#5【セラピスト・トレーナー向け】脳振盪の分類 -Classification of Concussion-
今日は再びセラピスト、トレーナーさん向けの内容になります。
脳震盪の分類について。
ただの頭痛・頭部打撲と勘違い、なぜ脳振盪の分類についての知識が必要かというと、脳振盪と思っていた症状が、もしかしたらもっと重篤な症状かもしれない、その境界線をきっちりとはいかないまでも、ある程度頭に入れておくことは非常に重要になってくるからです。
それでは今日も参考文献等を交えて説明していきたいと思います。
まず、脳振盪は『頭部外傷』の一種です。頭部外傷とは、簡単に言うと頭へのケガです。その『頭部外傷』のうち、外力からの衝撃によって脳の組織が損傷した状態。それを「外傷性脳損傷(TBI: Traumatic Brain Injury)」と言います。余談ですが、『頭部外傷』はさらに「頭蓋骨骨折」「局所性脳損傷」「びまん性脳損傷」に分類されます。
その「外傷性脳損傷」も程度によって分類されています。
軽度、中度、重度。
この重症度が何を基準に分類されているかというと、脳に衝撃が加わった際の、①記憶喪失の時間、②昏睡状態の程度、③健忘の程度、④画像診断の結果によって分けられています。
Pediatric and Adolescent Concussion: Diagnosis, Management, and Outcomes(J.N Apps and K.D. Walter, 2012)
そして、“脳振盪”はその中の<軽度>に分類されます。
軽度の症状を見ても、脳振盪は意識喪失もなく、健忘もなく、昏睡状態も正常で、画像診断上も問題ない、それでも起こりうることなので、その場合の位置づけとしては軽度の中でもより軽度、というようなイメージです。
ただ、正直な話、その境界線をはっきり引くことは難しいです。上記した症状に当てはまるなら程度の分類もしやすいですが、全く当てはまらないけど、神経機能に障害をきたしている場合、それも“脳振盪”なので。
ちなみに、“脳振盪”の分類も各団体によってされています。
こちらも軽度、中度、重度、と。
Pediatric and Adolescent Concussion: Diagnosis, Management, and Outcomes(J.N Apps and K.D. Walter, 2012)
しかし、個人的にはこの分類は意味があまりありません。なぜなら、“脳振盪”のリハビリはその程度をベースにするわけではなく、症状をベースにしてそのリハビリの程度を変えていかなければならないからです。ちょっと意味わかりにくいかもしれませんが。
脳震盪の定義②でも述べたように、症状が後々悪化してくるケースもあります。なので、受傷直後にその“脳振盪”の程度を、その時の症状だけで判断するのは危険であり、なおかつその場で頭を切って中身がどうなっているかを確かめるわけにはいかないので、結局その分類自体にも根拠となる要素が薄くなります。
リハビリを行って、結果的に症状がそんなに酷くなくて、リハビリ期間が短ければ「軽度だったね」。ちょっとなかなか症状抑えられなくて時間がかかった場合、「中度だったね」。なかなか治らないし今でも症状が持続している、うーん、原因がいまいちわからない、「これは重度だな」。
その分類の仕方は結局結果論なので、あまり意味ないです。
リハビリを行う上では。
もしかしたら研究ベースでデータを取っている時に、分類をせざるをえなくてするのはかまいませんが、初診で患者さん、選手を診る際に、その時に重症度を考えることは特にしなくても大丈夫です。あとは、問診で自覚症状の程度を聞くこともありますが、それらは「主観」であるため、人それぞれで症状の受け取り方の感覚も違うため、それをベースに重症度を決めることはありません。
ただし、その代わりに頭に入れてと言いますか、心の準備として思っておいて欲しいことがあります。
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