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世界体験に関する雑記(私的メモ)

岡本太郎の『沖縄文化論』という本の中で、柳田国男が収集した民話の一つ「山の人生」が紹介されています。 亡き妻のことを思いながら、山奥で子供たちと暮らす男の話です。その男は炭を作っていて、里に降りてはそれを売りに出かけるわけですが、それが全く売れませんん。そのため、米も買うこともできず、子供達も日に日に衰弱していきます。そんなある時、子供たちが「自分たちを殺してくれ」と言って、男に斧を渡して地面に寝そべったそうです。そんな子供たちの振る舞いを見ていた男は「(頭が)くらくらして

    • 快楽と欲望について(私的メモ)

      〈快楽と欲望の関係性〉社会学者の上野千鶴子氏は欲望と快楽を別個に考えます。つまり、欲望の主体であることと快の状態にあることとは必ずしも結びつきが無いと言うのです。 彼女の定義によると、欲望の主体であるということは自らの欲望をコントロールしぬくということであり、快楽とは欲望の客体になることによって受動的に与えられるものです。だからこそ、欲望の主体であるからといって快楽は必ずしも保証されないのです。 また、快楽が発生するためには条件があります。自分がコントロールしぬけないとい

      • 映画『暁闇』からの連想(私的メモ)

        舞台はとある高校です。主要な登場人物は3人、うち二人が女子です。一人目の女子は渋谷で援助交際をする毎日。二人目の女子はクズ親の喧騒に巻き込まれる毎日。そんな二人の共通点はネット上にアップされているとある音楽を聞いているということです。それをきっかけに二人は仲良くなります。岩井俊二の『リリィシュシュ〜』のごとき展開です。さらに面白いのはその音楽を作っているのが同じクラスの男子であるということ。もちろんその男子はそのことを皆に言いふらしたりはしません。その男子には毎日一緒に登下校

        • 杉野希妃『欲動』からの連想(私的メモ)

          本作の舞台はインドネシアのバリです。映画を観ながら、私はいくつかの映画を思い出しました。一つ目は河瀬直美の『二つ目の窓』。セックスシーンの使われ方が似ています。二つ目は濱口竜介の『寝ても覚めても』。2組のカップルが登場するという役の構図はもちろんのこと、「愛する人の喪失」というモチーフが似ています。三つ目は深田晃司監督の『海を駆ける』。同じインドネシアのスマトラ島が舞台であり、共通した世界観の元で展開される儀礼や祝祭があります。本作を含めたこれら三つの映画には共通する特徴がい

        世界体験に関する雑記(私的メモ)

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        • 考えるための映画ノート
          8本

        記事

          社会の成立過程を問うということ[連載]第4回 映画『渇き。』

          どうも、クイズマスターです。今回は、連載4回目の後編記事です。前回に引き続き、2014年に公開された中島哲也監督による映画『渇き。』を扱います。なお、僕の映画エッセイでは、ネタバレをしますので、ご了承ください。 元担任が加奈子を殺したことの意味前編記事では、父・藤島と娘・加奈子の対立的なキャラ設定を明らかにすることで、藤島が加奈子に異常にこだわっている理由を説明しました。これを踏まえて、今回は前編記事の冒頭で述べた「加奈子の中学の元担任が、加奈子を殺すのってオカシイでしょ」

          社会の成立過程を問うということ[連載]第4回 映画『渇き。』

          社会の成立過程を問うということ[連載]第4回 映画『渇き。』

          どうも、クイズマスターです。連載4回目となる今回は、2014年に公開された中島哲也監督による映画『渇き。』を扱いたいと思います。今回は、長編ということで、2回に分けてお届けしたいと思います。なお、僕の映画エッセイでは、ネタバレをしますので、ご了承ください(その理由については、初回の記事にて)。 (C) 2014「渇き。」製作委員会 はじめにいきなりですが、核心的なことから述べたいと思います。この映画をご覧になられた方は、中谷美紀演じる加奈子の中学時代の担任が、小松菜奈演じ

          社会の成立過程を問うということ[連載]第4回 映画『渇き。』

          何かを変えることに賭ける[連載]第3回

          どうも、クイズマスターです。連載3回目となる今回は、2008年に公開された押井守監督による映画『スカイ・クロラ』を扱いたいと思います。 なお、僕の映画エッセイでは、ネタバレをしますので、ご了承ください(その理由については、初回の記事にて)。 『スカイ・クロラ』の世界観とは?押井は、本作が公開される際に「若者たちに伝えたいことがある」という強い想いをメディアの前で公言しています。また、そう思うに至った理由として、別れて暮らしていた娘と20数年ぶりに再会したことで、若者を身近な

          何かを変えることに賭ける[連載]第3回

          相米慎二監督による映画『台風クラブ』を巡って[連載]第2回

          どうも、クイズマスターです。連載2回目となる今回は、1985年に公開された相米慎二監督による映画『台風クラブ』を扱いたいと思います。 なお、僕の映画エッセイでは、ネタバレをしますので、ご了承ください(その理由については、初回の記事にて)。 はじめに僕がこの映画をはじめて見たのは、一時的な閉鎖を目前にしてさよなら興行を行なった「京都みなみ会館」でした。およそ、一ヶ月前のことです。 その時、この映画を含めて合計10作品ほど鑑賞したのですが、実はこの映画が最も心に突き刺さったの

          相米慎二監督による映画『台風クラブ』を巡って[連載]第2回

          牛窓の人々が抱える「誇り」と「断念」[連載]第1回

          どうも、クイズマスターです。本日から「考えるための映画エッセイ」と題した連載を通じて、映画エッセイをnoteにアップしていこうと思います。今週扱う映画は、4月7日から公開の想田和弘監督の映画『港町』です。 最初に読者の方にお伝えしなければならないことがあります。僕の映画エッセイでは、ほぼ間違いなくネタバレをするつもりです。初回の記事でも書きましたが、これには明確な意図があります。 端的に言えば、映画を見てもらうための映画メディアではなく、映画を通じて深く考えるための映画メ

          牛窓の人々が抱える「誇り」と「断念」[連載]第1回

          「考えるための映画エッセイ」イントロダクション

          はじめまして。クイズマスターです。今回、誰かに頼まれたわけではありませんが、「考えるための映画エッセイ」と題した連載を始めることになりました。最初の記事ということで、この記事では、自己紹介、連載の理念・目的や開始に至った経緯についてお伝えしようと思います。 自己紹介まずは、簡単な自己紹介をさせてください。 僕は東京在住の越境大学生(18)です。越境大学生とは、僕が勝手に付けた名前で、ざっくりと言えば、自分の興味関心のために、ありとあらゆる大学を行き来する大学生のことを指し

          「考えるための映画エッセイ」イントロダクション

          映画『打ち上げ花火、横から見るか下から見るか』を見て

          2018年1月30日、岩井俊二監督の映画『打ち上げ花火横から見るか下から見るか』を観た。 今回、この映画を見た後に、僕と岩井俊二作品との関連性について思いを巡らせてみたところ、意外にも彼の作品を観ていることに気がついた。本作を含めて『Love letter』『PICNIC』『スワロウテイル』『四月物語』『リリイ・シュシュのすべて』『花とアリス』『リップヴァンウィンクルの花嫁』の8作品をすでに見ていたのだ。しかも、『スワロウテイル』は3回、『リリイ・シュシュのすべて』は2回観て

          映画『打ち上げ花火、横から見るか下から見るか』を見て

          完全版 合言葉は「過去の生を再生すること」

          最近、僕はある本を読んでいて、以下のような記述を目にした。 現実主義者を信仰に導くのは、奇跡ではない。真の現実主義者は、もし信仰を持っていなければ、奇跡をも信じない力と能力を自己の内に見出すであろうし、仮に反駁しえぬ事実として奇跡が目の前に現れたとしても、その事実を認めるくらいなら、むしろ自己の感情を信じないだろう。また、もし事実を認めるとしたら、ごく自然な、これまで自分が知らなかったにすぎぬ事実として認めるに違いない。現実主義者にあっては、信仰が奇跡から生まれるのではなく

          完全版 合言葉は「過去の生を再生すること」