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デトランス(性別移行を取りやめること)する人に女性が多い理由
私は性別適合ホルモン治療を始めることを検討しているので、この判断が本当に自分にとって良いものかどうかを見極めるために、ホルモン治療(トランスジェンダー)に肯定的な意見だけではなく、否定的な意見も知るように努めています。
もちろん、私が聞きたいのはトランスジェンダーに対する憎しみ(ヘイト)による否定的な意見ではなく、建設的な意見です。海外掲示板Redditのr/detrans板では性別移行を取りめた人、もしくは性別移行を継続しているものの、『トランスジェンダー』に懐疑的な人の建設的な意見を知ることができます。
今回は、『デトランス(性別移行を取りやめること)する人に女性が多い理由』というトピックの抜粋を紹介します。
https://www.reddit.com/r/detrans/comments/vqr1n2/why_women_are_a_majority_among_detrans_people
多くのトランスジェンダーの方々の中では、性別移行をする人の多くがトランス女性(男性から女性への移行)です。それにもかかわらず、デトランスする人の中でも女性が多いという状況があります。この現象について、どのように考えますか?
このトピックでは女性→男性のデトランスについての質問なのにも関わらず、一番『スキ』の数が多かったのが、なぜか男性→女性への性別移行に対する『自己女性化性愛症(オートガイネフィリア)』を根拠に用いた批判でした。
オートガイネフィリア(英語: Autogynephilia)とは、レイ・ブランチャードが当時の概念である性転換症の分類において定義した用語である。男性が、自身を女性だと想像すること、または、女装行為自体、女装中に「女性」として男性と肉体関係を持つこと、そして、これらのような各種「女性化」によって性的興奮する性的倒錯とみなした。
オートガイネフィリアを含むレイ・ブランチャードの理論は、現在の科学では否定されている。
この理論は現在の科学で否定されているものの、確かにこれに当てはまりそうな方は存在しますし、リアルで私の遠い知り合いにもいます。だけど、性的興奮など無縁の幼少期から性別違和を抱えている私にとって、こんな論点は参考にすらなりません。
はい、次。
これが全ての理由だとは思いませんが、私の考えでは、特に医学的な性別移行を経験したFtMtF(女性→男性→女性)の人たちは、テストステロンの影響が大きいこともあって、コミュニティやアドバイスを求める傾向が強いのではないかと思います。もちろん、エストロゲンも非常に重要なホルモンであることや、トランス女性も「第二の思春期」を経験すること(また、MtFtM(男性→女性→男性)の人たちにとってもデトランスの社会的・心理的影響が非常にリアルであること)は否定しません。しかし、テストステロンによる男性化の影響は、他人から見ても顕著であることが多いです。
このコミュニティでも、多くの女性が生まれ持った性別(女性)に見られるのが難しいと感じている一方で、「自分がシス女性に見られてしまう」と悩む男性を見たことがありません。再度強調しますが、MtFtMの人たちの苦労を軽視する意図は全くありません。ただ、ホルモン療法の観点から見ると、FtM(女性→男性)の性別移行を元に戻すのは特に難しいのです。手術はまた別の話になりますが、ホルモン療法(HRT)の方が手術よりも一般的であることを考えると、この傾向が影響していると思います。
例えば、このコミュニティでは「どうやって胸があるまま男性として生きていけばいいんだ!」という投稿に対して、「どうやって女性として通れるようになる?低い声とヒゲがあるし、もう人生終わった」みたいな投稿が圧倒的に多いように見受けられます。テストステロンの影響は元に戻すのが非常に難しいです(トランス女性が苦労する理由と同じです)。ですから、デトランスした女性がこのコミュニティでアドバイスを求めたり、自分の経験について話したりする傾向が強いのではないでしょうか。
また、これは完全に私の推測ですが、多くの女の子たちは、思春期や成長していく自分の体に対して非常に苦労しているのではないかと思います。私たちの思春期はとても早く始まります。生理が始まる平均年齢は12歳で、小学校にいる年齢の可能性もあります。私自身は11歳で生理が始まりましたが、まだ子どもであるにもかかわらず、自分が妊娠できることや、この痛くて不便なものに何十年も付き合わなければならない現実に直面することが本当に辛かったです。「これで血を集めてね。8時間以上つけっぱなしにすると死ぬかも」と言われた上に、ほとんどの時間、トイレの利用を大人に制限される状況も重なり、混乱しました。そして、まだ幼いのに腰や胸が発達しているせいで性的に見られることも苦痛でした。
そのため、多くの女の子たちは性別違和を感じますが、大人になるにつれて「実際には自分は男性ではない」と気づくのです。ただ最初に経験した「女性であること」が圧倒的で、トラウマになるほど辛いものだっただけなのです。これが、思春期を迎えた後に性別違和を感じる女の子が多い理由だと思います。
男性→女性の場合はいわゆる『パス』することが難しいので、気軽にホルモンに手を出しても(気軽に手を出してはいけませんが)元の男性へ戻ることが比較的容易なので、この短所は長所でもあると言えます。
思春期の男子は、もはやジェンダークリニックに紹介される主な層ではありません。現在では、圧倒的多数が思春期の女子です。(多くの場合、彼女たちは最終的にジェンダーノンコンフォーミング(GNC)やゲイの子どもとして成長するため、ここではトランス女性やトランス男性とはあえて言いませんでした。)女子は社会的影響を受けやすい傾向があるため、元々トランスジェンダーではなかったにもかかわらず性別移行を選択し、その後後悔するケースが非常に多く見られます。
確か日本でも男性→女性よりも、女性→男性へ移行する人口が多いようですね。
思春期の女の子や女性が、外部からのプレッシャーから逃れるために無意識のうちに「女性であること」を放棄したいと感じる社会的・文化的な理由は数多く存在します。この現象はどちらの性別にも見られます(私自身、男性のデトランス者としてこれが性別違和感の出発点でした)が、女性や女の子の間でより多く報告される傾向があります。
ただし、ここで特に触れたいのは以下の点です:
> 性別移行をする人の大半はトランス女性です。
未成年者の中で性別移行をする人は、圧倒的にAFAB(出生時に女性と割り当てられた人)が多いです。
例えば、以下のリンク先にあるデータをご覧ください:
https://tavistockandportman.nhs.uk/about-us/news/stories/gender-identity-development-service-referrals-2019-20-same-2018-19/
このページの下部には、2020年時点でイングランド唯一の子ども向けトランスジェンダー医療サービスの受診者数が記載されています。グラフによれば、AFAB(出生時に女性と割り当てられた人)の受診者数は1892人に対し、AMAB(出生時に男性と割り当てられた人)は718人と、AFABの方が2倍以上多いことが分かります。
確かに成人のトランス女性の方が数が多いかもしれませんが、大人になると一度重要な人生の決断を下すと、それに固執しやすい傾向があります。そのため、後から性別移行をやめる(デトランスする)ケースは比較的少ないのです。一方で、子どもや思春期の若者は、成長と変化の過程を絶えず経験しているため、性別移行を早期または中期に始めた人の中でデトランスするケースがはるかに多いのです。そして、先述のデータから分かるように、その大多数は女性です。
未成年に性別適合の治療は控えるべきだという保守派の意見がありますが、確かにこの意見は一理あると思います。ただ、私個人は幼少期から性別違和感を抱えているので、思春期になる前に性別移行できていればな… なんて思うこともあります。
私は約10年間トランス男性として生きてきました。思春期を迎えたとき、誰も私を導いてくれる人がいなかったのは本当に辛い経験でした。自分の体に恥ずかしさを感じていましたし、男尊女卑が強いメキシコの家族の中で育ったため、男性と女性に対する扱いの差が嫌いでした。男性たちが受けるような尊敬を私も得たいと思い、それが「男性にならなければならない」という考えにつながったのです。
自分の体に違和感を覚えていましたし、ティーンの頃はTumblrをよく見ていて、それが性別移行の考えをさらに強める要因となりました。しかし、実際には、自分の生物学的性別に不快を感じていたのではなく、社会が生物学的な女性を扱う方法に不満を抱いていただけだと気づきませんでした。
今では少しずつ、ありのままの自分を受け入れることを学んでいます。そして、自分が「間違った体に生まれた」のではないと理解できたことで、これまでになく幸せを感じています。もちろん、全てのトランスジェンダーの人が自分の性別について間違っていると言っているわけではありません。ただ、性別移行を迷っている若者たちをしっかりとサポートし、それが社会的な影響によるものなのか、本当に必要な性別移行なのかを慎重に見極める必要があると思っています。
本当の意味で男女平等の世の中になればいいのに、って切に願います。
社会は男性のジェンダー表現に対して、より厳しいルールを設けていると感じます。女性は自由に自己表現でき、どんな服装をしても、他人から「違う」という理由で命を脅かされるようなことはありません。でも、私はデトランスした後、ただ基本的な身だしなみを整えているだけで変な目で見られることがあります。
成長期の頃、高校ではトランス男性の存在には誰も特に関心を持っていませんでしたが、私やもう一人のトランス女性については、必ず何か言われていました。それも陰でこそこそと。
男の体で生まれた者として共感しかありません。そして中にはこんな意見も。
MtF(男性から女性への移行)のきっかけやFtM(女性から男性への移行)の終着点は、結局のところ「女性的な男性としての生き方」に行き着くのではないかと思います。女性的な男性と男性的な女性のどちらも社会から厳しい扱いを受けますが、後者については「普通とは言えないが許容範囲」として理屈をつけて受け入れられることが多い一方、前者は「奇妙、不規則、静的」といった否定的な見方をされがちです。
女性には「女性らしさ」を求められる一方で、それをいつか失う(「壁にぶつかる」)ことが当然視されています。女性は、たとえ女性らしさを持たなくても、それでも「普通の女性」として認識される余地があります。しかし、男性は「ワインのように年を重ねる」、つまり男性らしさを保持し、それをさらに洗練されたものに変えていくべきだという期待があります。
これが、年齢を重ねたトランス女性がトランス男性よりも多い理由の一つだと思います。トランス女性は、確かに「女性的な男性」と見なされることで社会からより多くの偏見や嘲笑を受けるかもしれませんが、それでも彼女たちが目指す「自分像」は、周囲の世界とより自然に結びつけられるのです。