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【アルバム紹介】cartoom! / Plus-Tech Squeeze Box(2004)

さて、私からはPlus-Tech Squeeze Box(PSB)の『cartoom!』をご紹介します。

Plus-Tech Squeeze Boxとは!!

ハヤシベトモノリとワキヤタケシによるユニット。とにかくものすごい、押し寄せるようなサンプリング。そしてそれをまとめあげる凄腕。天才です。
(※サンプリングってのは、ものすごく雑に言えば音の切り貼りのことです。詳しいことは専門家に聞いてください)

海外でバカ売れしたり、スポンジ・ボブのサントラに参加したり、とにかく2000年代を駆け抜けた、……天才2人組です。天才しか言葉が浮かばん。

あと、ジャンルとしては渋谷系と、ご本人はおっしゃっているようですが、これが渋谷系なら、私には渋谷系がなんなのかわかりません。絶対渋谷系の枠をはみだしてる。

ちなみに、ハヤシベトモノリ氏は今でも編曲、ミックス等で多数の作品に参加しています。これはまた後でご紹介します。

cartoom!

さて、『cartoom!』です。
なんと13曲28分で終わってしまう謎アルバムなのですが、御本尊ハヤシベトモノリによる、アルバムのコンセプト解説がこちら。

 ネバダ州は近未来都市な様相になってる。なぜなら隕石が落ちてきてカジノが全部壊滅してしまい、 ラスベガスという街の、ありとあらゆる賭博システムが近未来をテーマに再利用され、21世紀最後の大々的な万博は大盛況。 おまけにラグボールなんていうやたらスクェアな新しいスポーツがネバダ州を中心に盛り上がって、デトロイトあたりの自動車産業がスポンサーとなり、一斉に破竹の勢いのネバダ州に移転。 おかげて半導体テクニクスの急先鋒としてネバダ州は世界一の近未来都市となったのでした。 しかし裏では、ハヤシベの開発する半重力素粒子がその根幹を支えており、それを狙うフラテリー・センデロルミノソというマフィアがそれを狙い暗躍。 ちなみにマフィアのボスはクラシコイタリアなスーツ。
(「Tokyo coolest mad mad sound scientist 
HAYASHIBE TOMONORI talked about everything(Maybe)!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
」より。アーカイブですが。著作権フリーだそうです。ラブ。)

…………。

……とにかく、「2人の博士(天才と助手)が作り出した女の子型アンドロイドを主人公に繰り広げる架空の近未来カートゥーンアニメ(ドタバタ・コメディ)」というコンセプト・アルバムらしいです。

アニメではなく、カートゥーン。そう聴くと、確かにこのアルバム全体がそう聴こえてきます。オープニングがあり、ストーリーがあり、なんとCMソングも入ってる。

とにかく概観はこんなもんで、アルバムから何曲かをご紹介していきましょう。

各曲


サンプリング数4500の化け物アルバムは、番組のオープニングテーマ、01.『CartoomTV』から始まります。ボーカル9人の声が見事に調和しているのが聴きどころ。

物語の本編が始まり、02.『fiddle-dee-dee』と主人公らが住む街を紹介する03.『.Dough-Nuts Town's map』。サンプリングとチカチカと変わる曲調と、譜面を見なくても聴いただけで唸ってしまう圧倒的音数。よく整理したなと舌を巻いてしまう、PSBらしさ全開の曲です。

04.『f(ake)』は、勢いのあるテーマとキュートなパートが交互に展開するヒロイン(女の子ロボット!)のテーマソング。ハヤシベモトノリ氏によると、レッチリのような曲とのことですが、たしかに言われてみれば、(比較的)レッチリに近い。言わんとすることはわかる。

完全にキマっちゃってる曲、06.『starship.6』を挟みつつ、CMソングの07.『CM#&'($_?>!』へ。……大切なので2回言いますが、CMソングです。この遊び心が嬉しい。ただ、よくよく考えると、CMソングがアルバムに入るほど、制作段階でこの「番組」のイメージが確立している、ということでもありますね。

09.『Uncle Chicken's drag rag』では突然のカントリー調、と思ったら10.『Fantasie C dur P.491 -Generalprobe-』で今度はオーケストラ調。Generalprobeとは、舞台用語でリハーサルのことで、ラスボスとの戦闘シーン曲をオケ調で作ろうとした残骸とのこと。

さらに畳み掛けるように12.『Hoky-Poky a.la.mode』では、ララランドを思わせるミュージカル調に(時系列は逆ですが)。コンセプトは、「パリ生まれのペルシャネコが唄うフレンチ・スウィング」(原文ママ)とのこと。

……自分で解説を書いておきながら、どんどん意味がわからなくなっていますが。

音数の多さと技術力は、聴けば明らかです。それに加え、様々なジャンルの曲調が渾然一体となっていながら、どれもPSBらしさを残している。そんな不思議なアルバムになっています。

さいごに(ハヤシベトモノリ氏の最近)

これで、『cartoom!』の魅力は十分に伝わったので(?)、最後にハヤシベトモノリ氏の最近の参加作品の中からひとつだけ。

KILIG (『yuanfen』より)/ 鹿乃(2020)

作詞はもちろん鹿乃さん、作曲は、こちらも皆さんご存知のMONACA田中秀和さんです。ハヤシベトモノリ氏は編曲で参加しています。

もちろんPSBのアルバムのような無茶はしていませんが、複数の音色、モチーフ、効果音が、スパッとハマっている感覚は、まさにハヤシベトモノリ氏のものだと思います。それが田中秀和さんのコードと鹿乃さんの歌詞ともうまく混ざっている。最高です。

だいぶ文字数ものったので、そろそろ筆を置きたいと思います。では、また。

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