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4回就職に失敗した発達障害の私が、強みに気づいたカウンセラーの言葉
1社目
何とかなると思っていたんですよ、私も。
当初は信じてもらっていたんですよ、会社に。上司に。
「真面目な奴だと思ってたのに・・・」
その言葉が今も蘇ってきては、申し訳無さにいっぱいになる。
塾講師になったのはいいものの、遅刻欠席は当たり前にするし、電車に乗り間違えて授業に遅れるわ、授業の内容もろくに勉強しないわ、授業は時間内に終わらないわで、本当に最悪の新人だったと思う。
当初は「俺は信じてるからな!」と言ってくれていた優しい上司が、「お前この会社で駄目だったらどこ行っても通用しねえぞ!」に変わり、やがて「お前ふざけんなよ!」に変わっていった。そして、私の採用面接を担当していた方が、「真面目なやつだと思ってたのに・・・」と言ったときには絶望しか感じなかった。
案の定半年の契約期間が満了となった際には契約更新しないと言われ、「もしやりたいならバイトでやる?」と提案された。
私は「やります!」と言って心を入れ替えて頑張った。
「やれば出来るじゃん!」とか「あの授業真似させてもらったよ」とか言われるようになった。
しかし、問題児ばかりのクラスが精神的に辛かったこともあり、1年で辞めた。私には人を教える資格なんて無い。
2社目
姉の紹介で、夢の国でアルバイトをすることになった。
職業は調理補助。1社目となんの関係もない。何がしたいんだ、私は。
とにかく物覚えが悪い。動きが遅い。
「動きながら考えるんだよ」とかいうアドバイスは全く役に立たない。
出来るかボケ。
完全にお荷物状態。
「ねえ、今何やってるの? 今何してないといけない時間? そうだよね、わかるよね? じゃあどうしないといけないかわかるよね? 急いでね?」
「ねえ、今日のシフト終わったんだよね、何でいるの? そこでぼーっと立たれてるとさ、仕事してるのかただいるだけなのかわかんないんだけど?」
「ねえ、さっき説明したの聞いてたよね? 頭大丈夫?」
頭の中は沸騰していたが、自分が悪いんだからしょうがない。
休憩時間にメモ帳にひたすら、調理の動きを書き起こしていた。
何が必要か。どの順番で持ってくれば効率的か。何時にあれをやるにはどうすれば良いか・・・。
2年間働いて、1度も褒められなかった。
3社目
食品メーカーのルート営業職になった。正社員だ!
「骨を埋めるつもりで引っ越してきました!よろしくお願いします!」
はじめは意気揚々としていた。しかし、何の経験もなく、ペーパードライバーの私は、とにかくひたすらに向いていなかった。
「君はさ、幼稚園生ができることが出来ないよね」
お客さんの前で話すことも、商品を覚えることも、先輩の代わりに車の運転をすることさえも、何も出来なかった。
めちゃくちゃ辛かったのは、年の近い先輩に色々相談していたのがぜんぶ他の社員たちに筒抜けだったこと。
ここで頑張って、人並みに生活できるようになりたいと思っていたのに。
引っ越しまでしてここで働こうと決心したのに。
「君が辞めるのが先か、俺が君に訴えられて辞めるのが先か、どっちだろうね?」
「辞めたくないって言葉を聞きたいんじゃないんだよ。何で辞めないの?」
「うわ、刺されるかと思った」
私の心は、折れた。
鬱になった。
4社目
もう同じ轍は踏まない。固く誓った私は、ハローワークの講座で、簿記の資格を取った。出来ないことをやるんじゃなくて、ある程度理解できる状態で仕事をすれば良いんだ!
そして私は不動産会社の経理になった。
あれ、金額が合わない。え、電話を受けながらパソコンで相手の検索して、内容メモして、取り次ぐの?
え、これはどうやるんだっけ?フセンがパソコンにいっぱいになる。あれを書いたメモはどこ?
先輩に聞いてたのに全然覚えてない。申し訳ない。自分でなんとかしないと。でもわからないから何も手につかない。質問できない。相談できない。
「あんたとはコミュニケーションがとれないわ」
そう言われて、はじめ親切だった先輩は口を利かなくなってしまった。フォローもしてくれなくなった。
おかしい。あまりにも私は何もできなさすぎる。何なんだ?
大学院まで行ったのに頭悪すぎる。
知能検査を受けた。知能の凸凹が激しかった。
つまり、私は発達障害だった。
再び鬱になり、会社を辞めた。
転機
「――というのが、私の職歴です」
私はカウンセラーの先生に、今までのことを話した。
「なるほど、ありがとうございます。あなたは不屈の精神の持ち主ですね」
「え、そうですか?自分ではそうは思えません」
「いえいえ、4回仕事で挫折をしているわけですけど、こうしてカウンセリングに通って、就労移行支援施設にも行っているわけじゃないですか。それってまた就職するためですよね?」
「まあ、そうですね。だって働かないといけないですし」
「そうやって思える人って少ないですよ。鬱になって2ヶ月くらいでだいぶ回復してるのもすごいです」
「いや、回復するためにカウンセリング来て、高い金払ってるんですよ」
「ちょっとずつ成長もしているわけじゃないですか。今日だって遅刻してないし」
「そんなの当たり前でしょ」
などと言いながら確かに、1社目では遅刻欠席が日常茶飯事だったけど、遅刻はしなくなったし、スピードではなくタイミングを早めることで他の人に日常の動作でついていけるようになった。・・・成長しているのか?
「あなたの長所は回復力だと思いますよ。打たれ強さとか頑丈さとは少し違って、倒れても立ち上がる力があるんです。そうして少しずつ学んで成長している」
「なるほど!そうなんですね!でもなんだかゾンビみたいですね」
「いや、雑草魂とか、もっと他に言いようがあるような・・・」
「雑草もどうなんでしょうね」
「「うーん」」
もしも私に長所があって、それが立ち上がる力だとしたら、私はもっと自分に色んな経験をさせてあげよう。それで失敗したり、また鬱になったりするかもしれないけど、立ち上がって経験に変えてしまえるのが自分なら、私はもっと成長できるのではないだろうか。
「先生、ありがとうございます。良いことを聞けた気がします」
「それは良かったです。ではまた」
今の職場
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