれど、それは印象とか色とかいうイメージや、出来事の細部でしかなくて。
言葉にすると隙間が気になって、何か違うモノになってしまうから表現できないんだと諦めてたのである。
(4年間付き合ってこうなんだから、そりゃ浮気もされるわな)
こんなフワーっとした話を、空中戦みたいな相槌をいれながら聞いてくれた先輩は、
ラストオーダーのドリンクを飲みながら「あなた、果物だったら何が好き? 私は桃が好きなんだけど」と言い出した。
あまりに話が違って、クエスチョンマークが押し寄せる四面楚歌だった。当然のことながら、私は防衛側である。
思いつくままに「梨ですかね」と答えたが、その時の先輩の返答が刺さったまま残り続けている。
「私もあなたも、果物は好き。同じ果物でも、私は桃であなたは梨。
あなたが梨を食べたときほど、私は梨では幸せを感じないと思うし、あなたにとっての桃もそう。違ってていいし、当たり前のことだよね。
でもね、あなたが梨の素晴らしさを言葉にできれば、私は梨も好きになるかもしれない。
歪にならないように心を配って、いつか形にできたら、素敵だね。」
脳に刺さった矢のような先輩のアドバイスを思い返しながら、言語化することに長けた人のトークの刺激を受けつつ、
少しずつ感想や、連想したことを言語化していく練習をします。
そのための学習帳です、夏休みの絵日記やドリルに近いかもしれない。
それにしても、逃げていくイメージを言語化するって難しい。
書きたいと思った内容と生き別れて出会えないし、なんでこんなに長くなるのホントもう。
それでもチャレンジをしようと思ったのは、亡くなってしまった先輩に向けて、何とか頑張ってますよと報告できるようになんだと思うのです。
三日坊主にはなりたくないけど、毎日は無理だと思うので…まずは細く長く続けてみようと思うのです。