見出し画像

若い世代が「貯める」ことに必死になるのはなぜ?——デフレ育ち世代の悲哀と、終わらない“先送り”の結末

最近の若い世代、特に20代・30代の方を見ていると、貯蓄や投資にとても熱心だな、と感心すると同時に、少し悲しい気持ちにもなります。
「浪費しないように」「無駄遣いはしないように」と気をつけることは大切ですが、その一方で「お金はいつ使うの?」と思わずツッコミを入れたくなる場面も。

たとえば、こんな話を聞いたことがあります。

「子どもにはコンビニじゃなくて、薬局チェーン店やスーパーで飲み物やお菓子を買うように教育しています。」

(たまたま聞いた30代のひとの会話より)

確かに、同じ商品なら薬局やスーパーの方が安く買えます。でも、コンビニが少し割高なのは、日本全国どこにでもお店があり、夜中でも空いているという「便利さ(コンビニエント)」への対価。そこに高い配送コストや深夜営業のコストが含まれているから仕方ないんですよね。こうした節約・倹約志向の背景には、彼らが「ずっとデフレ環境下で育ってきた」という事実があるのではないでしょうか。モノやサービスの価格が下がり続ける、または上がりにくい環境で育つと、自然と「より安いもの」に目がいきやすくなるのも無理はありません。


■ 新NISAで「先送り投資」が加速?

さらに、最近は「新NISA」の制度が話題になっています。投資にまわしたお金は非課税で運用できる枠が拡大し、「早めに始めないと損!」という声があちこちで聞こえます。
もちろん、理論的に見れば正しい行動です。S&P500や全世界株式(オルカン)などは長期的に右肩上がりで成長してきた実績がありますし、リスクプレミアム(株式リスクの見返り)を狙うなら、若いうちからの投資は有利なのも確かです。

ですが、そのために普段の生活費を切り詰めすぎてしまうのは、少し考えもの。

  • 今の若さ

  • 今の体力

  • 今の健康

これらは未来永劫続くわけではありません。
平均寿命が80年を超えているとはいえ、実際には体力や健康のピークはもっと早く過ぎてしまうもの。「今」を犠牲にしすぎて、「老後」に十分な資産を残したところで、そのときに十分な体力や健康がなかったら、本末転倒ではないでしょうか。


■ これって何バイアス?

「自分だけは長生きできそう」「老後も元気に暮らせそう」と、どこか根拠なく楽観的になってしまう傾向は、心理学では一般的に「楽観バイアス(Optimism Bias)」と呼ばれます。

  • 自分は交通事故に遭わない

  • 自分は重大な病気にかからない

  • 自分は平均よりも長生きできる

こうした、根拠の薄い楽観は、いい意味でのポジティブ思考を生む一方で、「今をどう過ごすか」という視点を抜け落とさせてしまう面もあります。


■ 「先送り」を優遇する制度にも問題?

また、わたしたちの社会には「お金を先に受け取るより、後で受け取る方が有利になる」仕組みがあちこちに散りばめられています。

  1. 年金受給開始年齢を遅らせると受給額がアップ

    • 結果的に、「まだ健康だし、自分は長生きできるはず」と先送りしてしまう。

  2. 退職金制度

    • 給与としてもらうよりも、退職時の一時金や企業年金の方が税制面で優遇される。

  3. NISAやiDeCoなどの長期投資優遇

    • 長期運用すればするほど非課税枠の恩恵を受けられる。

もちろん、これらは「将来が不安」な人々にとっては安心材料になる一方で、「最終的に死ぬときに一番お金を持っている状態」になりやすい仕組みともいえます。あまりに先送りを続けると、使わずに終わってしまい、結果的に相続税で持っていかれる……という皮肉なオチも起こり得るわけです。これについては、国、平たく言うと日本が誇る英知が結集するザイム真理教もわかっていて、さも税制優遇とみせかけて「どうせ相続税で回収するからいいや」とたかをくくっているのでしょうね。。


■ 結局、いつ使うの?

極論ですが、「死ぬときが一番金持ちになっている」ということは、元気に動ける若い時期には、お金を使っていないということ。
もちろん、老後の不安は誰しもが抱えるものですし、貯蓄がないと困る局面も出てきます。最低限の備えは大切です。
しかし、それと同じくらい「今しかできないこと」「若いからこそ経験しておきたいこと」にお金を使うのも大切ではないでしょうか。

  • 旅行や趣味に投資する

  • 新しい学びやスキルにお金をかける

  • 人との交流やイベントに参加する

これらは将来のリターンになるかどうかだけでなく、人生そのものを豊かにする要素です。節約や貯蓄も大事ですが、「あのときもう少し楽しんでおけばよかった」と後悔しないように、今の時間や健康、体力を活かしてみてはいかがでしょう。


■ まとめ:ほどほどに、でもしっかり「今」を楽しむ

  • デフレ育ちの若い世代は、節約や貯蓄、投資に長けている反面、「今」を楽しむ機会を見失いがち。

  • 長期投資先送りを優遇する制度は、理論的には正しい行動を後押しする一方で、「死ぬときに一番お金持ち」になるリスク(?)も孕んでいる。

  • 楽観バイアスも手伝って、「将来は大丈夫」「体力も健康も続くだろう」と漠然と思ってしまう。

大切なのは、「どこかでしっかり使う」「今を満喫する」視点を忘れないこと。現役世代のうちだからこそ味わえる楽しみや学びを逃さずに、若いときのエネルギーを活かしてみてください。
貯めるだけではなく、使うことも上手な人が、本当の意味で豊かな人生を送れるのではないでしょうか。

いいなと思ったら応援しよう!