saki
ただの女子高生が過したほんの一瞬のあいだのお話。
昨日から騒がれていた台風は、空回り。 分厚く重たい灰色の雲が、私の気持ちをさらに憂鬱にさせる。 そんな、模擬試験の日。 日本史のテスト。 残り10分で、テストが終わる。 手持ち無沙汰に、空を見つめる。 灰色の世界にぽっかりと浮かぶ黒い電波塔。 窓枠に切り取られた世界は、まるでモノクロ映画でも見ているような錯覚に陥れる。 まだ問題を解いている子、机に突っ伏して眠っている子、私と同じように窓枠に切り取られたモノクロ映画に見入る子。 時計の針が進む小さな音と、問題用紙が捲られ、髪
学校のアンケートにこんな設問があった。 4段階で、できる、できないを示すものだった。 質問文を何度も読み返した。 はあ?と思った。 こんなことを聞いて、何になるのか。 私たち、こどもに何を求めているのか。 そもそも人の役に立つとは何か。 確かに、人の役に立つために生きられる人は、素晴らしい人だろう。 そして、社会に求められる資質でもあると思う。 けれど、人のためを目指すが故に自分を殺してしまうような事が多々ある。 例えば、本当は友達のこんな所が嫌だけれど、友達が傷ついた
5月。 新しいクラスにも慣れ、制服のブレザーはもう着なくて良くて、暖かいねえなんて、日向ぼっこしてる頃。 私の時間は止まっている。 3月のあの日からずっと。 仕方の無いことだって、分かってる。 けれど、理不尽に奪われた時間は戻ることはなくて、時間が止まったまま世界は進んでいく。 なんの保証もないまま。 授業の進度? 学力差? そんなものは、大人の都合でしかなくて。 子供にとってみたら、そんなことよりももっと大切なことがあるの。 時間を返して。 なんて、言わないから。
土曜日の夕方 最寄りのひとつ隣の駅の本屋さんに本を買いに行く。 近所だけれど、お気に入りの服を着て、可愛いイヤリングをして、大好きな人からもらったネックレスをして、新しく買ったリップを塗る。 それだけで、自分が他の何かになれた気がして、ソワソワする。 久しぶりに乗る自転車。冷たい風でハンドルを握る手が冷えていくのが分かる。 特に買いたい本があるわけでもなく、フラフラと本屋さんを散策する。 新年だからか、おばあちゃんに手を引かれ大きな瞳を輝かせてキョロキョロする小さな子供たちの
制服は好き。でも、つまらないって思う。 だって、皆同じ服を着ていたら個性が引き出せないから。 いつもは制服をかっちり着こなして、内気なあの子が私服は少し派手目だったり、いつもは制服を少し着崩して、元気なあの子が私服は大人っぽかったり。 洋服は着ている人のイメージを大きく変える。 だから、面白い。 その人の奥深くの個性を引き出すのが服だと私は思う。 だからこそ、学校では私服を着ることが良いと思う。 それぞれの個性を引き出すと共に、誰もが個性を持っていることを再確認できる。
国語の授業で、身近な人にインタビューをする、という課題があった。 嬉しいことに友達に取材対象として選んでもらった。 趣味とか、大切なものって何?と聞かれて、私はすぐにカメラ!と答えた。 友達は、そうだよねー!と言ってメモをする。 いくつか、質問されて、友達は最後に不思議そうな顔で聞いてきた。 さきってなんで写真撮ってるの?きっかけとかあるの? 私はハッとした。 最近はなんで自分が写真を好きなのか、撮り続けているのか、それを忘れてしまっていた気がした。 私が写真を撮るきっ
午前0時 DVDを借りに行った。 駅の改札前の広場では、井戸端会議が開催され改札口では戯れに口喧嘩をする大人達。 その横を楽しそうに何人かの大人たちが通り過ぎてゆく。 駅を10メートルでも離れれば人は疎らになり、古びたガチャガチャが何個も置いてあるDVD屋に到着する。 DVDを3本借りて、DVD屋の前で古びたガチャガチャを物色して、ひとつを厳選してコインを投入して回す。 欲しいものは簡単には出ない。 ガチャガチャだし。 もう一度回すか考えるけれど、大人しく来た道を帰る。