就労者約5,000万人のほぼ全員が受け取っている「通勤手当」への問題提起と改善提案
現代の日本では、多くの企業が福利厚生の一環として「通勤手当」を支給しています。通勤手当は、日本の労働者の約5,000万人の大多数に支給され、都市部だけでなく地方においても非常に重要な役割を担っている制度です。しかし、この通勤手当制度には、意外にもさまざまな不公平や問題点が存在しているのをご存知でしょうか?この記事では、広く普及している通勤手当に潜む課題と、その改善の必要性について掘り下げていきます。
1. 通勤手当の非課税枠に潜む不公平
現在の通勤手当制度における非課税枠は、通勤手段によって大きな差があります。電車やバスといった公共交通機関の利用者には月15万円まで非課税枠が適用される一方、自動車通勤者の非課税枠は距離に応じた上限が約3万円程度に留まっています。この差によって、遠距離の電車通勤者は多くの手当を非課税で受け取る一方、自動車通勤者は通勤費の多くが課税対象となり、手取りが減少することに繋がっています。
例えば、ガソリン代や高速代、さらに駐車場代がかかる地方の自動車通勤者にとって、通勤手当がすべての交通費を補いきれないケースも多く見受けられます。この状況は、自動車通勤を余儀なくされている地方の労働者にとって、不公平な負担となっているのが現状です。
2. 通勤手当が厚生年金に与える影響
通勤手当は、給与と同様に「報酬」として扱われるため、厚生年金や健康保険の標準報酬月額に含まれます。これにより、遠距離通勤で通勤手当が多いほど、将来の年金受給額も増えるという仕組みが生まれています。
実際、電車通勤で15万円の通勤手当を非課税で受けている人は、その分だけ標準報酬月額が高くなり、毎月の厚生年金積立額が増え、将来受け取る年金額も増える傾向があります。一方、自動車通勤の長距離者や通勤手当が少ない近距離通勤者は、この恩恵を受けにくいことから、不公平感が生まれています。
3. 環境配慮との矛盾
近年、環境問題への意識が高まる中、「職住近接」や「環境に配慮した通勤形態」が推奨されるようになっています。しかし現行の通勤手当制度では、遠距離通勤の電車利用者が優遇され、むしろ短距離通勤者が不利になるという矛盾が生じています。職場の近くに住み、環境負荷の少ない通勤手段を選択することがメリットにつながらない現状は、今後の働き方の多様化にも影響を与える問題といえるでしょう。
4. 制度改善に向けた提案
では、こうした通勤手当にまつわる不公平感を解消し、より現代の働き方や環境問題に対応するためには、どのような改善が考えられるでしょうか?
4.1 通勤手当の非課税枠を見直し、通勤手段に応じた柔軟な設定
現行の一律の非課税枠を見直し、実際の通勤手段や距離、通勤費に応じた柔軟な非課税枠の設定が必要です。例えば、自動車通勤者のガソリン代や高速代、駐車場代を含めて考慮することで、手取り減少の負担を緩和し、通勤方法に応じた公平な制度設計が実現するでしょう。
4.2 厚生年金の標準報酬月額から通勤手当を除外する
通勤手当はあくまで通勤にかかる経費であることから、標準報酬月額には含めず、純粋に給与を基に年金額を算出する方が、公平な年金制度に繋がると考えられます。
4.3 「職住近接」に対応する福利厚生の充実
通勤手当を支給するだけでなく、近距離通勤を促進するための住宅手当や、テレワーク導入による通勤負担の軽減など、柔軟な通勤支援策を企業が採用できるようにすることで、地域や企業に応じた通勤方法の多様化に対応できます。
結論
通勤手当は、約5,000万人の就労者に支給される大規模な制度であり、生活支援や年金制度への影響が非常に大きい重要な部分です。しかし、現在の通勤手当制度には、電車通勤と自動車通勤の間での非課税枠の違いや、標準報酬月額への影響など、多くの不公平感が残っています。今後の働き方の多様化や環境配慮を反映するためには、通勤手当の見直しを含め、柔軟で公平な制度設計が求められているといえるでしょう。
通勤手当の問題は、私たちの日常生活にも密接に関わる大きなテーマです。このような問題提起を通じて、より多くの方が通勤手当制度について考え、改善の声が広がることを願っています。