造花とサイカーとおじいちゃん 旅する写真家のミャンマー旅日記

旅する写真家のミャンマー旅日記
目次
伝わる緊張   (空港からアウンミンガラーバスターミナルへ)
・ありえない勘違い (ヤンゴンからキンプンに向けて出発)
・ゴールデンロック、目を醒ますともう外は騒がしかった

・《当記事》造花とサイカーとおじいちゃん
このあとも更新予定です!お楽しみに!!

ヤンゴンの宿

ヤンゴンに着いた頃はまだ明るかった。まだ夕方4時にもなっていなかった。アウンミンガラーバスターミナルは、ヤンゴンの郊外、と言えるほどに遠いい。スムーズに行けばだいたい一時間くらいだ。僕はそこから路線バスに乗る。宿のあるダウンタウン行くために、街の中心、スーレーまでバスに乗る。ヤンゴンで泊まるのは、前回のヤンゴン滞在でも利用したホステル。約13ドル。質素だけれど、掃除も行き届き、何より、スタッフが親切な上に英語が堪能だった。ミャンマー語が完璧ではない僕にとってはやはり助かる存在。その日は、もうゆっくりしよう、そう思っていたので、一度宿まで行って、チェックインをすることにした。

そこの宿は中華街にあり建物が特徴的だった。場所もわかりやすく、すぐにわかった。一年ぶり3度目の滞在。いつもそうであったように、ヤンゴン周辺の日本語マップをくれ、英語で一通り説明してくれる。大丈夫、と断ろうかと思ったけれど、なんか悪い気がして言えない。

通された部屋はほとんど変わらなかった。小さな冷蔵庫が新たに置かれていること以外は。ベッドの大きさで7、8割ほどの面積を埋るその部屋は、狭い中にもテーブルと椅子が置かれる。シンプル。そして、テーブルの上にはラウンドリーバックやミネラルウォーター、それにコップまで。エアコンは既につけられ、涼しい。僕はとりあえず、充電しなければならないものを充電し、その間に、さっとシャワーを浴びて、着替えた。

造花とサイカーとおじいちゃん

別に歩いても良かっのだけど、歩いていると、あるサイカーに目が止まった。そのサイカーの乗り主は華奢なおじいちゃんといった雰囲気なのだけれど、何が目を引いたかといえば、自転車に造花と思われる花をくくりつけていた。ちょっとしたおじいちゃんの美意識なのか、面白いな、と思って話しかける。僕は、スーレーパヤー近くのサクラタワーのルーフトップバー『yangon yangon』に行きたかった。僕にはそこまでミャンマー語で伝えられる自信もないので、とりあえず『スーレー、バラウッレ(いくら?)』と聞いた。1000チャットだという。僕はそれに納得をして、彼の自転車のサイドカーに乗り込んだ。もうすぐ夕暮れという時間。とてもいい時間に乗ったかもしれない。めぐりゆく景色は遅すぎず、早すぎず、その座っている座席のなんとフカフカなことか。気持ち良いドライブだ。それに、彼は本当に一生懸命にあちこち指をさし、これは、こーだ、とかあそこはあーだとか、説明をしてくれてている。でも、悪いとは思いつつもほとんどわからない。なんとなく雰囲気でここはすごいとこだ、とかなんとなく自分の中で噛み砕いて解釈するしかない。彼の言葉を繰り返し、おー!とか、あー!とか言って、僕の中の勝手な解釈をしながら相槌をうつ。その相槌に彼は気持ち良くなったのか、僕の相槌に、相槌が帰ってくる。うううんーーとかふかい頷きの声。いい時間だな、そう思いつつもスーレーに着いたので、ホウッケイ、チェーズーベー(オッケーだよ、ありがとう)。そう言おうとするが、その円形のパゴダの周りをぐるっと回る。ただ親切で回ってくれているのかな、と思った。ありがとう、そう言って、また同じことを言って降りようとすると、彼は指を回し何やら言っている。要は、5000チャットで少し彼がガイドしてくれるということだった。はっきりとNOということもできたけれど、それをすると、せっかくのいい時間がきっと台無しになる。もうすぐ日も落ちる、どうしようかなと思ったけれど、彼のサイカーはとても乗りごこちがよく、彼も悪い人じゃなさそうだし、ということで、その提案を飲むことにした。

彼はゆっくりとサイカーを操りながら、暗くなりかけのヤンゴンを案内しながらミャンマー語で僕に話しかける。僕は変わらず、ほとんどわからないので、なんとなくの相槌で彼に応える。この分かり合えていない、でも、思い合えている時間。なんだか、僕のおじいちゃんとの時間に近いものをおぼえた。僕のおじいちゃんは、近所の人にも太っ腹で、農家をやっていたけれど、売り物みなる野菜をも、来客の人みんなにあげる。売り物のはずだから、家族は困っていた。独りよがりの優しさ、というか。すごく優しいんだけれど、周りのことが見えていない。サイカーのおじいちゃんが周りが見えていないとは思わないけれど、なんとなくにおいと、親切心と、そんなこんなでおじいちゃんが蘇る。

そんなことを感じながら、ほとんど暗くなったヤンゴンで彼に別れを告げた。ありがとう。この出会いも一期一会。さよなら。

 


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