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Q「なぜVケットは会場のコンセプトがやたらと強いのか」

Vケットは、会場に「コンセプト」というものを持たせています。
Vケット2であれば「ファンタジー・中世」の「異世界マルシェ」や、「サイバー・近未来」の「FutureTerminal」
Vケット3であれば「現実・ノンジャンル」の「ネオ渋谷」や、「中華・アングラ」の「九龍帝国城下町」といった形です。

・会場の色が強すぎてブースが目立たないのでは?
・ブースが主役(であるはず)なのに本末転倒では?
・そもそもコンセプトの無い会場が欲しいんだが?

など、様々な意見や要望を頂くことも多くなってきたので、ここで改めて「なぜVケットは会場に明確なコンセプトを持たせているのか」について私の考えを記しておきたいと思います。

Vケットには明確な目的がある

「会場の(コンセプトの)主張が強い」には当然良し悪しあると思っていまして、その辺のメリットデメリットは考慮した上で「会場自体に強い個性(コンセプト)を持たせること」を選択しています。

Vケットの主役は、何なのでしょうか。
・会場なのか?
・ブースなのか?
・協賛企業なのか?
この疑問に対する回答は「全てが主役」です。
これを説明するには、まず「Vケットがどんな目的の元に運営されているか」をお伝えする必要があります。

Vケットは、公式HPにも書いてあるように「バーチャル世界を豊かにすること」を目的として開催しています。
・会場が凄い
・出展者のブースが映える
・企業ブースを受け入れる
のは、全て手段のレイヤーであって、いずれも目的ではありません。

そもそもこの目的は、フィオ自身の夢である「バーチャルで生きていける世界を作りたい」に繋がっているのですが、そこは話が長くなるので一旦割愛。

ここで言う「豊かさ」とは何かといえば、人やモノやお金、情報が大量に流通している状態と捉えています。
つまり、VR空間に生活するユーザーが増え、多くの3Dモデルが出回り、その中で経済が周り、それらの情報が整理されている状態を目指しています。

そういう状態を実現してこそ、今まさにVR空間に住んでいる人や、今まさにVR空間に向けたプロダクト(3Dモデル等)を創っているクリエイターさんたちが、より豊かな生活を送れるようになると考えています。
平たくいえば、今VRに住んでいたり、VR空間でものづくりしたりしている人たちにとって、より快適な場所を作りたい。それに尽きます。それを一緒に出来たら最高だよね、一緒にやっていきたいよね、というのがVケットなのです。

Vケットとは何なのか

2018年8月に開催されたVケット1は、話題になりこそしましたが、私は当時「このままの形でやり続けてもあまり意味がないな」と感じていました。
なぜなら、Vケット1の開催動機は「違法なアバター(※1)だらけのVRCをクリーンな状態にしたい」ことと「販売アバター文化の誕生(※2)をブーストしたいから」だったからです。
 ※1 2018年当時、違法にリッピングしたモデルや、利用規約違反のMMDモデルのアバターが闊歩していた。
 ※2 2018年5月頃にアークトラスちゃん(通称1080円ちゃん)が販売開始され、一気にアバター販売の流れに火が付いた。

そこで、Vケット1の結果を受け、「Vケットとが提供すべきものは何なのか」の定義をし直して「Vケットは機会を提供したい」という結論に至ったのが、Vケット2です。

・出展者にとっては「モチベーションの源泉、締め切り、作品発表」の機会
・来場者にとっては「アバターと出会える」機会
・企業にとっては「VR市場でのプロモーション実験」の機会

ものづくりというのは不思議なもので、締め切りがあると作品が完成するという性質を持っています。年に2回のVケットという発表の場があることで「何かが完成する」そういう面は大いにあると思います。
また、アバターモデルや3Dモデルが一挙に並ぶ場はそうそう無い為、ユーザーにとってはVケットがあることによって、より自分らしい・自分好みのアバターに出会える確率が上がります
企業は、VRにまだ懐疑的です。バーチャル空間の中で生活を送っている人がいる、といっても信じられないでしょう。一方で、どうやら市場が生まれつつあるらしいということも気づいてはいて、何かしらの実験はしたいと思っている。その受け皿になることができるのも、Vケットならではです。

Vケットは、関わる人々にとっての機会でありたい。

出展者にとっての「機会」

ここでコンセプトの話に戻ってきますが、創作のモチベーションには「内的要因」と「外的要因」があると考えています。

内的要因は「とにかくこういうものが作りたいんだ!」という内から湧き出る熱量。
外的要因は「そういうものが求められているなら作ってみよう!」というお役立ちの精神です。

Vケットはこのいずれもを受け入れたいと考えています。
会場がコンセプトの中に複数の要素を持っている(例えば九龍帝国城下町は中華+アングラ)ので、内的要因のモチベーションによって作られた出展物でも、どこかしらの会場である程度は受け入れられるようになっています。

外的要因による創作モチベーションの刺激は、Vケット3のPretty Pop Partyが代表例です。
Vケット2までは「既によくあるジャンル(メカ、ケモ、ファンタジー、和)」を中心に据えた会場コンセプトでしたが、Vケット3ではその括りを飛び越えてみました。
Pretty Pop Partyのコンセプト発表前まではゆめかわ系アイテムはまだまだ少ない状況でしたが、Vケットの開催目的は「バーチャル空間を豊かにすること」なので「まだこの世界に存在しないモノを増やすこと」を願って、コンセプトを通じて「こんな感じのモデルを作ってみてはどうでしょう?」という提案をしてみたのです。
チャレンジングなコンセプトだったので「希望者が集まるかどうか」が少し不安はあったのですが、結果的にPretty Pop Partyの存在が多くのクリエイターの創作意欲を刺激することができたのではないかと感じています。

そういう想いでコンセプトとブースの関係を位置付けているので、会場単体では意味がなく、ブース単体でも意味がない、「合わさってこそ始めて意味があり、互いに映えさせ合うもの」だということをご理解頂けたら嬉しく思います。

協賛企業にとっての「機会」

企業の話も少ししましょう。
私には、VRChatの日本コミュニティを中心として発展しつつあるアバター文化を「ギークの遊び」のまま終わらせるのではなく「社会の一部(或いはもう一つの現実)」にしていきたいという想いがあります。
それを実現する為には、もっともっと外向きに発信していく必要があります。

ここで、企業の持つネームバリューや資金力、IPの力を借りる必要が出てくるのです。
ただし、企業協賛を受けるにあたり「バーチャル世界を豊かにする」ことに対して同意して頂けるかどうかを非常に重要視しており、Vケットのユーザー体験を壊すような展示は固くお断りをしています。
(即時的なCPA効果だけを求められたり、短期的な目線で協賛されても困るというのが正直なところで、Vケットの長期的な目的を理解頂いた上で協賛を頂くようにしています)

企業からよく出てくるのが「動画を見せたい」という要望ですが、VR空間では動画広告はあまり意味がありません。容量や帯域を圧迫する割に、ユーザーは長く立ち止まって観ない(バーチャル空間には動く平面よりも魅力的なものがたくさんある)為、協賛企業にも出展者にも互いにメリットがありません。
これは、ひとえに「バーチャル空間上での広告」に対する理解が無い、先例が無いがゆえに生まれるすれ違いだと思うので、Vケット自身が協賛企業と一緒に試行錯誤しながら切り拓いていくべきジャンルであると感じています。
Vケット2のTSUKUMOビルや、Vケット3のDOAトランポリンは、バーチャル空間ならではの体験を与えつつ企業イメージをアピールできる、良い企業ブースだったと思います。

Vケット2のようにエントランスに企業ブースをまとめるのか、
Vケット3のように各会場に散らして配置するのか、どちらが良いのかはまだ結論が出ていません。
今後、Vケット内での協賛企業のブース出展方法や広告展開手法は変わっていくと思いますが、いずれにせよバーチャル空間における企業広告は「体験」をより重視する(ユーザー体験を阻害してはならない)必要があることが間違いないと考えています。

1つの目的の前に、他の全ては手段である

Vケットはいかにして「機会」を提供し、いかにして「バーチャル空間を豊かにするか」それだけを追い求めています。
・強いコンセプトを設計する
・会場とブースとの相乗効果を狙う
・企業ブースを受け入れる
全ては「目的」を実現する為の「手段」として、多くの選択肢の中から選んでいる過ぎません。

Q:会場をもっとシンプルにして、ブースを目立たせてはどうか?
Q:ブースが、会場の引き立て役になってしまっていないか?

これは出展する立場の方から聞くことが多い声です。
こういった要望があることは理解していますし、事実Vケット1はそのような会場構成でした。ただ、今のVケットはあえてそれをしないことを選択しています。(かつ、先述したように会場とブースは主従関係ではない)
来場者の「会場に入った瞬間のワクワク」や、まだバーチャル空間に来たことがない人に「そこに行ってみたい!」と感じさせたり、何度も来てみたいと思わせたり、クリエイターの創作意欲を刺激したり、メディアの注目を広く集める(そして発信してもらう)為には、まず会場そのものに誘引力を持たせる必要があるからです。

強烈なインパクトを持った会場にブースが埋もれないよう、ブースに至る導線に関しては非常に気を使っていて、可能な限り自然な流れで全てのブースを見ることが出来るように工夫を凝らしてはいます。ただ、こちらのnoteでも触れたように、Vケットの会場制作には描画負荷の都合上、非常に多くの制約がある為、満足にできていない部分があるのも事実です。ここは毎回反省を繰り返しながら改善を図っていきます。
ブースを目立たせるのは手段であって、目的ではありません。
「バーチャル空間を豊かにすること」を達成することこそが出展者を含むバーチャル空間に関わる全ての人にとっての幸福に繋がると信じているからこそ、多くの選択肢の中から現状最適解と思われるものを選んでいるということなのです。

今後について

「バーチャル空間を豊かにする」
目的達成の為であれば、手段は今後いくらでも変わっていく可能性があります。

・もっと大きいブースを作りたい!
・ブースは作らず、アバターだけ展示したい!
・コンセプトの無いフラットな会場が欲しい!

Vケット1、2の出展者/来場者アンケートや、出展者Discord、日々TLに流れてくる様々な声を聞いていて、じゃあそれはどの段階なら実現出来そうだな?というのを考えつつ、一歩一歩かつスピーディに進歩していきます。

また、Vケット以外にも作品発表の場ができていくことは大いに歓迎すべきことだと思っています。Vケットの力だけでは「バーチャル空間を豊かにする」という壮大な目的が達成できないであろうことも理解しているからです。
VRAAのようなワールドに焦点を当てたイベントや、
アルテマ音楽祭のようなVRライブ、
VirtualCollectionのようなアバターとアクターによるファッションショー、
他にも、落選マーケット(※1)やVirtualSteelMuseum(※2)といった中小規模の展示会やオンリーイベントがどんどん増えていくと良いと思っています。
※1 Vケット3に落選してしまった方が有志で集まって開催した展示会。次回があるならぜひ名前を変えて欲しい。
※2 IspVitaminさん主催のメカものオンリー。

ブース展示型のマーケットイベントを誰でも開催できるよう、Vケットとしても知見を発信していきたい、仕組みも作っていきたいと考えています。
VketToolsに搭載されていたブースチェックツールのVitdeckは、kozuさんを主体として、チームが多人数で特定のルールに沿ったUnityのアセットを同時に制作するプロジェクトを支援するツールとしてオープンソースで提供されています。マーケットイベントの主催に非常に役立つ為、主催を考えている方はVitdeckの導入を検討頂くと良いかと思います。

せっかくのバーチャルですから、多様性に満ちた世界が実現して欲しいと思います。VケットはVケットとして1つの目的に向けて邁進していきますので、今後ともご来場、ご出展、ご支援、お付き合い頂ければ幸いです。

近々、Vケット3の出展者/来場者アンケートも行います。
全て目を通し、運営に活かして参りますので、忌憚なきご意見を頂ければ幸いです。

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動く城のフィオ
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