PENTAX SP を使ってみた
全世界で4百万台売れたと言われる往年の名機 PENTAX SP。シリアルナンバーは割合初期の130万台なので、1960年代終わり頃の製造かと思われる。取扱説明書が現在もリコーイメージングの公式サイトからダウンロードできるのは感心した。他のメーカーも少しは見習ってほしい。
ペンタプリズム上部のアクセサリーシューは脱着式で、外すとスッキリした外観になる。AUTO YASINON-DS 50mm F1.9 を装着してみた。
PENTAX SPの重量は公称623gでNikon FMより少し重い程度。肩部までの高さがあるので持ちやすい。横走布幕シャッターは1/1000~1秒で柔らかくて心地よい作動音を奏でる。いちばん感心するのはシャッターボタンの軽さで、重くてストロークの長いNikonに比べると、あっと思う間に切れてしまう。考えてみればメカシャッターでもシアの噛み合わせ長や角度、スプリングレートの設計でストロークも重さも制御できるのだから、軽くすることは可能なわけである。
M42マウントは使い回しがきくので、ヤシノンを付けても何ら違和感はない。同じ富岡光学製と推測されるプラナーと比較すると、ボケ味の傾向は似ていて開放だと柔らかい写り方をする。コントラストは明らかにプラナーが良く、ヤシノンの画はやや大人しい感じがする。絞っても、同じM42の西ドイツTessarのようなキツい描写にはならない。
広角のTAKUMAR 28mm F3.5に付け替えた。意図的にローキーにはしたのだが全般的に露出アンダーだったようで、スキャン後のデータ処理で諧調が荒れてしまった。SPのTTL露出計はボディの「SPOTMATIC」ロゴに反して平均測光だという。当初はスポット測光で開発していたらしいが変更されたそうだ。自分の感覚が中央重点測光になっていて、空が入るような明暗差が大きい構図に対処できなかった。
シャッター以外は動作未確認の品だった。下部の注油と電池接点磨きを終え、上部の分解整備中の図。この後ペンタプリズムを外してファインダー内部を清掃した。少なくともこの部分については設計が合理的で作業しやすい。露出計スイッチは構えた状態でレンズ基部の左側にあって、これを押し上げると絞り込みが行われ同時に露出計が作動し、シャッターを切ると元に戻るようになっている。動きが渋くて動作不良だったが、注油だけで正常になり、露出計のメーターも動くようになった。電池はLR41にOリングをかぶせて大きさだけ合わせれば使うことができる。
目立つゴミは除去できた。中心部はマイクロプリズムで、スプリットプリズムは無い。露出計の針が中央を指して適正露出を示している。振れ幅は上下2段ずつほど。倍率が大きくて見やすいファインダーで、当時の標準レンズTAKUMAR 55mmを付けると等倍になるらしい。
今回はFOMAPANの現像にスーパープロドール原液を使ってみた。元々強い現像液なので少しの時間延長で増感できる。とりあえず21℃で5.5分としてみたが、もう少し押してもよさそうだ。