大学院生の落書き#2勉強法・ゼミのやり方
なんとも胡散臭いタイトルではあるが明文化して残しておくことは誰かの助けになるかもしれない。かくいう自分はこの事を大学一年生の時に知りたかったという事をどんどん書いていこうと思う。物理や数学を勉強する理学の学部生や大学院生にはそのまま適用できる話ではあるが、文系学問や工学的な学問ではどうなのかは正直わからない。医歯薬系や大学受験、資格受験等にはあまり向かない話かなと思うので、その辺りの人には何の参考にもならないことを先に断っておく。
まず持って大前提として、尊敬して止まないよびノリたくみさんの勉強法の動画を共有しておく。自分が修士課程一年生になって初めて勉強の仕方、ゼミの仕方が分かったと思えた起点はこの動画を見たところから始まっている。自分よりも何倍も勉強していらっしゃる方なので、このお話を無くして勉強法は語れないと思っている。
さて、この動画を前提としつつ、まずは勉強の仕方を考えていきたい。
「教科書の劣化コピーを作らない」
これはゼミのやり方の話にも後々絡むことになるが、常に意識するべきことである。教科書を読みながらノートに自分なりにまとめていくという勉強法を取っている人が多いと思うが、この時に教科書の劣化コピーを作ろうとしていないかが重要なのである。そもそも、教科書を読む目的に振り返ろう。
「書かれている事を理解し、習得する」
これに尽きるだろう。いつでも見返せるようにと綺麗にノートをまとめる必要はない。参照したい時は教科書を見返せばいいのだから、頑張ってノートの体裁を整える意味はあまりないと言えるだろう。この二つを常に意識して進めていけるかどうかで、その勉強の効果はかなり違ってくるのではないかと思う。自分は学部時代はほとんどこれを徹底できておらず、参照しづらい教科書劣化コピーノートを量産していた。
もう一つ、特に意識するべき点がある。それは、
「全ては基礎基本の上に成り立つ。めんどくさがるな、イキるな。」
ということである。発展的な理論を勉強するなということではなく、基礎基本の積み上げなしに発展的な理論の理解はないという事は理解していなければならない。時に身の丈に合わない発展的なものに手を出すことはそれはそれで意味のあることではあるが、それをベースにしてはいけない。大体の大学のカリキュラムは物理学科だと一年で力学、二年で電磁気学と解析力学と量子力学、三年で量子力学と統計力学、四年で相対性理論やその他専門的な理論ということになっており遅く感じるかもしれない。だが、先取りをできるのは目の前の事をしっかりとこなしている者の特権だ。まずは力学、電磁気学、その他関連する数学など目の前のことをじっくり確実にこなしていくべきである。その積み上げの強度が後の専門分野での理解度を決定すると言っても過言ではなく、そこがグラつくと全てが不安定な理解になってしまうこともあり得る。
そして、「めんどくさがるな、」これは自戒も多分に含んでいる訳であるが、教科書には全ての計算過程を書いている訳ではない。その中には非常に簡単なものもあれば難解なもの、”Straightforward”なものもある。これらをまぁ分かるだろうという推測の下、自力でしないというのは非常にまずい。やって始めて分からない所がわかるのであり、飛ばす事を繰り返すとみるみる基本的な理解がグラついていき、気づいた頃には教科書に置いて行っていかれる。めんどくさがらず、「全ての計算を自力でやる」という意思を強く持ちながら教科書は読み進めなければならない。
この二つを通して求められるのが「イキるな」という事である。まずは実直に目の前の基礎基本を、目の前の計算を順番に進めていく以外に成長の道はないのである。
これで上の動画と合わせてほとんどやるべき事は決まっただろう。次はゼミのやり方について進めていくが、発表者と聞き手に分けて考える。今毎週やっている研究室ゼミの同期にこそ聞いて欲しい話ではあるが、上から目線で言えるほど自分のレベルも高いわけではない気がするのでなんとももどかしい状況である。
ゼミの発表者の方から始めよう。意識するべき事は色々あるわけであるが、ここでも最も大切な事は
「教科書の劣化コピーを作らない」
となる。劣化コピーのノートを作成してそれを配るような事で満足してはいけない。これを意識しながらまずは準備をどうするかを考えよう。
発表準備はまず担当範囲に書かれている事を理解し、整理することが大切である。分からないことがあってもいい、分からない所をどう分からないのか、どう考えているのかを明確にして発表時に議論を始めれれば良い。計算は全て自力で行い、どこかのノートにまとめておこう。その上で担当範囲の意義や目的を明確にし、発表に備える。ここでやるべきことは基本的に上記の勉強法と変わらない。
次に発表時に意識するべきこと考えよう。
「自分が発表する意味を作り出す」
これはゼミに限らず発表、プレゼンという形を取るもの全てに共通して言える事だろう。ゼミについて言えば、教科書の朗読会をするのでは何も意味がないと言える。
さて、具体的に話を進めていくと、現在地を示すために準備で確認した意義や目的を明確に示す事をまずは徹底しよう。今何を何のためにしていて、これにはどういう意味がありどういう結果をもたらすのか。これを明確に出来ていれば聞き手も自分も混乱せずに話を進めることが出来るだろう。
次に厄介なのが計算をどう進めるかになる。その場で悩みながら計算するのは論外で、発表する意味もくそもない。かといって予め用意してきた準備ノートで途中計算全てを示しているのは、それはそれで頑張ったアピールにしかなっていない。発表者として意識するべき事は計算を実行せずに計算の要点を伝える事である。要点とは、「開始地点、条件、終了地点」の三つである。「この式をこういう条件のもとで計算するとこうなります」という風に計算の本質だけを抜き取って伝えなければならない。それに加えて途中で用いる特殊な関係式やテクニックなどがあれば適宜補足するべきであるが、この辺の肌感覚は人に物事を教える経験の練度による気がするので経験を積むしかない。そして、質問が出れば準備ノートを示しながら具体的な計算を説明していけば良い。みんなが理解している計算を延々と発表しているのはゼミごっこになっている事を自覚しなければならない。まとめると計算の定性的な説明を心がけようということになるが、これは結構難しいことかもしれないのでゼミを通して練習しよう。省きすぎると指導教官やメンバーから質問やツッコミが入ると思うので、一度省きすぎくらい省いてから段々と質問やツッコミが出ないように調整していけるといいと思う。なかなか「計算やりすぎ」と言ってくれる人はいないので、省くところから始めよう。
さらに発展的な事をするならば、自分なりの解釈を示して議論するのもいいかもしれない。全員の理解度を底上げするのに大いに役立つだろう。
最後にゼミの聞き手の意識するべき事を考えよう。
「発表を聞く」
当たり前だがこれが全てだ。発表中に教科書の該当箇所を必死に読んでいたり、計算していたり、内職をしたりして発表を聞いていないというのが一番やってはいけない。そもそも、発表者に対してかなり失礼な行為である。
そして、発表を聞きながら分からない所、自分の理解と違うところは遠慮なく質問しよう。ゼミをやることの大きな意味は議論である。議論を喚起することこそが求められていることなので、遠慮せずどんどん聞いていこう。またツッコミも非常に大事である。発表者を裸の王様にしてはいけない。また、聞き手も該当範囲での分からなかった所をまとめておくのが重要だろう。発表を聞きながら理解したり、質問をぶつける時の解像度がうんと上がる。
以上、長くなりすぎてしまったが、勉強とゼミのやり方についての話を進めてきた。
もしかしたら誰かが同じような事を書いてくれているのかもしれないが、過去の自分に文章を送れるならこれを送りたいなと切実に思う次第である。この文章がどこかで誰かの役に立てば幸いである。