ウインターカップ トレーナー活動報告メンタルコントロール①県立広島皆実戦

【平成最後】のウインターカップを3位で終えることができて安堵するとともにトレーナーとして何か残すことが大切なのではないかと考えるようになりました。

今回のウインターカップーでは様々なドラマがありニュースにはならない舞台裏がありました。

トラブルも多く、順調なスタートダッシュを切る事はできませんでしたが、それでもチームは試合ごとにレベルを上げていきました。

今回、トレーナーの活動記事を書こうと思った理由は2つです。

①これからトレーナーを目指す人たちのために少しでも参考にして欲しい。

②バスケットボール界の発展のために。特に10代を中心とした若い世代の選手たちの競技環境向上と医療界、トレーニング界の浸透の促進剤として。

①に関しては身近なロールモデルとして捉えてもらえればと思います。

②に関してはトレーナーの環境問題なども絡んできますが、若い世代には競技人生(その後の人生も)に関わることなので重点を置いています。

トレーナーの仕事はそれこそ表に出ることがなく、逆に活躍するような場面では、チームは何かしらのトラブルが発生している時です。チームとしては好ましくない状態です。

高校バスケットボールでは、トレーナーはチーム外のスタッフとして扱われています。Bリーグで活躍するトレーナーとは立ち位置や活動方法が異なります。


10年位前から高校バスケットボールのトレーナーをしていますが、試合に関してはトレーナーの立ち位置それほど変わっていません。むしろ、ルールが明確になりタイムアウト時は選手に近づくことが出来なくなりました。

協会におけるトレーナーの地位はまだまだ変わらない状況です(協会内から働きかけていたトレーナー仲間は居ました)。

試合ではなかなかチームに関わることが出来ない状況ですが、幸いにも桜丘では、監督がトレーナーに対して理解度と要求度が高く、多くを任せて頂いています。そのことは、全国でもトップクラスだと思います。

そのため、選手たちとは密にコミュニケーションが取れるため、試合前や試合間、試合後などの対応がスムーズに行うことができます。

その上で今回書くのは主にメンタルサポートと言う部分です。

コンディショニングやトレーニング方法などまた大会期間の食事等はまた別のシリーズで書こうかと思います。

メンタルサポートに関しては、心理学など学ぶべき分野があります。そちらも多く書籍等が出ておりますので読んでいただければと思います。個人的なオススメする書籍は別の記事で紹介していますので参考にしていただければと思います。

では、早速大会初日に起こったトラブルのお話からです。

今回、どうしても話が長くなるので1試合ごとに記事にしています。


ウインターカップ1回戦 県立広島皆実戦 ユニフォームがない事件

ウインターカップ1回戦 県立広島皆実戦 では前代未聞の事件【ユニフォームがない事件】が試合前に発生。

もうこの話だけでかなりのボリュームを使いますが、動画などで選手たちの最初のパフォーマンスをこれからする話を読んだ上で見てもらえるといいかなと思います。

事件が発覚したのは試合会場に移動する前のホテルのロビーでキャプテンが青ざめた顔で報告してきました。

「前さん、ラパとリバスのユニホームがありません」

「はっ?」

ユニホームがないのはセンターの2人。
私もこの報告を受けて頭が真っ白になったのを覚えています。

「こんな形で大会を終えることになったら最悪だな」と心の中で思いました。選手たちのそれぞれの顔も呆れた顔や絶望に近い顔など、もう移動中のバスの雰囲気は最悪でした。

なぜこんなことが起きたかを詳しく聞くと相手を想う行動が少しズレで起こったと言う事は理解できました。そのため、【忘れた】のではなくて【ない】なのです。

会場に移動する中、ユニホームは前半には何とか届きそうだと言う報告を受けました。

ここで今一度冷静に考えてトレーナーとして何ができるのかを分析し選手たちに試合の準備をさせなければならないと考えました。

どのような状況にあってもベストな形で試合準備をさせるのがトレーナーの仕事です。

試合開始は予定通り行われます。
試合に向けて1分1秒と無駄にすることができません。私も冷静さをかけていた部分もありますが、できるだけ選手たちに最高のパフォーマンスをさせるための準備をしていました。

この場合、大切な事と気を付けなければならない事があります。

大切なことは、この状況の中、選手が戦う気持ちを作ることです。

そして、気を付けなければならないことは、ユニホームが届きメンバー極度の緊張感からセンター2人が出れるという安堵感で緊張の線が切れてしまい、その結果パフォーマンスが低下してしまうことです。

どちらかと言うと緊張の糸が切れてしまいパフォーマンスが低下することをトレーナーとしては恐れていました。

そのため、ユニフォームがいつ届くかをはっきりとは選手たちに伝えませんでした。

冷静に考えてみてもセンター抜きではきついゲームにはなりますが、全く戦えないと言うわけではない状況でした。

そのため大切な事はセンター以外の選手たちのパフォーマンスにプラスα引き出すこと、それを明確に続けることを伝えなければなりませんでした。

メンタルコントロールは言葉使いが重要です。「絶対勝つぞー!!」や「気持ちで負けるな!!」などと試合前から感情面を煽るような事はこの時は伝えず、明確に何をどのようにしていくべきなのかを伝えました。

ただでさえ緊張し難しい初戦です。しかも、彼らは初めてのウインターカップです。言葉選びは慎重になりました。

ここで注意しなければならないのは、同じスポーツをしているトレーナーにありがちな戦術に対してコメントしてしまうことです。

これは非常に難しいことですが、指導者とトレーナーとの信頼関係にも関わり選手が混乱をきたすないためにもこのことは厳守する必要があります。

選手が私に質問に来るときは身体の使い方などに対しての質問が多く、戦術に関して質問に来る事はありません。

試合に向けてそれぞれが何をすべきかが明確になると選手たちは、次第に冷静さを持ち始めます。ハーフアップに行く頃には少し笑顔も見えるようになりそれなりに吹っ切れた感じもあり、それが頼もしくも思いました。

ハーフアップのシューティングを見ているときにふっと思った事は、今回の件に関しては全ての人がベストを尽くそうとした結果、少しずつずれて今回の結果に至ったと言えます。

関わったのは、1年生、マネージャーそして日ごろから応援している親御さん。すべての人たちがベストだと思い行動した結果、今の状況になってしまった。

チームスポーツは、ベストを尽くしても必ず失敗することはあります。そして、その失敗を補い会うのがチームスポーツの最大の魅力であり、選手たちが1番に学ぶべきことだと私は改めて考えていました。

チームというのは、試合に出ているメンバーだけでなく彼らをサポートする下級生やマネージャーそして親御さん達も含まれています。

ハーフアップを終えてアップ会場に戻ってからメンバーを集めそのことを改めて伝えました。

「今回の件に関わった人たちは、ベストを尽くそうとした。だけど、結果が悪い方に行った。このまま負けると関わった人は一生後悔する。そうならないようにみんなで今回のミスをフォローしよう」

選手たちはこの言葉を理解してくれたと思います。
そこから本格的にアップを開始し集中力を高め試合に挑みました。センターのユニホームが届くまでの第一クオーターはリードする形で終え十分にその役割を果たしてくれたと思います。

試合結果は流石の強豪校でセンターが揃っても楽な試合展開ではありませんでした。

バスケットボールは人生の縮図のようなものです。
ベストを尽くすことの難しさ、必ずミスをして仲間に迷惑をかける。それでも仲間がカバーしてくれる。お互いが持ちつ持たれつ助け合いながら目標に向かう。

今回の初戦はメンタル的にタフな部分が多かった試合ですが、それを起点にして選手たちは成長したと感じました。

チームとしてもまとまり最悪な状況から最高のチームへとレベルアップが始まりました。

つづく。




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