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消えてなくなる写真

くるりの岸田さんがウィーンを訪れた印象を振り返って、「店や街路などでBGMが雑に流れていなくて、つまりは音楽を消費してないんだと感じました」と話しているインタビューを見ました。
この言葉を、基本的にはポップソングのアーティストである岸田さんが語っていることに感銘を受けました。

ポップソングは、ボードリヤールがシミュラークルと呼んだような反復によって価値が生まれて膨らむ要素があります。耳に残るサビ、どこから聞いてもわかりやすい構成、メリハリの効いた音作り、全てがそれを前提にしています。クラシックのように生演奏が最上のもので、録音によってアウラが減衰していくというわけではない。それなのに岸田さんはそう語りました。

では、インスタグラムの写真はどうでしょう。写真をシェアして体験を共有しているように見えて、じつは消費———あるいは浪費なのではないか。
写真は雑誌との相性が抜群に良く、いまの地位を築いたのは印刷技術の進化とグラフ誌の隆盛のおかげといってもよいです。
もちろんネットとの相性も良かった

はずでした。

ぼくが使っているエディター(テキストを書くソフトウェア)は、文字数のカウントだけでなく、読むのにかかる時間も教えてくれます。
↑ここまでで1分9秒。ゆっくり読むと1分48秒。
写真はテキストのように見る時間を想定することができません。見る人に委ねるしかない。それは映画との決定的な違いでもあります。時間芸術ではない。

撮り手が、見るだけでなく読むことを求め、さまざまなヒントを散りばめながら、謎を隠したような写真でも、さっとキャプションを読んで、写っているものを確認して、”いいね”押したらハイ次、となってしまうこともあります。余韻さえも残さずに。
その環境のなかで、写真がふたたび力を取り戻すためには? 
おそらくは「SNSでたくさんのLikeをもらうためのノウハウ」なんかより、ずっと大事なことで、みんなで考えて語り合う意味のあるテーマだと思います。

workshop & talk event
https://note.mu/photounseen/n/n8d68f1877a30?creator_urlname=photounseen

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