見出し画像

MtFトランスに抗アンドロゲン(男性ホルモン抑制)は不要らしい

この記事はジェンダークリニックのビデオの要約です。

⚠️公式の医療アドバイスではありません⚠️
あくまで情報提供を目的としたものです

動画の内容のまとめ

テストステロンブロッカーの従来の役割と問題点

スピロノラクトンやフィナステリドなどの、抗アンドロゲン(以下、テストステロンブロッカー)は、テストステロンの生成や作用を抑制するために処方される薬ですが、これらの薬が副作用を伴います。例えば、スピロノラクトンは本来利尿薬として開発され、高用量でテストステロンを低下させる効果が見つかりました。しかし、それにより頻尿、塩分欲求、頭痛、筋肉痛、疲労感、低血圧といった副作用が報告されており、これらは日常生活において負担となる場合があります。

エストロゲン療法だけでのテストステロン抑制

エストロゲン療法を正しく利用すれば、テストステロンブロッカーを使わなくても十分にテストステロンを抑制できます。このアプローチでは、エストロゲンの投与によって体内のホルモンバランスを調整し、脳が「ホルモンが十分」と判断して自然にテストステロンの生成を減少させるようにします。

  • 仕組み: エストロゲンが外部から供給されると、視床下部と下垂体がそれを検知し、GnRH、LH、FSHなどのホルモン分泌が停止します。その結果、精巣でのテストステロン生成も止まります。(GHとはゴナドトロピン放出ホルモン。LTとは黄体形成ホルモン。FSHとは卵胞刺激ホルモン。)

  • 効果: テストステロン生成は完全に止まるわけではありませんが、大幅に減少します。副腎からのわずかなテストステロン分泌は続きますが、それは通常問題にならないレベルです。

効果的なエストロゲン濃度とその重要性

エストロゲン療法が効果を発揮するためには、エストラジオール(エストロゲンの主要な形態)の血中濃度を特定の範囲に保つ必要があると述べています。この範囲は個人差がありますが、200〜500ピコグラム/ミリリットルが目安とされています。

  • 注意点: エストロゲン濃度が500を超えると、逆効果が生じる可能性があります。具体的には、大量のエストロゲンが視床下部を刺激し、テストステロン生成が再び活発になることがあります。

  • モニタリングの重要性: 適切なホルモンレベルを維持するためには、医師による定期的な血液検査が不可欠です。特にエストロン(別の形態のエストロゲン)が高くなりすぎると血栓リスクが増加する可能性があるため、注意が必要です。

結論と提案

テストステロンブロッカーを使用しないことで、副作用の軽減やコスト削減などのメリットがあります。ただし、この方法を採用するためには、エストロゲン療法に精通した医師と密に連携する必要があります。医師が従来の方法に固執している場合は、適切な説明や情報提供が求められます。

動画の概要欄の翻訳

トランス女性やフェミニンなホルモン療法(HRT)を求める方は、しばしばテストステロンブロッカーを使用してテストステロン値を下げるよう指示されます。そして「絶対に必要だ」と言われることもあります。しかし、それは事実ではありません。ほとんどの人はエストロゲンだけの治療法を用いることで、体内のテストステロン産生を自然に抑えることができます。

血栓リスクについて疑問を持っている方へ

意外にも、この件についてはそれなりに多くの研究が行われています。ただし、これらの研究の多くは方法間の比較(例:経口投与 vs 経皮投与)に焦点を当てており、全体的なリスクには触れていません。その中で、特にトランス女性の血栓リスクに関する2016年頃の研究をご紹介します。以下がその詳細です。

Arnold JD, Sarkodie EP, Coleman ME, Goldstein DA.
Incidence of Venous Thromboembolism in Transgender Women Receiving Oral Estradiol.
J Sex Med. 2016 Nov;13(11):1773-1777. doi: 10.1016/j.jsxm.2016.09.001.
Epub 2016 Sep 23. PMID: 27671969.

この研究の概要(簡略版)

676人のトランス女性を対象とした研究で、血栓イベントが発生したのはわずか0.15%でした。この研究が完璧だったかといえば、多くの研究同様そうではありません。しかし、多数の研究を見比べて総合的に判断することが重要です。それでも、この結果から分かるのは、血栓のリスクは医療提供者がしばしばホルモン療法を制限する理由として強調するほどの「悪夢のような脅威」ではないということです。

ただし、治療法を選ぶ際には個々の健康状態、目標、年齢を考慮する必要があります。また、特定のリスク要因(例:がん、血液疾患、過去の血栓症)がある場合には、低用量のエストロゲンとテストステロンブロッカーを組み合わせる必要があることもあります。

エストラジオール濃度上昇によるテストステロン抑制の証拠について
これは基本的な内分泌学の知識であり、内分泌学の教科書で視床下部-下垂体-性腺軸(HPG軸)の仕組みを調べれば見つかります。これらの動画は、トランス医療の問題についての意識を高め、議論のきっかけを作るためのものです。これらは、医療提供者が実際の臨床経験から得た知識を共有する場として作られています。ただし、学術研究を目的としたものではなく、医療アドバイスを提供するものでもありません。

そのため、もしあなたの医療提供者が内分泌系の性ホルモンが視床下部や下垂体とどのように相互作用するかを理解していない場合、その医療提供者はそもそもトランスHRTを処方すべきではないかもしれません。

いいなと思ったら応援しよう!